取材しても、記事にできる情報は1割未満。しかし捨てた9割にも、伝えられるべきものがあります。ボツになった企画も数知れず。そんなネタを紹介します。なお、本ブログの文章と写真の無断転載はお断りします。ご利用希望者合はご一報下さい。
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樫田秀樹

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●受刑者と刑務所で就職面接する
 久しぶりに刺激的な会社を取材しました。
 おそらくは全国で唯一、受刑者を「積極的に」雇用している会社です。
 北海道札幌市の建設業者の「北洋建設」には毎日のように刑務所の受刑者から「採用の相談に乗ってください」との手紙が届きます。

小澤輝真社長←小澤輝真社長

 小澤輝真社長はやる気ありと見た手紙の主に会いに行くために、直接刑務所に行く。九州にだって行く。

社会復帰を求める手紙1 社会復帰を求める手紙2←社会復帰を求める手紙

 ただし、小澤社長は5年ほど前に「脊髄小脳変性症」という不治の難病に罹患し、余命ある身です。この病気はALSにも似ています。大脳はしっかりしたまま、つまり思考は保たれるけど、小脳が委縮するために、言語障害や体の機能障害が現れる。昨年までは杖で歩けた小澤社長も今では車いすか、両脇を支えてもらっての移動を強いられています。言葉も今はなんとかコミュニケーションが取れますが、一部、発音不明瞭になるときもあります。

一人では歩けない←病気のため、歩くときは車いすか、両脇から支えてもらうしかない。

 つまり刑務所に面接に行くには、もう一人の社員の同行が必要となり、九州には往復で24万円もかかりました。
 国の制度で月8万円は出ますが、まったくの赤字。受刑者が北洋建設で働く場合は、その刑務所から札幌までの交通費も会社が負担。それでも北洋建設は受刑者雇用にこだわり続ける。

 面接はアクリル板超しではなく、普通の部屋で直接受刑者と向かい合う。30分も話し合えば、受刑者が本気で罪を反省しているか、本気で働きたいと願っているかがわかり、その場で実質的な採用通知を伝えることもあるそうです。
 身受け保証人になるのはもちろんです。

●仕事があれば再犯には走らない

 ちなみに、このことは某月刊誌に書く予定なので、ここで詳しく書いては編集者に起こられるので、宣伝ということで、ごくごく簡単に書きます。

 なぜ受刑者を雇用するのか。
 北洋建設は、先代社長(小澤社長の父)が創業したころから、受刑者を受け入れてきましたが、どちらかというと人手不足を解消する目的があったようです。物心ついたときから、会社に前科ある人たちが当たり前に仕事をするのを目にしてきた小澤社長にはそれが普通の会社の姿と思っていたようです。
 しかし、26年前、小澤社長が17歳のときに先代社長が同じ「脊髄小脳変性症」の闘病生活の末に死去(この病気は3分の1が遺伝性)。享年48。高校を中退し違う会社で働いていた小澤社長は、18歳で会社を継ぐことを決意します。
 
 そして厳しい修行を経て一人前の経営者へと育つわけですが、気づいたのは、それまで当たり前と思っていた受刑者の採用が、世間を見渡すと、自分の会社しかしていなかったことです。
 現在、小澤社長が受刑者を受け入れるのは人手不足が理由ではなく、
★仕事さえあれば、人は再犯をしない。仕事がないからやむを得ず、再犯をする。
(日本の再犯率は48%!)
★受刑者は概して熱心に働く。
 との信念があるからです。
 北洋建設は全社員が約60人ですが、このうちの4分の1の15人が元受刑者です。ここでは、入社時にその過去は隠しません。というか、入社したその日に歓迎会がある。
 今回、小澤社長と一緒に会ったのが、殺人未遂で5年間服役していたKさん(実名も顔出しもOKですが、インターネットでは、その特性を考え、私の判断で匿名とします)です。

