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 原発はいらない。

 こう主張する人はじつに数多くなりました。

 また、この夏は多くの原発が稼動しなくても乗り切れたように、原発は特に必要ないこともわかりました。

 しかし、これをあまり強調すると、二酸化炭素を大量に吐き出す大型火力発電や村人を立ち退かせる大型ダムによる発電を許容しかねません。私たちは、新たな発電を考えてもいいはずです。

 ちなみに、最近では、「コンバインドサイクル」というガス複合化発電があります。これは、内燃のガスエンジンと外燃の蒸気タービンの複合型発電で、狭い敷地でも、たとえば横浜市にも8基が設置されていて原発3基分の発電を可能にしています。しかも、建設に何十年もかかる原発と違い、2,3年で工事は終わり、工費も安く、二酸化炭素の排出量も少なくなっています。
 自然エネルギーが大々的に普及するまでは、当面は、こういった技術は推奨すべきでしょう。

 今回紹介するのは、大学の一教授が考案し、実験し、実証している、まったく新しい発電方式です。これが実現すれば、日本には石油がほとんどまったく不要になります。

 それがマグネシウム発電です。

 研究しているのは、東京工業大学の矢部孝教授。教授は「目指すのは、化石燃料が不要となるエネルギー循環社会です。2025年までには実現したいです」と明るく夢を語ります。

 石油もウランも天然ガスもあと数十年分の埋蔵量しかありません。私たちは否が応でも次のエネルギー源を確保しなければなりません。矢部教授はそれが「マグネシウム」と断言し、「海水中には石油30万年分にも相当する量のマグネシウムがあります。これは、従来の火力発電所でも使えるだけではなく、二酸化炭素も出さないエネルギー源です」と、マグネシウム革命に向けて日々奮闘しています。

 もっとも、マグネシウムは地上にもあります。ロケット噴射にも利用されるように、高エネルギーを出すことで知られています。しかし、それには莫大な費用が必要で、世界中のどの研究者も「海のマグネシウムは無尽蔵でも、エネルギー源には無理」と考えてきました。

 しかし、じつは、私たちは、じつに身近にこの海からのマグネシウムに日々接しています。お分かりでしょうか。「塩化マグネシウム」。豆腐に使われているニガリです。

 このニガリは、極めて原始的な方法で取ることができます。たとえば、海水をビニールハウスなどに入れて放置しておけば、海水が蒸発するにつれ、ニガリだけが分離するのです。
 もっとも、現代は、工場の火力でニガリを取り出しているのですが、矢部教授は、火力ではなく、格安の方法でマグネシウムの精錬方法を確立しました。

「まずは、海水の淡水化です。日本では逆浸透膜方式が主流ですが、これは莫大な電力が必要。私はエレクトラというベンチャー企業を立ち上げ、ほとんどエネルギー不要の淡水化を実践しています(すでに数カ国から国レベルで採用された。詳細は企業秘密)」
 
 淡水化をすると、塩とニガリ(塩化マグネシウム)が残ります。この塩化マグネシウムをマグネシウムに精錬するのですが、矢部教授は、ハイテクではなく、ローテクを結集して、安価な精製方法を確立しました。

「クロムとネオジムという金属を触媒にして太陽光線を当てると、レーザー光線が出ます。これを塩化マグネシウムの直径1㍉の一点に当てると2万度の超高温となり、0コンマ数秒でマグネシウムが精錬できます。これを発電に使うのですが、たとえば10㌧の海水からは13㌔のマグネシウムが取れ、標準世帯一か月分の電力をカバーできます」

自作レーザーで鉄板を切った ← 自作レーザーで鉄板を切った


 実際に、東京工業大学の屋上にそのレーザー発生装置があるのですが、太陽の追尾システムを備えながら、なんと、製作費はわずかに50万円。部品も廃品などを利用したとか。

制作費わずか50万円のレーザー装置 ← 制作費50万円ポッキリの太陽光レーザー装置


 さて、マグネシウムを燃やすと「酸化マグネシウム」ができるのですが、これにもう一度レーザーを当てると」マグネシウム」に戻ります。つまり、いったん循環システムができると、あとはマグネシウムを補充する程度で、大量の精錬も不要になるのです。

 あとは資金繰りだけなのですが、矢部教授は、近いうちに、沖縄県宮古島で、海水の淡水化、太陽光励起レーザー装置を5000台設置してのマグネシウム精錬という、総合的な実験に挑みます。
 
「できた淡水は地元の医療施設やホテルなどに供給します。また、当面は、淡水とマグネシウムを売って収益を得ることを目指します。マグネシウムは携帯電話やパソコンにもまだまだ需要がある。ここで必要な資金をため、2025年までに発電を目指したい」

 発電だけではありません。矢部教授はマグネシウム燃料電池自動車も目論んでいます。

「03年にアメリカのベンチャー会社が、亜鉛燃料電池で車を600キロ走らせギネスブックに載りました。でも、マグネシウムの電力量は亜鉛の3倍です(今主流のリチウムイオン電池と比べても7.5倍)。つまり同じ距離を走るなら軽い電池が作れる。今の試算なら、10Kgのマグネシウム電池で200Kmは走ります。将来、マグネシウムの大量廉価製造が可能になると、車の燃料電池はカセット方式でコンビニでも売りたい。古いカセットは専用の回収車で回収します。間違いなくそういう時代が来ます」

 宮古島の実験が成功したら、東南アジアの各所に同じような施設を作り、より大規模な実験を行いたいとのことです。

 矢部教授の試みは、一石三鳥です。

 というのは、海水からマグネシウムを精製する段階で、大量の淡水が生産できるので、廉価で供給することで世界の水不足にも対応できるし、マグネシウム発電は二酸化炭素も排出しないし、海さえあればエネルギーの自給も可能になる。

 じつは、自然エネルギーに熱心なNPOなどでも矢部教授の試みを夢物語と捕らえる人は少なくありません。
 また、国も、矢部教授から出された、5回の助成金申請をすべて『技術的実現が望めない』との理由で却下。

 しかし、矢部教授はあくまでも朗らかです。

「そんなことで、僕はへこたれませんよ。だって、このシステムができないはずがない。僕はエネルギー問題を解決したくて研究の道に入ったんです。今、使命感に燃えていますよ」

 私は矢部教授を応援していきたいです。

 ← あと数十年で石油も天然ガスもウランも枯渇する。つまり、「原発はそれでも必要だ」とか「いや全廃だ」とかの議論を超えて、新しいエネルギー源についてもっと真剣に話し合われてもいいはずなのに、そのような議論はマスコミからは聞こえてこない。本書は、海水に含まれるマグネシウムこそが新しいエネルギー源になると提唱している。その埋蔵量は石油の30万年分。著者である矢部孝教授はその実証実験を繰り返し、いよいよ大規模実験を展開できるところにまで来た。矢部教授は2025年には二酸化炭素排出ゼロのマグネシウム発電とマグネシウム電気自動車の実現をにらんでいる。なぜか日本政府が無視し続けるこの取り組みは一見の価値ありだ。



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2011/09/20 02:19 エネルギー TB(0) コメント(1)
コメント
マグネシウム発電に期待
マグネシウム発電に期待してます。
マグネシウム燃料電池で走る車に乗って、コンビニで電池交換してみたいです。
あと、原発何基分と言う表現では、何kw発電するのか判らないので数値を示すべきだと思います。
2013/04/18 16:35 rnkgw URL [ 編集 ]















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