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樫田秀樹

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立ち退き。その対象は、一般住宅が約190戸、事業所で約100カ所
 3月10日に長野県飯田市を訪問。翌11日に講演することになっていたので、前泊して取材をした。
 飯田市の市民や事業所が直面している問題は大雑把に言えば2つ。
①リニア長野県駅の建設に伴う立ち退き
②リニア長野県駅の周辺開発による立ち退き
 この両方で飯田市では、一般住宅が約190戸、事業所約100カ所が移転対象となっている。

230311飯田市リニア路線1←赤線がリニアルート。その周辺ではコンクリートの土台が目立つ。リニア計画のために多くの人たちが立ち退いている。
 
230311天竜川橋脚←天竜川でのリニア橋脚工事

230311喬木村ガイドウエイ置場←喬木村でのガイドウエイ置場

●駅工事ではほぼ全員が立ち退いた。もしくは立ち退き予定。
①公共事業でのよくあるパターンは、当初、計画に反対をしていても、時間の経過とともにやむなく立ち退きに応じる人がほとんどであることだ。
 飯田市もまさにそうだった。
 2019年。駅建設での立ち退きの対象者のなかには、「絶対に立ち退かない」とグループを結成した人たちもいた。だが今、その多くが立ち退き、「立ち退かない」と決めているのは熊谷清人さん(82)ただひとりとなった。230310飯田市熊谷さん←4年前と比べて熊谷さんは足腰が弱くなった。だが、いやだからこそか、住み慣れた家を明け渡すつもりはない。

 なぜ反対していた人たちが立ち退いたのか。
 聞き及んだ範囲で解釈するならば、家族のなかでも、どちらかというと妻は「国策にはかなわない」「どんどん環境も変わる中で今まで通りの生活はできない」と渋々ながらも立ち退くべきと主張するが、夫は「先祖伝来の土地を捨ててたまるか」と反対の意を示す。
 だがそれを続けているとやがて家族が壊れる。そこで導き出される結論は、「地域が壊れるよりも、家族が壊れるほうが怖い」。やがて、夫も立ち退きに同意して家族は土地を離れていく。
 
 土地収用を担うのは飯田市だが、その用地買収は「戸別交渉」。となると、土地代の査定はその場所で違うし、上物の家屋などへの査定も築年数で違う。買収額はそれぞれの家庭で異なるから、それぞれの家庭でいくらの補償金が入るのかの情報は一切出てこない。それぞれの家庭においても、「お隣はいくらもらったのか」とは思いつつ、それを口にすることはできず、その話題に触れないためにも、地域から井戸端会議は消え、やがて、昨日まで挨拶を交わしていたご近所さんにお別れの挨拶を言うことなく、家族はどこかに引っ越していく。
 熊谷さんは「例外なく、ご近所さんは私たちに一言の挨拶もなくいなくなった」と振り返る。
 それでも熊谷さんが一人だけでも「ここを離れない」と決断したのは、「これは形の違った戦争」と思うからだ。
「果たして実現の見込みがあるか不確かなものに、国策として一般市民が総動員される。その結果、家や財産を失い、地域が失われても、だれも責任を取ろうとしない。太平洋戦争では、私の父も、父の弟も戦死しているだけに、なおさらそう思うのです」
 
●何のための駅前開発か?
 ②長野県はリニア長野県駅での一日の乗降客数を6800人と想定している。
  飯田市にはこれといった観光資源はほぼない。6800人もの人たちはいったい観光資源もない飯田市にどんな目的で来訪する…と市当局は読むのか? 捕らぬ狸の皮算用?
 飯田市は、リニア駅周辺の再開発計画に着手している。駅前広場開発。駐車場整備。そこに多くの車両を集めるを可能とするための県道拡幅。
 この県道拡幅についても、多くの個人宅や事業所が立ち退き対象にされ、実際に多くが立ち退いた。

●一家で「立ち退かない」と決めた。
 だが、一家で「立ち退かない」と決めた人たちもいる。
 そのひとりが、型染め業「筒井捺染工場」(飯田市上郷)を営む筒井克政さん(73)だ。

230310飯田市筒井捺染 着物←職人の手作業で完成した着物を披露する筒井さん。
 
 筒井捺染は1897年(明治30年)創業。克政さんはその4代目で、2013年には「信州の名工」にも選ばれた職人だ。
 かつては、その水の良さに、上郷周辺には約50軒ほどの型染工場があったが、今残るのは筒井捺染だけ。
 ところが、リニア駅周辺開発の一環として、筒井捺染が面している県道市場桜町線が拡幅される計画だ。
230310飯田市筒井捺染前の県道←この県道の両側が拡幅される。写真左の筒井家でも工場が移転対象とされている。
 
 もし拡幅されてしまうと、筒井捺染工場は移動を余儀なくされる。その場合、筒井捺染は隣接地を購入して工場を立て直すことになる。
 県道拡幅だから、用地買収の担当は長野県になる。ここで長野県が提示した用地補償額はあまりにも低く、それでは工場移設に約1億円も足りない。その場合の問題は二つ。
1.コロナ禍で仕事が激減したところで、1億円の借金などできるものではない。
2.十分な補償金があったとしても、工場(特に染め付け台)を作れる人がいるか。
3.工場建て替えが可能としても、その数か月間は休業しなければならない。仕事が止まってしまう。
 一番の問題は染め付け台だ。
 筒井捺染には、型染に必要な長さ約13メートルの染付け台が8台ある。県が提示したその補償額は全部で93万円。