元受刑者とKさん。「私は罪を一生背負って生きていきますが、私をわだかまりなく受け入れてくれた会社には本当に感謝しています」

 受刑者がもっとも困るのが、出所しても、住所がない以上、仕事に就けないことです。
 だから、多くの出所者がやむなく再犯する。とくに北海道のように冬の野宿が無理な地域では、3食あり、冷暖房もあり、風呂もある刑務所に行ったほうが「生きていける」のです。
 Kさんは刑務所内で出所後の生活を何パターンかで想定していましたが、北洋建設のポリシーに共感。何せ社長が直接面接に来て、就職初日に会社の有志が歓迎を会を開催してくれる。
 小澤社長は断言します。
「いい人ばっかりだ。社会的に犯罪を起こさざるを得ないんです。でもみんな立ち直りたいと思っている。ここで一所懸命働けば、絶対に再犯はありません」
 北洋建設では、12人の寮があり、3食付き。このうち半分が元受刑者。

●裏切られても信じ続ける

 では、なぜ北洋建設のような会社が他にはなかなか見当たらないのか。
 実際の前科者である社員は「経営者にその度量がないから」。
 どういうことかというと、これまで北洋建設ではこれまで500人を雇い入れていますが、その多くが、自分の道を見つけて発展的に退職したり、あるいは、途中でいなくなる人も多い。

「なかには、仕事途中でコンビニのトイレに行くと言って、そのままいなくなる社員もいます。そうなると、車両の運転者がいなくなるので、その日の仕事が困る・・というケースも多々にありました」

 またなかには1年以上も出所前にやりとりをして会社に迎え入れる段取りをしていたのに、出所当日、一言もなくドタキャンする人もいる。

 それを何度も繰り返されたら、普通の会社なら「もう引き受けるのはやめよう」となります。でも北洋建設では、それでも受刑者の受け入れを止めない。
「数少なくても、育ってくれる社員を見るのは嬉しいんです」

毎日手紙が届く北洋建設には毎日受刑者から手紙が届く。


 おそらくは、北洋建設が素晴らしい会社・・ということよりも、素晴らしいと思えるほど、他のほとんどすべての会社が受刑者に対して更生の道を用意していないことも問題にすべきです。
 そして、一度罪を犯した者を徹底して許さない日本の風土もまた、受刑者を再犯に走らせているとも思います。つまり、私たちも悪い(もっとも、そういう私だって、あの犯罪だけは、あの犯人だけは許せない・・と思う事件はあります)。

●加害者家族への民度が冷たい日本

 「加害者家族」(鈴木伸元著。幻冬舎新書)という本があります。
 これは、その名の通り、加害者として服役した人たちの家族の末路(自殺、離婚、転校、婚約破棄、転職等々)を描いた本ですが、私が一番衝撃的だったのが、アメリカにおける加害者家族への世間の目です。こう書かれています(概要)。

――ここからーー
 1998年に高校で銃乱射事件が起きた。マスコミは加害少年の実名や写真を報道した。実名が報道されたことで、母親の元にはアメリカ全土から手紙や電話が殺到した。手紙は段ボール2箱に及ぶ数だった。
 だが、その中身は、加害少年の家族を激励するものばかりだったのだ。
「今あなたの息子さんは一番大切な時なのだから、頻繁に面会に行ってあげてね」、「その子のケアに気を取られすぎて、辛い思いをしている兄弟への目配りが手薄にならないように」、「日曜の教会に集まって、村中であなたたち家族のために祈っています」等々。

――ここまで

 アメリカで起こる犯罪はとんでもないものが多いですが、加害者家族に対するこの民度の差は雲泥の違いです。
 日本で再犯が多いのは、一つには、家族が周囲からつらい目に遭っているがために、もう故郷には帰れない。つまり、頼る場所の一つに頼れないためという背景もあるようです。

 北洋建設、引き続き、取材をしたいと考えております。

 ←「加害者家族」。日本での加害者の家族が置かれた立場がわかる。

●神奈川県のリニア残土はどこに行く? その2
 神奈川県川崎市ではリニア工事のために5つの非常口(立坑)が建設されますが、このうち、梶ヶ谷非常口の近くにはJR貨物駅があるため、JR東海は、5月下旬から貨物コンテナで残土を川崎港まで運んでいます。

 その先、どこに行くのか。これについては、前回のブログでも書きました。
 その一つの想定地が、千葉県鋸南町の採石場跡地です。
鋸南町採石場跡地google earth鋸南町の採石場跡地。google earthから。手前の緑色の部分が業者が掘りすぎてしまったため、県から埋め戻しを要請されている場所。なぜか「汚染残土」のみを受け入れる方針。必要な汚染土壌は約150万立米。

