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樫田秀樹

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●突然の仮処分決定。地裁へ急げ。
 2月28日の午後。ニュースで、工事中止を訴えていた「東京外かく環状道路」(外環)の仮処分裁判の決定が出て、一部区間の工事中止が決まった、と知る。そして16時から東京地裁で記者会見があるというので、びっくりして、すぐに身支度して地裁に向かった。開催の10分前に到着。

220228外環仮処分決定
 
 決定文についてはこちらにアップしたので、見られたし。主文の一部は以下の通り。

220228外環仮処分決定主文

 決定(仮処分では判決ではなく決定という)の主文を簡単に書けば、
●外環の一部区間で気泡シールド工法によるシールド工事をしてはならない。
 というもの。
 その区間とは、図を参考にしてください。図をクリックしてから拡大すれば鮮明に見えます。
外環工事中止命令区間

 この仮処分申請の原告は13人。そのなかの数人が記者会見に臨んだが、國井さわ美さん(写真左)は「嬉しさ半分、悲しさ半分の決定です」と発言した。

 嬉しいのは、結果として、外環ルートの南半分であれ、工事中止との決定が出たからだ。
 そして、悲しいのは、
★13人の原告のうち、その訴えが認められたのは、陥没現場のすぐ近くに住むMさん、ただ一人だけだったということ。
★ルートの北半分にしても、工事の危険性はあるのに、「再発防止策が妥当である」としt絵、裁判所はその工事を認めてしまったこと。

 この仮処分申請は、そもそもが、世田谷区の野川という川で気泡が発生したことが始まりだ。

 外環のトンネル掘削をするシールドマシンは、場所により「気泡薬剤」というシェービングクリーム状の薬剤をマシンのカッターから大量に噴出し、掘削をしやすくする。だが気泡は気体であるため、そのまま回収されることなく、土中を通って地面から出てくる。その気体は酸素濃度6%以下という吸えば即死状態の酸欠空気であったため、危険だ、工事の中止をと訴えたものだった。
 そして、20年10月18日に調布市東つつじヶ丘2丁目の生活道路が陥没することで、仮処分申請の理由に工事の危険性も追加した。
201018外環陥没直後 写真提供:外環ネット陥没直後の現場。写真提供:外環ネット

 さて、陥没の原因について、事故を起こしたNEXCO東日本はこう報告した――「極めて特殊な地盤での施工ミスであった」
 これはシールド工法には何の問題もないと言ったということだ。これは幾人もの地質の専門家に言わせれば「特殊な地盤なんてない」「地盤はその地域で変わる。要は事前調査の有無があったかだ」。実際、NEXCOは、陥没現場の前後1キロにわたりボーリング調査を実施していなかった。
 
 ところが、今回の決定文を読んで驚いたのが、裁判所がその『特殊な地盤』を判断基準にしていたことだ。NEXCOがいう「特殊な地盤」には3条件があり(詳細は上記決定文を読まれたたし)、その3条件を満たすのは、Ⅿさんが住む場所だけだと認定したのだ
 Ⅿさんの自宅は陥没現場から徒歩1分。
 決定文では、M宅の地盤は「特殊な地盤」と「同様な状況」であるので、工事が再開されれば、Ⅿ宅に地盤の緩みを生じさせ、地表面に陥没を生じさせたり、地中に空洞を生じさせたりする具体的なおそれがある、と判断した、と書いてある。
 つまり、残る12人は、特殊な地盤の3条件を満たさず、「本件陥没箇所からの距離に照らしても」、「同様の陥没が生じる具体的な恐れが存在することはうたがわれない」として、申し立てが却下されたのだ。

 そして、2本のトンネルの北半分の区間(大泉ジャンクションから井の頭通り)の工事中止は認められなかった。
 いわば、事故があった区間では工事中止を決めて、事故がない区間では危険性があるのに、それを事前に食い止めようとの判断がなされなかった。

 ただし、裁判所は、以下の点を重視している(要約)。

 債務者ら(国交省、NEXCO東日本、NEXCO中日本)は、当裁判所からの釈明に対し、本件陥没を生じさせた工事については、再発防止対策策定までの具体的なスケジュールを明らかにすることはできない旨述べ、一定期間は工事再開を見込めない見通しを示すこともなかった。