230310飯田市筒井捺染←染め付け台の前に立つ筒井さん。この8台の補償額が93万円という低額設定されたことが信じられない。

 筒井さんは県職員に問い質した。
「どういうわけ? 400万から500万円はするのに」
 これに対する回答は「材料代で査定した」というものだった。染め付け台は材料だけでできるものではない。
「それ、おかしいじゃないの」
「いえ、これは仮に書いてきた査定なので…」
「仮? 正式な書類じゃないのか」
「また見直します」
 そう言って県職員は帰っていったが、筒井さんは、今、県を信用できなくなっている。

 染付け台を作成した京都の職人は既に亡くなっているだけに、同じものが入手できる保証はない。新調できない場合、8台の台を使い続けるしかないのだが、繰り返すが、工場移転をするだけの資金が筒井捺染にはない。
 事業者に借金を押し付けながら立ち退きを要請する県の姿勢に筒井家では、一家(本人、妻。息子と息子の妻も職人)で拡幅に反対することにした。
 2月に開催された住民説明会で、克政さんの息子は「(その補償では)ウチはそれでは生きていけません」と発言し、克政さんも「ウチは命を懸けて家業をやっている。私たちは立ち退かない」と明言した。
 今、この地域で、一家をあげて県道拡幅に反対するのは筒井家だけだ。

 すると県産業課の職員が後日「どうにかするから」と連絡してきたが、その後、具体的なやりとりはない。
 筒井さんは、県の関係部署に尋ねた。
――もしウチが立ち退かなかったらどうなるの?
「筒井家が強制収用されることはない。そのまま道がカクンと曲がる形になるだけ」
 立ち退きも生活を激変させるが、立ち退かなくても、道路に飛び出すような位置になる筒井家は「なんだ、この家は」とある意味、白い目で見られることになる。
 だが、少なくとも筒井さんは間違ったことは主張していない。

●立ち退いた人びと
 立ち退いた人たちがその後どういう生活を送っているかは確認したいところだが、市民団体「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」の代表世話人(3人)のひとりである大坪勇さんは、その人たちのその後を見ている。
 仕方なく立ち退いた人のなかには、一気にご近所付き合いがなくなったので後悔する人もいるという。
 大坪さんが筒井さんと話し込んでいるときに「よっちゃん」のことに話が及んだ。
大坪「あれだけ北条(地区)のボスとまで言われた女性が、立ち退いた先で、今、ノイローゼになっている」
筒井「オレも時々会いに行くんだに。端切れで財布を作るのが楽しみだとは言うけど、別人になっちゃった」
大坪「今、オレがしているのはそういう人たちの人生相談。みんな、人生狂わされちゃった…」

●「早く事業を進めてほしい」
 筒井さんの取材が終わった後、私は大坪さんとともに、ある自治会の幹部に会いに行った。
 その自治会もリニアルートにかかるために多くの立ち退き者を出している。
 その幹部はまず憤っていた。
「昨日の朝ですが、私の土地に突然リニアのための測量杭が打たれていた。JRは口先では『住民に寄り添う』というけど、どう寄り添っているのか。もっとも、実際に杭を打ったのは清水建設かもしれないけど、JRも飯田市もそれを指導しない。だいたい、リニアって2027年開業は無理でしょ。あと30年経ってもできないかもしれない。だったら、なんでもう何十軒も移転したの。冗談じゃないよ」

230310飯田市筒井捺染 県職員発言メモ←筒井克政さんが県職員とのやりとりをメモしていた。それによると「リニア開業時期は「申し上げられない」とのことである。

 そして、次のように言葉を続けた。
「だからこそ、私はリニア工事をさっさと進めてほしい。だってそうでしょ。みんなリニアで人生を変えられてしまったんだ。それをJR東海は身に染みて感じていない」
 この言葉は、多くの日本兵が戦死していたからこそ「彼らの死を無駄にはしない。勝つまでやるべし」との戦争続行への国威高揚がされた戦時中の国民の意識にも通じるものがある。だがですよ、この幹部も分っている通り、2027年リニア開業がなくなった今、2027年開業に照準を合わせるような立ち退きや事業所移転を焦って行う必要はない。まだ立ち退かなくても、事業所の移転をしなくても、まだまだいつもの生活はできる。
 リニアができるできない以前に、いつもの生活を破壊することは極力避けなければならないし、また、そういう被害に遭う人たちは最小限に抑えるべきだ。

230311飯田市リニア標識←品川駅から178Km30mのリニア標識。

 それにしても、リニアの取材は広くて深いからやってもやっても終わらない。
 その取材範囲は1都6県と広く、そこに潜む問題には環境問題もあれば社会問題もあるし、リニア事業の採算性の精査も対象になる。そして、今年はその可能性はないとは思うのだが、もし名古屋・大阪間の工事(まずは環境アセス手続き)が始まれば、もう時間的にも、何よりも資金的にも遠方取材は無理になる。それを想うとあと何年頑張れるだろうかと思うが、それでも前に行くしかない。
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1都6県にまたがるリニア問題を一人で取材することは自分で選んだ道でありますが、それも多くの方から取材費カンパというご支援をいただいたからです。とはいえ、2022年末にその資金プールがついに底をつき、東京都や神奈川県以外の遠方への取材を控えざるを得なくなってしまいました。今一度、ご支援を賜りたくここにそのお願いをする次第です。ご支援者には、今年には発行予定のリニア単行本を謹呈させていただきます。私の銀行口座は「みずほ銀行・虎ノ門支店・普通口座・1502881」です。また100円からのご寄付が可能なhttps://ofuse.me/koara89/letter もご利用ください。私と面識のない方は、お礼をしたいので、ご支援の際に、できればお名前を連絡先を教えていただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  樫田拝
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