 その後、ある方から、以下の新しい情報が。

★リニアの残土の埋立地として今のところはっきりしているのは、富津市田倉の「千葉開発」です。

 ただし、詳細がない情報だったので、その後の続報を待っていたのですが、本日、フェイスブックで、以下の情報を目にしました。投稿者は椎葉かずゆきさん。プロフィールからは、日本共産党の職員さんのようです。

ーーここからーー

〝リニア残土が千葉に来る〟

 リニア中央新幹線は、品川―名古屋間の86%を地下で走る計画です。そのため、工事をすれば、ものすごい量の土砂が出ます。
 当然のことながら、その処理が計画発表の当初から問題になっていました。
 とくに、川崎市宮前区梶ヶ谷の貨物ターミナル敷地内に2本の縦坑を掘っていますが、当初から貨物で港まで運んで、どこかに持って行くとされていました。
 問題は、その「どこか」です。
 5月26日にJR東海が、残土を運び出す出発式をおこない、報道によれば千葉県内陸部というのです。
 三輪由美県議から富津らしいと連絡を受け、富津市の松原和江市議が調べたところによると、川崎市の三井埠頭から運び出した土砂を、袖ケ浦市のたい積場で受け入れ、木更津―君津を通って富津の処分場に運び込む計画であるとわかりました。
 ここで問題になるのは、大きく3つです。
 ★袖ケ浦市のたい積場からは陸路ですから、どれだけのダンプが通り、住民にどんな影響を与えるのか。
 ★5カ所に6本の縦坑を掘る川崎市内だけで、およそダンプ95万台分の建設残土・汚泥がでると推定され、そのうち千葉県にどれだけ運び込もうとしているのか。
 ★そもそも、なぜ千葉県なのか。

 この地域は自然豊かで、水源地にもなる場所です。
 ただ、半径300m以内の住民からの同意を条件とする富津市残土条例がありますが、住民が住んでいないようなところを選んで処分場をつくる業者も少なくありません。
 けっきょく捨てやすいところに捨てるということなのか?!
 神奈川でも山梨でも、自然と住環境を壊す実態を目の当たりにし、この千葉県でもか!という想いです。自然豊かな日本の国土を破壊するリニアはいらない!

ーーここまでーー

●松原和江市会議員の情報
 ということで、このなかに出てきた、松原和江市議の自宅に電話しました。
 教えていただいたのは、

★情報は富津市役所で確認した。
★リニアの残土は今月末には運び込まれるらしい。
★千葉開発はとんでもなく広大に残土を積み上げている会社。富津市には残土処理を規制する残土条例があるが、それをクリアつつあちこちに残土の山を作っている。

千葉開発google earth千葉開発の造成している残土山。google earthより。この残土を運ぶためにダンプ街道になっていないのか等々は調べる必要あり。

●富津市役所の情報

 そこで、富津市役所(環境保全課)に確認してみると

●千葉開発からそういう意向は受けている。
●ただし、市長が残土埋立等を許可するのに必要な届け出書類がまだ来ていないので、埋め立てが確定しているわけではない。だから今月末に残土が富津市に来るかは判らない。

 とのことでした。
 モノゴトが動くときは、いろいろと情報が錯綜するのが常なので、また、同じ部署でも人によって有している情報が違うので、このあたりはまた正確に調べてみます。

●富津市残土条例
 ところで、富津市には、残土埋め立てを規制する「富津市土砂等による災害の発生の防止に関する条例」がありますが、ここでは以下のことを規定しています。

 ★条例の対象となる埋立面積  500平方メートル以上
 ★事前協議  埋立実施前に事前協議が必要となる。
 ★住民説明会 埋立実施区域で住民説明会を行う。
 ★地域の承諾 事業区域から300メートル以内に居住する世帯の8割以上の承諾が必要。(逆に言えば、300メートル以上なら承諾は不要)

 等々です。

 また、7月4日の神奈川新聞では、川崎市が川崎港での残土埋め立てを了承する方向性でいることを報じています。

170704神奈川新聞 川崎市残土受け入れ?

 梶ヶ谷から排出される残土は約150万立米。
 そして、鋸南町の採石場跡地で必要としている「汚染残土」も約150万立米。l
 川崎港の埋立てで必要なのも140万立米。

 そして、神奈川県ではリニア工事で、「1140万立米」の残土が排出され、このうち用途が決まっているのは、相模原市緑区鳥屋に建設予定の車両基地の盛土に使う360万立米だけ。
 残る780万立米は?

