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 1日の「官製ワーキングプア研究会」設立総会で、Sさん(男性)に出会いました。
 話を聞いて、びっくり。小学校1年生のお子さんに「戸籍と住民業がない」というのです。

 Sさんは結婚していますが、いわゆる、婚姻届を出さない「事実婚」生活を送っています。つまり、生まれた子どもは、母の子どもではあるけれど、父のいない子どもということになり、出生届には「非嫡出子」(ひ・ちゃくしゅつし)と申請しなければなりません。

 嫡出子とは、「法律上の夫婦(いわゆる、夫婦がどちらか一方の苗字を名乗る)」から生まれた子どもを意味し、いわば「正統な子ども」を表す言葉です。
 つまり、非嫡出子は、正統ではない子ども、ということになります。

 非嫡出子であれば、戸籍に入れることはできるのですが、Sさんは、子どもを「非嫡出子」として届け出ることを断固拒否。Sさんは2006年に本人訴訟で、自治体に対して、子どもの住民票作成を求める裁判を起こしました。
 一審は勝訴。二審は敗訴。上告した最高裁でも敗訴しますが、「戸籍がなくても住民票を作成できる」ことだけは確定しました。
 だが未だに、行政は住民表作成に応じていません。

 Sさんの主張は極めて明快です。「子どもは平等。生まれがどうとかで差別すべきではない。

 Sさんは今、2回目の裁判を闘っているところです。


●民法772条の壁
 
 この日本に、戸籍のない子どもが2000人以上もいると言われています。
 おそらく、その多くを占めるのが、民法772条「離婚後300日以内に出産した子どもは前夫の子とみなす」とした法律の壁にぶつかった女性たちです。

 これは、離婚とほぼ同時に、新しい夫(パートナー)と暮らし始めた場合、その人との間に授かった子どもであっても、法律は、離婚から300日以内の出産は、離婚まで住んでいた前の夫との子どもとみなすのです。

 つまり、子どもは前の夫の戸籍に入ることになります。
 これは、妻にすれば「冗談じゃない」という話になります。また、別れた元・夫にしても「そんな子を、自分の子として受け入れるわけには行かない」ということになります。

 つまり、どちらにしても、生まれた子は、前の夫の戸籍には入れたくないということになります。
 しかし、法律上は、母親の戸籍に入れることはできない。
 こうして、無戸籍の子どもが現れることになります。

 これに、「戸籍もなく、子どもの教育や就職はどうなってしまうの!」と裁判に訴える事例もあります。
 その一つが、現在、民主党の国会議員、井戸まさえ議員です。

 井戸さんも、離婚後300日以内に、新しい夫との間に子どもをもうけますが、「前の夫の子どもである」との解釈により自分たちの戸籍に入れることができず、裁判で闘いました。

 裁判には1年以上かかりましたが、その間「子のこの将来はどうなるの?」と夜も眠れない日々が続いたそうです。そして、裁判の結果、ようやく、自分のことして認められたのです。


●性同一性障害の場合

 さらに差別的とのいえるのが、性同一性障害を巡る話です。

 大阪に住む前田良さんは、元・女性です。

 幼い頃からスカート着用に違和感を抱き、男性よりも女性を好きになるなど、心と体の不一致を覚えていました。果たして、20代半ば頃に「性同一性障害」との診断を受けるのですが、その後、タイで性転換手術を受け、日本でも戸籍上の性別を女から男へと変更し、翌年には愛する女性と結婚もしました。

 ただ、いわゆる生殖能力は備わっていないので、第三者からの精子提供で妻の亜紀さんが妊娠・出産しました。

 ところが、出産の翌日、出生届に赴いた役所の窓口で、前田さんは「非嫡出子」としてなら受理できるとの説明を受けます。
 前田さんの戸籍には、女性から男性へと性転換したことが明記されているので、窓口は受理すべきかを法務省に電話していたのです。そして、法務省の「戸籍上は男性だが、生物学的には女性。つまり、女性同士の間で生まれた子は嫡出子として認められない」との説明を受けて、窓口は「嫡出子」での受理を拒否したのです。

 しかし、ここで不可思議なことがあります。それは、どこの国にも、生殖能力に欠けている男性は必ずいます。日本でも、戦後、1万組以上の夫婦が、その理由から体外受精を受け出産しているのですが、こちらは例外なく「嫡出子」として受理されています。

 彼らと前田さんとの違いは何か。それは、従来から男性であったかどうかだけです。
 細かいことを言えば、体外受精したことなど戸籍に載るはずがありませんから、申請すれば、窓口は何も気がつかずに受理するしかありません。

 前田さん夫妻は、「自分たちのこどもが、なぜ非嫡出子」なのかと反発。
 役所は、「一度は非嫡出子で受け入れ、それから『養子縁組』の形にすれば嫡出子になれる」と説明しますが、夫妻は、実の子は実の子。養子ではないと、受け入れるつもりはありません。

 前田さんの息子は、今月で満2歳になります。未だに無戸籍です。この間、署名運動もしたし、千葉けいこ法務大臣(当時)とも直接面会するなどの行動も取っています。しかし進展しない事態に、今は裁判闘争も視野に入れているようです。

 前田さんはこう訴えます。「僕が父親になることで、誰かが困るのでしょうか?」


●採用されないDNA鑑定

 民法772条を巡っては、不可思議なことがあります。
 それは、今の時代は、DNA鑑定をすれば、その子どもがどちらの子どもかを容易に判定できるのに、DNA鑑定は採用されていません。

 調べてみてびっくりしたのが、この民法772条は、じつに100年以上も前に作られた明治時代の法律です!
 一度も改正されていません。

 ですから、裁判所としても、DNA艦艇を証拠として採用できないのです。

 いずれにせよ、どんな形の結婚であれ、生まれた子どもは、生まれた時点で差別されるべきなのか? 子どもの幸せを考えると、じつにやりきれない制度です。


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2011/11/03 21:39 人権 TB(0) コメント(1)
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