リニア、10月27日に岐阜県中津川市の斜坑の工事で崩落と作業員の死傷事故が発生。実は崩落事故はこれで3回目。2年おきに発生している。

●リニア崩落事故は２年おきに起きている。
　10月27日。中津川市でのリニア工区の斜坑（瀬戸非常口）で発破作業後に「肌落ち」というトンネル上面が崩れる現象が発生し、トンネルが崩落。作業員1名が死亡し、1名が腰の骨を折るなどの重傷を負った。



　JR東海はマスコミ相手に記者会見を開催したが、現地を訪ねた知人のフリージャーナリストは入れてもらうことができず、ただ「疲れた」と漏らしていた。　彼に言われて「確かにそうだ」と思ったのは、リニア工事での崩落事故はこれまで3度起きているが、2年おきであること。

１．2017年12月15日。
　長野県大鹿村と松川町とを結ぶ県道の拡幅工事の一環として、JR東海は中川村でトンネル工事を行っていたが、この出口付近が崩落して土砂が県道をふさいだ。復旧に１カ月。この間、大鹿村にガソリン運搬車が入ることができず、住民生活と観光業（かきいれ時）に深刻な影響を及ぼした。
　大鹿村在住のジャーナリストの宗像充さんが記事を書いている。

２．2019年４月８日。
　岐阜県岐阜県中津川市のリニアの斜坑（山口非常口）で、入口から200ｍ地点の地上部で直径８ｍ、深さ５ｍの陥没が発生。幸いに作業のない日だったので死傷者はゼロ。
　事故の原因は、「手で触るとボロボロと崩れるほどに脆い『強風化花崗岩』という地層が地中にあったが、それに合わない工法を採用した」ため。
　2014年の「環境影響評価書」（岐阜県版第８章3-2-2）には、「土被りが小さく、地山の地質条件が良くない場合には、先行支保工などの補助工法を採用することで、地盤沈下への影響を回避又は低減できる」と書いてある。だが、この工区ではその「先行支保工」を「不要」と判断して工事を開始。また掘り始めたら、とても柔らかい地盤であることが判ったのに、それでも「補助工法」は「不要」と判断して掘り進めた。
　そして４月４日にまずトンネル内に土砂崩落が起きて、トンネル内から土砂崩落でできた『空洞』の充填を実施したが、ゆるみ範囲が広がっていたために８日に陥没した。
　ちなみに、この工区は、JR東海から委託をうけた「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が担当した。

３．そして今回の事故。
　瀬戸非常口は山口非常口からわずかに3.5Kmの場所。　
　山口非常口の場合、事故報告書が出るまでに半年間を要した。今回の瀬戸非常口でそれがいつ出るかは判らないが、こちらでは何の判断もできない以上、その結果を待ちたい。
　ただし、JR東海がこれまで出してきた資料を探ると、いくつかの情報を確認することはできる。

①　山口非常口は活断層の「阿寺断層」のすぐ近く。瀬戸非常口は野久保断層が横切っている。


②　瀬戸非常口は長さ６００ｍ。事故は入り口から70ｍで起きたが、工事前のボーリング調査は、非常口と本坑の接点の手前で実施されている。　事故現場から約500ｍ離れた場所なので、事故原因究明の材料になるかは不知。
←左側の○が瀬戸非常口（の入り口）。その近くにある「G-B-１０」がボーリング地点。瀬戸非常口はこの「G-B-１０」を経由して本坑とつながる。

③　瀬戸非常口は、濃飛流紋岩という地層を貫く。


　私は文系のジャーナリストなので、これら事実が危険か否かの判断ができない。ただ、ＳＮＳではある地質専門家が報道された崩落現場の画像などを見て、

④「ロックボルトが１断面あたりに４本しか見えない。 地山は硬いかも知れないが亀裂が多いので、天端付近はもう少し手当てすべきだったのでは」とのコメントを出している。

　加えて、工事が遅れていたことは事実だ。

⓹瀬戸非常口の掘削開始は1年以上遅れた。
　JR東海の2018年12月に出した「中央新幹線瀬戸トンネル新設工事における環境保全について」によると、瀬戸非常口のトンネル掘削は2019年度末（2020年3月頃)との計画だったが、実際の掘削開始は2021年6月。この時点で1年3カ月も遅れていた。
←2018年12月の「中央新幹線瀬戸トンネル新設工事における環境保全について」に添付されていた工事計画工程表。トンネル工事(斜坑＋本線トンネル)は2019年度末からとなっている。

　数か月後になると思われる調査報告書では、結論は大ざっぱには
●偶発的な事故であった。　
●安全管理、施工管理、労務管理に問題があった。　
　のどちらかになると思うが、

　偶発的な事故であったにしても、品川から名古屋までの286Kmのうちの２４６Kmがトンネルで、斜坑も合わせると300Km(要計算）前後になるかもしれないトンネル工事では、今後も、偶発的な事故は、ある程度の確率で起きると解釈していいのだろうか？　2017年の中川村での事故も偶発的という専門家もいる。
　これはそれで怖い。しばし注目したい。


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