 数年前にJR東海が神奈川県の環境影響評価審査会に何度も促されて、ようやく出した資料によれば、神奈川県にある最終処分場のすべての空き容量を合計しても、この780万立米には届かない。つまり、元々、神奈川県の残土は外に行くことは予想されていましたが、川崎港を埋め立てたとしても、まだ膨大な残土が控えているわけで、その行く先の一つとして千葉県に注目するのは妥当です。

 じつは先日、千葉県の残土山もいくつか視察したのですが、それも含め、詳細は後日。

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●長野県からの意見陳述

 2017年6月23日、第5回「ストップ・リニア!訴訟」口頭弁論が東京地裁で開かれました。

170623裁判前の集会


 今回の意見陳述は「長野県」からです。
 一人が、南アルプスのトンネル掘削の最前線にいる大鹿村釜沢集落で自治会長を務める谷口昇さん。もう一人が「飯田リニアを考える会」の米山義盛さん。

意見陳述した谷口昇さん 意見陳述した米山義盛さん最初が谷口さん、次が米山さん。

 谷口さんには現地で何度もお会いしていますし、米山さんとは3月の阿智村と松川町を取材するときにご同行いただき、松川町での残土処分予定地にまで案内をしていただきました。
 意見陳述はお二人合わせて45分もあるので、ここでそのすべては書けません。幸い、他のサイトでお二人の意見陳述書のコピーを公開されているので、その全文についてはこちらをご覧ください
 
 また、信濃毎日新聞がよくまとまった記事を出したので、それはこちらをご覧ください

 ただ、今回の裁判が「JR東海は環境影響評価法33条に違反している」というのが争点の一つである以上、それと関連したご発言を谷口さんの意見陳述から紹介します(概要)。

「釜沢地区の除山非常口は、環境調査の結果、当初の予定を変更して設定されたものですが、平成25年(2013年)の準備書の段階では、他の場所は改変区域から600mの範囲で食政党が調査されていたのに、ここだけは改変区域から200m程度の範囲しか調査されませんでした。その後、平成26年度(2014年度)に長野県知事の意見等を受けて600mの範囲で調査されましたが、その結果を待つことなく評価書は確定し、(国から)認可がされております

「大鹿村は、県道59号線(中央高速道「松川」ICと大鹿とを結ぶ道)の完全二車線化や国道152号線(大鹿村内のメインルート)を迂回するルートを求め続けてきましたが、具体的な計画が決まらない段階で環境影響評価書が確定し、国の認可が下りてしまいました

 これは、不安とかではなく「事実」です。この事実を裁判所がどう判断するのか。

 そして、意見陳述の最後をこう締めました(要約)。

「3つの事項の確実な実施を求めたいと述べております。
1 地元住民等への丁寧な説明を通じた地域の理解と協力を得ることです。
2 国土交通大臣の意見を踏まえた環境の保全です。
3 南アルプストンネル等の安全かつ確実な施行です。
 JR東海は、これら条件を無視し、自分たちの思うように早く工事を進めたいと考えているとしか思えません。JR東海が不明瞭な説明しかしない理由は、JR東海自身も盲目的にこの事業を進めているのか、それとも公表すると都合の悪い事実があるからではないかと思います。(中略) 説明にならない説明しかしない、まともに調査する気もない、住民の意見も聞かない、国土交通大臣が出した条件についても全く不誠実な態度を示す、このような事業者が実施する事業は百害あって一利なしであり、即刻白紙撤回すべきと主張いたします」

 また、大鹿村からは今回5人の方が上京されて裁判を傍聴したのですが、裁判後の記者会見で、谷口さんは以下のことを伝えました。

「釜沢から村の中心部に行くために朝の8時に出勤する人たちがいるんです。でも、もうその時間で、向こうからガンガン、ダンプやトラックがやってくる。本日も28台のダンプが連なっていましたが、JR東海は『地元の人を優先して通す』と約束していたのに、全然道を譲ってくれません。僕たちは苦しい。でもJR東海は『理解してください』と言うだけですが、それは僕には『我慢してください』にしか聞こえないんです

