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 2年。
 これが、福島県飯舘村が目指す、村の復活への期間です。

 飯舘村は4月11日に「計画的避難区域」に指定され、6月下旬までに6200人の人口のほとんどが村外に避難しました。だが、飯舘村が、原発事故により避難を余儀なくされた他の市町村と違うのは、ほとんどすべての住民を福島県内に、それも村から車で一時間以内の福島市や二本松市などだけに避難させたことです。

 これには理由があります。
 他の市町村のように、住民が全国にバラバラに散ったのでは「村がなくなる」と危惧した菅野典雄村長が

●まず、「年間20ミリシーベルトを越すから避難せよ」と国から言われた以上は、それを逆手にとって、「年間20ミリシーベルトを下回るような暮らし方をすればいいのだ」とひらめき、村の基幹産業の9事業者を残し(ただし高い放射線を浴びないよう屋内作業に限る)、村から1時間圏内に住民を避難させれば、「通勤」することで20ミリ以下を達成できる。

●さらに、他の住民にとっても、1時間圏内であれば、ときどきは家の様子を見に帰れる。

●ただし防犯上の問題も起こるので、村は「飯舘村見守り隊」という400人からなる24時間3交替制のパトロール隊を村の臨時職員として採用。

●9時業者の一つ、特別養護老人ホームには約100人の高齢者が残る。

●避難を拒否して村に住む高齢者も100人ほどいる。

●こうして、村には日中に1000人以上の人間がいることになる。だから、水光熱のライフラインは残り、ごみ収集も行われ、村の最低機能は維持できる。

 という、この手があったかという施策を実施したのです。

 すべてが、2年後には村が復活するために。

 菅野村長は「1年では短すぎる。3年では長すぎる」という理由から「2年」を設定しましたが、これに対し「根拠がない」との批判の声も上がっています。

 しかし、私はこの「2年」という期間そのものはとても妥当だと思います。
 なぜなら、阪神大震災のときも数多くの県外避難者が生まれましたが、この人たちが帰郷できるかどうかの目安もまた2年だったからです。一つには、2年を過ぎてしまうと、新しい土地で福祉を正式に受けようと思う高齢者は正式に住民票を写さざるを得ず、また、新しい仕事を見つけた住民もそこの住民にならざるを得ない。また、新しい学校になれた子どもたちにはそこが故郷になる。
 実際、2年を過ぎて帰郷を果たした県外避難者はごく少数でした。

 さらに、飯舘村の場合は、2年も経つと、農地が雑草だらけになり使い物にならなくなるという事情もあります。
 村長が2年を訴えるのは当然のことだと思います。

 しかし、今まで何度か会った、村の若者、佐藤健太さん(29)は「僕は帰らない。また帰りたくても帰れない」と訴えます。

訪問した保育園の画像を見る佐藤さん


「僕のような20代、そして30代の世代は、そして子どもたちは、放射線に強く影響される世代です。2年後に村の放射線レベルが落ち着いているとはとても考えられない」

 村の農地や土地の放射能を除染すればいいとの案もあります。だが佐藤さんはこれを「非現実的」と一蹴します。

「確かに、農地の表土を除去はできるでしょう。でも、村の75%は山地です。ここの除染は無理。雨や風のたびに放射能が

降りてくるんです」

 実際、農家の多くも帰郷を諦めています。一つの理由として、飯舘村の農家の多くがじつは兼業農家であり、今回の事故を機に「見切りをつけた」からです。

 実際、7月上旬時点で、村役場の前にある放射線表示板の値は毎時4.8マイクロシーベルト。これが2年後、果たして、毎時2マイクロシーベルト(年間換算で約18ミリ)になっているかは誰にも分かりません。また、村南部の長泥地区では、いまだに10マイクロシーベルトを記録するなどで、2年後、戻ってくるにしても、地区によっては戻れない人たちは確実にいるわけです。

 ところで、飯舘村住民が避難した福島市などは、報道でも伝えられている通り、やはり放射線レベルが高い場所です。
 佐藤さんは「汚染地から汚染地に移住しただけ」と言いますが、その佐藤さんが一番心配するのが、小さい子どもたちが内部被曝をしないかです。
 原発爆発から3ヶ月以上も経って、やっと完了した全村避難。つまり、3ヶ月間、住民は放射線を浴びていて、なおかつ、今も福島県で浴びているわけです。
 だが、国も東電も、これら住民に対して、内部被曝しているかの検査を実施しません。

 このままでは、10年後、20年後に誰かが今回の被曝が原因でガンになっても、誰も責任を取らないことになってしまいます。

 そこで飯舘村は「18歳以下」の住民に対して、いつ、どこに行って、何を食べて、雨にあたったかなどの記録をつける「健康生活手帳」を配布することにしています。こうすることで、将来、ガンを発症したときに「こういう環境にいた」と示す証拠固めができるわけです。

 そこで佐藤さんは疑問を覚えます。なぜ、18歳以下だけなのかと。
 佐藤さんは、村を離れる前から、市民団体「負げねど飯舘!!」を結成し、妊産婦や小さな子どもたちを県外避難させることを訴えたり、住民決起集会を実行するなど行動してきたのですが、村を離れた今も、住民の将来のために、18歳以上の住民のための「健康生活手帳」を作成しています。制作費用や配布にかかる費用はすべて自前。

健康生活手帳  ← 手帳の記載例


「僕自身は3月の時点から、自分の食生活やどこに行ったかをすべて記録しています。もしそういう記録がないと、将来、何かあっても、東電は確実に『事故との因果関係はない』というに決まっているからです。だから、これは全村民に必要な記録なんです』

 じつは、佐藤さんの本業は、お父さんが社長を勤める「佐藤工業」という護岸ブロックなどの製造業です。つまり、今回、地震や津波で被災した東北各地の港湾部でこそお役に立てる仕事でした。しかし、全村避難を余儀なくされた以上、佐藤工業は休業。つまり無収入になりました。

「でも、今までの貯金を切り崩したり、今後入ってくる義捐金や東電の補償金で、少なくとも今後1年間はこの活動に専念したいと思います。ここで諦めては、誰も責任と取らないことになる。僕たちは僕たちの権利を正面から今後も東電や国に対して訴えていきます」

 実際、佐藤さんは自腹を切って、飯舘村の子どもたちが通う保育園で新鮮な果物が足りないと聞けば調達し、8月に村の教育委員会が主催した、中学生の子どもたちのドイツへの保養旅行にも同行し、頼れる「お兄さん」であり続けようとしています。なかなか本音を言わない中学生ですが、一緒に旅をするうちに「私、将来丈夫な赤ちゃんを産めるのかな」「僕は内部被曝しているんだろ。どうなるんだろう」といった本音を語ってくれるようになると、ますます活動から離れられないと語ります。

 話の最後に佐藤さんがしみじみと語りました。

「僕は今、福島市内に住んでいますが、つくづく村の生活は贅沢だったと思います。毎晩、仲間と庭でバーベキューをして酔っ払い、時間があれば山や海に遊びにいった。都会じゃ無理でしょ。あんな贅沢な時間を子どもたちにも残してあげたい」

 村はなくなるかもしれない。だけど村の絆は残したい。「負げねど飯舘!!」の活動は今からです。



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2011/09/15 22:39 福島原発 TB(0) コメント(0)
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