 事故を起こしておきながら、その再発防止の具体策を示さない姿勢を裁判所は批判したのだ。

●マスコミが報道していないことで、気になるのは2点。
1.気泡シールド工法だけが問題なのか?
 記者会見でも質問したが、決定の主文には「気泡シールド工法によるシールドトンネル掘削工事を行わない」とあるが、これは深読みをすれば、気泡工法以外の工法、たとえば「ベントナイト工法」という、いわば粘土状の土をカッターと掘削面に入れて掘り進める工法ならば工事ができるとの余地をNEXCOに与えることにならないか?
 原告側弁護士からの回答は、気泡は安上がりの工法だからNEXCOは採用してきた。気泡はそのまま大気に逃れていくが、いろいろな添加剤の多いベントナイトを使うと、回収後は産廃として扱うために費用がかかる。NEXCOは気泡工法を続けるはずだと。
 とはいえ、国交省も事業者である限りはいくらでも税金を投入すればそれもクリアできるのではと、個人的には懸念を抱く。

2.Ⅿさんたちはどうなる。
 Ⅿさん宅が陥没現場に近く、特殊な地盤の3条件に適合するので、工事再開は危ないと判断されたが、Ⅿさんは安心できない。
 なぜなら、NEXCOは、家屋のヒビ、門扉のゆがみなどには「補修」で広範囲に対応しているが、地盤の緩みに関しては、直径16mのトンネル直上の長さ220mの範囲、つまり16x220mという長方形きっかりだけでしか起きていないと断言しているからだ。

ピンク色だけの長方形だけが地盤が緩んでいる?←トンネル直上のピンクの長方形の区域だけが、地盤が緩んだ、とNEXCOは説明している。あり得ない話だ。
 そしてトンネルまでの深さは47m。
 NEXCOはその16m x 220m x 47m という世界でやったことのない地盤補修工事をするという。そのために、長方形に住む約30軒に「仮移転」(地盤補修工事の2年間が終わったら戻ってもいい)を要請し、もしくは「引っ越し」の希望があれば補償金を支払い応じている。だが、その工法の説明は一切ない。
 NEXCOによると、Mさん宅はその長方形から31センチ離れているだけ。だから、地盤が大丈夫とNEXCOに判断され、約30軒の家族は、NEXCOから補償金(賠償ではない)をもらい引っ越せるのに、Ⅿさん、そして、家屋が痛んだのに、長方形から外れた人たちには、賠償も補償もなく、地盤補強もなく、ただ、長年の付き合いのあるご近所が、櫛の歯が抜けるようにいなくなるのを見ているしかない(すでに4,5軒が引っ越した)。

Ⅿさんの自宅(右)はトンネル直上から31センチⅯさんの自宅(右)はトンネル直上から31.2センチ外れているだけだという。だが地盤に問題はないのだとされている。

 地域の人々がいなくなり、不安定な地盤なのに、なにもされることなく、これから始まる地盤補強工事の騒音のなかで、2年、あるいはそれ以上の年月を耐える。
 Ⅿさんは、決定に一定の評価はするものの、記者会見で声をあげた。
「僕はどうすればいいんですか!」
 これは、長方形から外れる何百軒の声でもある。
 NEXCOはこの声に真剣に対峙していない。Mさんやほかの住民たちがこのまま放置されていいはずがない。
 今回の裁判でⅯさん宅の地盤も危ないと認めたことは、ある意味大きかったが、NEXCOの対応が待たれる。

 覚えてほしいのは、陥没から1年4カ月が過ぎた今でも、現地では長方形の中でも外でも、被害が広がっていることだ。新たに発生する壁面のヒビ、NEXCOが修理したはずなのに再び発生するヒビや傾き、沈下する路面。こういう土地で、引っ越そうにも引っ越せない住民がいる。問題は終わっていないどころが深刻化している。

22年2月でも陥没現場周辺は沈下している←2022年1月末にある家屋の前の路面が沈下した。最大で2.5センチ。

 22年2月でも陥没現場周辺はヒビが走っている←直上以外でも今もひび割れが広がっている。

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住宅の真下にトンネルはいらない
←陥没前に書かれていた陥没を予言するかのような本。

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2022/03/01 17:40 外環道 TB(0) コメント(0)
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