裁判後の記者会見。手前から谷口さん、米山さん。


 以前、本ブログでも、大鹿村の前島久美さんが「準備工事の今の時点で、すでに道路わきをダンプやトラックがたくさん通るので、騒音や粉塵に悩む家がたくさんあります」と話したことを伝えましたが、これがもし、数年後、本当に一日最大で1736台もの大型車両が通行するようになったらどうなるのか。
 でもそのときになって、リニア賛成派の方々は「これはなんだ!」とは言えません。
 私が数年前に泊まった大鹿村のある宿泊施設の主人は「リニア工事はやるべきだ。村が潤う。反対派はそこんところを何も考えていない」との持論を展開してくれましたが、でもその宿泊施設のすぐ前を大型車両が騒音、振動、排気ガス、泥はねを起こしながら通るかもしれない。私ならもうあそこには泊まらない。あそこの経営は危なくなる。そのときにもう反対は言いにくいだろうなあ。

 それにしても、この準備工事の段階で実害が出ている以上は、二次情報ではなく、やはりこの目で確認したなと思います。


●裁判の争点
● 今回の裁判の争点の一つは、前も書いた通り、「どういう施設をどういう構造で造るのかが、不特定かつ不明瞭。それが特定されないアセスは違法。まず、どういう施設ということで事業認可したのか、それを明らかにすべきだ」ということです。
 それは前回の第4回口頭弁論で、裁判長も被告の国に対して提出を求めましたが、今回、国は「工事認可申請書」を出してきた。だが、中心弁護士の一人である関島保雄弁護士に言わせると「そこに添付されている平面図や立面図を見てもまだ非常に抽象的。保守基地、車両基地もどんな建物なのかが依然わからない。それが認可されたということは、不完全なアセスが認可されたことになる」

 もう一つの争点は「事業認可までの一連の手続きのなかで瑕疵があれば、事業認可は違法になる」との見解です。
 これについては、今回、裁判長が「そういう前提でいいのか」を確認したところ、国は同意しました。
 もちろん、瑕疵があったとまで認めてはいません。
 原告としては、リニア建設は全幹法に基づいていますが、鉄道事業法に定められた建設に必要な4要件(安全性、経済性など)がない。だがリニアは、鉄道事業法に基づいての建設ではないので、全幹法の適用であれ、それと同等のことをやらないと認可の違法に結びつくという理論ですが、国は全幹法でも裁量権のなかで合理的にやってきたので瑕疵はないとの理論です。

 裁判の最後に、裁判長は「かならずしも鉄道事業法にこだわらなくても、全幹法適用だとしても、実勢がどうであったかの議論でいいのでは? よろしくお願いします」と、その中身を議論しようとの提案のような発言をしたのが印象的ではありました。
 裁判後の記者会見でも、関島弁護士も、「我々にすれば、(事業認可までの経緯が)どんな中身だったのかが問題。今後、詰めていく」と、いよいよ前向きな議論ができるとの見解を話していました。


●キーポイントは残土

 さて、もう一人の意見陳述者の米山さんは、その意見陳述のざっと3分の2を「残土」に焦点を当てました。大鹿や松川町を含めた長野県の伊那谷では昭和36年(1961年)に、豪雨によるいわゆる「さぶろく(36)災害」で甚大な被害を出し、死者と行方不明者だけでも136人を数えました。
 こういう場所の沢筋に残土を置いていいのかと訴えたのです。
 
 今回の裁判は行政訴訟。はっきり言って、過去の行政訴訟で勝った事例はほとんどありません
 裁判後の報告集会で、公共事業の裁判などに詳しい五十嵐敬喜氏(弁護士、法政大学名誉教授)は「行政訴訟の問題は、ほとんど勝てないこと。行政訴訟での裁判は、理屈をはるかに超える。裁判所と国の代理人とが一体化しますから」と発言。
 一方、講演をしたジャーナリストの斎藤貴男さんはこう述べました。
「行政訴訟の意義は大きい。確かに行政訴訟は厳しいが、裁判官によってはそうでもない。住基ネットでも50件の裁判が起こされ、ほとんど負けたが、金沢地裁と大阪高裁とで「違憲」判決が出た。これが住基ネットのネットワーク化を遅らせたのも事実です」

