リニア、田園調布と周辺地区の住民、ついに裁判に動く。調布市の陥没事故の二の舞は御免だ。

●田園調布の真下をリニアが通る。
　５月７日。私は生まれて初めて東京都大田区の田園調布の住宅街を歩いた。案内役は市民団体「リニアから住環境を守る田園調布住民の会」の三木和彦代表ら田園調布の住民数人。そして二人の弁護士も歩いた。



　２０２０年１０月１８日。東京都調布市の住宅街が陥没。その地下４７ｍを直径１６ｍという巨大掘削機であるシールドマシンが地下高速道路「東京外かく環状道路」（距離１６Km。以下、外環）を掘削していたことが原因だった。

　もっと正確に書けば、地下工事に必要な準備工事であるボーリング調査はほとんどなされていなかった。距離１６Kmの直上でなされたのはわずかに１７本。１Kmに１本の割合だ。国交省の「大深度地下工事技術指針」では「100～200m」おきが目安とされているから、いかに少ないかが判る。つまり、外環は地下の状況をよくわかりもせずに掘り進めたのだ。

●田園調布も陥没するのか

　２０１８年から大深度工事の危険性を訴えていた三木さんにすれば、「やはり起きたか」という事故だった。
　詳細は割愛するが、三木さんら住民は国交省に２０２０年９月に「大深度工事は、振動や騒音、地盤沈下や陥没を起こす」との文書を送っていた。まさにその翌月に調布市で陥没事故が起きたのだ。
　そして三木さんが住む田園調布でも、JR東海によるリニア中央新幹線の地下トンネル建設のために、直径１４ｍというシールドマシンが掘削をする予定だ。
　それを食い止めたい。だが国交省はまったく住民の声に耳を傾けない。
　三木さんらはリニア工事の差し止め裁判を起こすべく、担当弁護士とともに現地視察を行ったのだ。

←2本の赤い線が地下を通るリニアの幅（おおよそです）。

●おい、JR東海の記録にはない井戸があるぞ。
　視察内容も詳細も割愛するが、一つだけ書き留めたいのは、「大深度地下」（概ね地下40ｍ以深）を使用する場合には、国交省からの使用認可を得なければならないが、そのためには調査資料を国交省に送付しなければならない。

　その一つが、大深度において住民が生活に必要な施設（井戸や温泉の源泉。送水管など）があるかどうかの資料だ。
　
もしこれら私有物件がある場合、大深度の使用認可を受けてから1年以内に申請すれば、事業者は所有者に「補償」をしなければならない。　
　
　ところが、JR東海が国交省に提出した資料によると、品川から名古屋までの間（大深度区間は約50Km）で井戸の本数は5本だけ。東京都町田市に３つ、愛知県春日井市に２つだ。

　だが今回田園調布を歩き、ルート直上か至近距離に住む人たちの家々を訪ねて分かったのは、庭木への水やりや小さな池などにモーターで地下水を汲み上げているお宅が３，４軒あったことだ。

　　

●ＪＲ東海はちゃんと調査をしたのか？

　国交省に出した資料には、

「所有者に対して事業区域内の物件の有無について、平成27年11月～平成30年1月に訪問、郵送、電話等により調査を実施した。訪問若しくは郵送を複数回実施しても応答がなかった場合や調査実施が困難な場合は、登記簿の閲覧、周辺住民への照合、近隣地からの観察等により調査を実施した」

　と記載されているが、本当に調査をしたのだろうか。

　今回の視察で判ったのは、田園調布では、どこを掘っても井戸水は出るということ。つまり、地下水が地下の地盤を支えている。そこに巨大トンネルを開けることに危険性はないのか。
　その地盤の安全性を確認するためにボーリング調査があるのだが、じつは、そのボーリング調査にしても、JR東海は、田園調布と隣の世田谷区においては（約３．９Km）、ルート直上ではわずか3本しかしていない。これも、外環同様に１Kmに１本でしかない。
　大丈夫か。
　本当に準備工事が不十分なままで、大深度掘削を今年始めるのだろうか？
　
　最後に出す写真の説明。田園調布の隣の世田谷区東玉川で、あるお宅が、すぐ近くの地下をリニアが通ることを知ると、「不動産価格が下がる」と察して、風評が出る前にと、つまり、不動産価値が落ちないうちにと、土地を売却して引っ越していった。



　提訴の期日などが判れば、また投稿します。




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