ジャーナリスト斎藤貴男さんの講演←斎藤貴男さん

 
 そこでリニア裁判の争点が多々あるなか、河村晃生原告団長が強調するのは「残土問題はJR東海のアキレス腱だ」ということです。
 というのは、各地の自治体はリニア計画に賛成せざるを得ませんが、その土地に生きる住民にとっては、すぐ上流に大量の残土を置かれることは冗談ではなく、本ブログで報告したように、すでにいくつもの自治会が残土計画にNOを突き付けています。
 詳しくは本ブログを読み返してくださいませ。

裁判後の報告集会いつもながら大勢の人が裁判後の報告集会に集まる。

 そして、もしかしたらですが、残土計画に反対を言うだけではなく、そもそも残土をもちこませない自治体の条例つくりにまで市民が力を出せるかが見えてきそうです。その刺激となる視察ツアーを企画中です。
 書きたいことは多々ありますが、時間が足りません。
 本日はこのへんで。

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●リニア計画での川崎市の残土は、千葉県の採石場跡地に行く?

 真剣に書けば長くなるので、ごく簡単な報告です。

 6月22日、千葉県に行ってきました。
 なぜ千葉県かと言うと、今年3月の時点で、JR東海は川崎市での住民説明会で、神奈川県川崎市の梶ヶ谷非常口(川崎市高津区梶ヶ谷)から排出される残土を、すぐ近くのJR貨物ターミナル駅から貨物コンテナで川崎港に運び、川崎港からは船で千葉県に運び、内陸部の「採石場跡地」に埋め立てると説明しました。

 それまでは、確かに川崎港までJR貨物で運ぶ・・までは公にされていましたが、その先、残土がどこに行くのか全く分からなかったのですが、「千葉県」という具体的地名が出たのは、ああ、やっぱりねというかんじでしょうか。

 ともあれ、千葉県で残土についての市民運動を展開している佐々木悠二さんに連絡を取り、果たして残土山とはどういうものなのかをまずはこの目で確認したいので、案内をお願いできないでしょうかと連絡してみました。
 佐々木さんについては、長野県大鹿村での学習会で話してくれたことを本ブログで紹介しています。ご参照ください。

 その佐々木さんは、私からの連絡で「リニアの残土が千葉県の採石場跡地に」との言葉に「あ、つながった」と何かがひらめき、すぐに返信をくれ、本日の案内となりました。

 ごく簡単に書きます。

 千葉県南部には鋸南町(きょなんちょう)という町があり、そこでは鋸南開発という会社が長年、鋸山(のこぎりやま)から採石を行ってきました。その周囲の道はかつてダンプ街道と化すほどのダンプカーが行きかったようです。

リニア鋸山鋸南町の採石場の一つ。長年の採石で山が段々畑のようになってしまった。


 ところが、鋸南開発は採石をしすぎてしまい、山肌を削るだけではなく、地面も掘り下げてしまい、県から「約束違反だ。埋め戻せ」との指示を受けていました。その深堀したのは47万立米。
 10トントラックで約7万台もの量になります。

リニア鋸山の深堀地1深堀りし過ぎて県から「埋め戻せ」との指導を受けた鋸山のふもとの土地。

 そこで会社が県に約束したのが「埋め戻しは採石場内の(売れなかった)土砂で行う。有害物質は入れない」ということです。
 ところが、この会社、埋め戻し用に置いていたはずの土砂も売ってしまったため、埋め戻し材がなくなってしまった。
 そこで、会社は「汚染土で埋め立てる計画」を県へ提出。有害物質はダメだと言っていた県は、この計画を受理。

 なぜ? 住民の質問に県は「ここで埋め立てることで不法投棄を辞めさせることができる」と次元の違う回答を返します。

 埋め立てる汚染土壌は47万立米。さらに、その上に100万立米を積み上げるため、合計147万立米の汚染土を受け入れることになります。

 ちなみに、梶ヶ谷の立坑からは(立坑+トンネルで?)約150万立米の「残土」と約100万立米の「建設汚泥」が発生。量としてはほぼ合致します。


 汚染土からの浸出水は近くの佐久間川に入り、わずか2キロしか離れていない港にも流れていく。さらに、汚染土の粉塵や泥はねが起こることに、2012年7月、住民が「鋸南町の環境と子どもを守る会」を設立。反対署名や反対協議会も立ち上げ、人口8000人の町でじつに8割の人が反対するまでの大反対運動に発展しています。

リニア鋸山の深堀地2たまった水は浄化施設を経由して、川、そして2キロ先の海(写真右)にまで流れる。だが浄化できるのかを住民は疑う。 リニア、鋸南町、反対の看板1←町のあちこちにある反対の看板

 この件は、2014年11月14日、千葉地裁木更津支部に会社への「操業差止仮処分」申立を行うと、8回の審尋を経て、2016年7月20日、裁判所は仮処分を決定。しかし鋸南開発はこれを不服として今年2月8日に異議申立。現在、保全異議審が進行中。

●自然由来の汚染土にこだわる

 住民がもっとも不思議だったのは、鋸南開発がなぜ「普通の残土」ではなく「自然由来の汚染土」にこだわっているかでした。

 そこで佐々木さんが「あ、つながった」と思ったの話になります。もう30年も残土に関する市民運動を展開している佐々木さんは、建設業者が残土をどう排出し、どう運ぶかを熟知しているのですが、リニアの梶ヶ谷非常口は深さ85メートルまでの立坑を掘るわけですが、深く掘るほどに発生するのが地中のヒ素や六価クロムなどです。これは環境に放出されると汚染物質になる。
 そして、立坑を建設した後は、今度は横方向ににシールドマシンでトンネルを掘り進めるわけですが、佐々木さんの説明では、シールド工法は、薬剤、水、石灰などを混ぜながら、トンネルを巨大掘削機で掘り進めるため、削った岩盤や土砂がいわゆるドロドロの状態になり、また、深い地下から地上へとポンプアップするためにはドロドロにせざるを得ず、そうなると、それはもはや「残土」ではなく、「産廃」になるということです。

 ここで関係者の情報と推測とを整理すると、

●鋸南開発は「汚染土」を待っている。普通の「残土」では受け入れない。

●JR東海は、評価書では、「残土」と「建設汚泥」が出ると書いている。この「残土」も佐々木さんが予想するところの「ドロドロ」の状態で出てくるとしても、JR東海が評価書で書いているように「無害化」をすれば「残土」となる。

●だが無害化にはカネがかかる。実際に非常口やトンネルの建設を担う建設業者がもしそれをやらない、中途半端にしかやらない場合は、「汚染土」となる。

●逆に、「汚染土」を引き受けてくれるのであれば、あえて無害化しない残土をそのまま運ぶとの可能性もある。

 ただし、憶測は書くべきではありません。現時点ではとりあえず情報の材料だけを集め、引き続きの情報を待ちます。


●●川崎港の埋立てに使われる?

 千葉に行く数日前に入ってきた新たな情報ですが、

 JR東海は6月1日、川崎市長に宛てて、「梶ヶ谷非常口から搬出する発生土を、川崎市の東扇島の土地造成事業に受け入れていただくよう検討をお願いいたします」と、梶ヶ谷からの残土を港の埋立てに使わせてくれと要請している。埋め立て体積は約150万立米。

 梶ヶ谷の立坑からは約150万立米の「残土」と約100万立米の「建設汚泥」。なるほど、量としてはちょうどいいわけです。

 これに対して、川崎市は6月8日、JR東海に「残土受け入れの可否については、今後、本市としての考え方を整理します」と回答を保留している。


 千葉県に運ばれるのか、それとも、川崎港での埋め立てか。 わかりません。

 鋸南町の住民も町役場などに確認をするかもしれず、情報を待ちます。
 
 本日(6月23日)はリニアの裁判です。これから出かけます。

リニア、鋸南町、反対の看板2


増補悪夢の超特急
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●引き取り5団体の共同記者会見
 6月16日。

 沖縄の米軍基地を「本土」で「引き取ろう」と主張する5団体が、このたび連絡会を結成し、東京で記者会見を開催しました。
 
 5団体とは、大阪、福岡、長崎、福岡、東京。(ただし、長崎は欠席なので、東京がメッセージを代読)

170616引き取り5団体←団体の代表者たち。参加者の頭で名前が隠れているのが、新潟の福本代表。

 「米軍基地を引き取る運動」については、本ブログで何度か書いているので、ここでは同じことを繰り返しません。

 とはいえ、じつは、月刊「望星」という月刊誌の5月号と6月号に、引き取る運動を2回連載したのですが、原稿用紙30枚ほどあるその原稿を調整し、それに東京集会のことを書き加えた原稿が、いみじくも、今回の記者会見のあった6月16日に、週刊プレイボーイのネットニュースで配信されました。おそらく、これを読むのが全体像を知るにはいいのかと自負しております。読むにはここをクリックしてください。

 さて、今回の連絡会の報告の目玉となったのが、全国46都道府県知事に送ったアンケートの結果です。
 今回、司会を務めた「本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会」の里村和歌子代表によると、まず驚いたのが、「どこの馬の骨ともわからない市民団体からのアンケートに、42知事が回答してくれたこと」だとか。

170616里村さん←里村さん

 アンケートの内容は

1 沖縄県の米軍基地についてどう思いますか?
2 国土の0.6%の沖縄県に70.6%の米軍基地があることをどう思いますか?
3 英軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への移設計画についてどう思いますか?

 3-1 移設先について土思いますか?
 ①県内移設(辺野古への移設)
 ②県外移設(沖縄県以外の国内への移設)
 ③国外移設(日本国外への移設)
 ④移設なし撤去

 3-2 皆さんの都道府県への移設についてどう思いますか?
 ①政府から要請があれば引き受けを検討したい。
 ②市民から要請があれば引き受けを検討したい
 ③日本全体では必要だが、自分たちの都道府県では引き受けられない
 ④沖縄県のままでいい
 ⑤その他

 等々、8項目。

 (すみません、今、他の仕事で忙しいので、すべてを手書き入力できません。アンケート用紙をスキャンしたものを以下に貼っておきます)

引き取るアンケート1 引き取るアンケート2

 そして、アンケート結果の概要は以下の通りです(これも、今回は手書きコメントをサボります・・。)

引き取るアンケート3

 このアンケート調査で、面白いのは、たとえば、選択式の回答では「沖縄の米軍基地を縮小すべきだ」と回答したのは4知事に留まりますが、記述式回答では、3分の1の知事が基地負担削減の必要性に言及していることです。
(確かに、選択式だと、その「単語」を選ぶことで、「単語」だけが独り歩きする可能性もあります)

170616福本さん←アンケート結果をまとめた新潟の福本さん

 5団体の今後ですが、全国各地でシンポジウムを開くなどして、市民の理解を得て、その先に政治課題として扱い、一日も早く、沖縄の米軍基地、とくに普天間飛行場を引き取ることを目的にしています。

 辺野古ではじわじわと工事が進んでおりますが、沖縄県からは「辺野古で基地が完成したとしても引き取ってもらいますから!」との声も寄せられており、長い闘いにはしたくないようですが、長い闘いになりそうです。

●「基地絶対反対派」はどう考える?

 じつは、「基地絶対反対」運動を展開する団体のなかには、「引き取る」運動を異端視する人も見受けられます。
 
 ただ、「基地絶対反対」運動も「引き取る」運動も、いつの日か日本から「米軍基地をなくす」ことと「日米安保もなくす」ことを目的にしているので、共闘はできる。
 事実、大阪の松本代表によれば、大阪では、基地絶対反対運動と引き取る運動を掛け持ちする人もいるそうです。

170616松本さん←大阪の松本代表。

 ただ、基地絶対反対運動が引き取る運動を異端視するのは、「それでは基地がいつまでたっても無くならない」「日米安保を固定化してしまう」と考えるからです。
 なるほど。
 だからこそ、両者が公の場で徹底討論する場があれば面白いと思うのですが、なかなか実現しないようで・・。

 ただ、私は基地絶対反対運動の方に尋ねたいのですが、

「引き取る運動とは、沖縄の『基地の県外移設を』『基地を引き取って』との声に応える運動でもあります。では、その声を発している沖縄の人たちの前で、その声に対してどんな言葉を返すのか?』

 もちろん「基地を撤去するために全力で頑張っています」との言葉は正解です。加えて、「引き取って」との声にはどう答えるのか?

 私もまた、基地絶対反対運動も引き取る運動も否定しません。どちらも必要だと思います。
 ただ、 日本人の約9割が日米安保条約を支持している以上、だったら、米軍基地の撤去よりも移設のほうが可能性は高い。そこで必ず起こる賛否両論の議論をすることには意味があるはず。だって、今まではその議論すらなく、結果として、沖縄に基地を押し付けてきたのが事実なのですから。

沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える
←引き取り運動を知る際の入門書。

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2017/06/17 23:52 戦争 TB(0) コメント(0)
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