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樫田秀樹

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●筋書きができていたのか
 3月3日。地裁に続き、高裁でもまたしても突然の結審だった。もう敗訴の筋書きができているのだろうか。
「審理は尽くした」だって?

 在日スリランカ大使館が「間違いなく本人である」と証明するスリランカ人男性のダヌカさん(38歳)は、長年、入管から「ダヌカではない。チャミンダである」として長期収容を強いられてきた。

210303 裁判後のダヌカ

スリランカ大使館の証明書←スリランカ大使館発行の「ダヌカ=ダヌカ」の証明書。これに日本政府は異論を唱えることはできないはずなのだが…。

 入管が「ダヌカ名義の偽パスポートでチャミンダが入国した」と判断したことで、ダヌカさんは2010年から横浜刑務所で2年服役し、その後も、入管施設への収容、仮放免、再収容を繰り返してきた。特に2017年6月からの再収容は収容が2年半にも及び、その長期収容は「一生出られないのか」との不安からうつ病と拒食症を発症させ、水すら吐き、70Kgあった体重が46Kgに落ち、日本人婚約者Aさんも支援者も「このままでは死ぬ」と本気で心配した。
 
 ダヌカさんはまさに死の寸前になって、2019年末にようやく仮放免されたのだ。

●「ダヌカはダヌカである」

 そして、ダヌカさんは収容中から、入管の退去強制令書(送還命令)の発布の撤回を求める裁判を起こした。つまり、ダヌカはダヌカだとの認定を求めたのだ。
 
 仮放免直後の2020年2月25日、ダヌカさんは第5回口頭弁論で初めて「私はダヌカだ」との意見陳述を行った。だが直後、鎌野真敬裁判長が突然「審理は尽くした」と結審を宣言。ダヌカさん代理人の指宿昭一弁護士は「本人である証拠を収集中。結審は許されない」として「裁判官忌避」を申立てた。これで結審は延びた…はずだった。
 だが、7月3日、法廷は、結審はされていないとして、指宿弁護士は出席を拒否。ダヌカさんも傍聴席に座った。無人の原告席に向かい、鎌野裁判長はダヌカさんの撤回請求を「却下する」と告げ10秒後に退廷した。

 筆者は判決文を読んだが「ずるい」と捉えたのは、裁判所が、スリランカ大使館がダヌカさんを本人と認めている点に触れていないことだ。

●控訴審でも本人尋問はない…
 
 当然、ダヌカさんはこれを控訴したが、その控訴審が先日の2021年3月3日に開催された。

 まずダヌカさんが意見陳述に立つ。それは、収容中に職員たちからチャミンダと呼ばれたら返事をしろと強要される屈辱の日々であり、うつ病や拒食症に苦しんだ日々をつづったものだった。

 だがこの直後、ここでも裁判長は突然「原告から(被告がもっている本人証明となる)文書提出命令の申立や本人尋問の申し出がありましたが、合議の結果、必要性なしと判断し、却下することにしました。判決は4月21日の午後1時30分で指定します」と終結宣言。え?!

 指宿弁護士が立ち上がり、「ダメです。一審でも尋問は行われていないんです!」
「必要性なしとの判断です」
「おかしくないですか。民事裁判で原告の話を聞かないで判断するのは!」
 と抗議している間に、裁判長は会釈の挨拶もなしに扉の向こうへと消えた。

●このままでは強制送還すらできない…
 だまし討ちのような展開に、ダヌカさんはその後も「頭が真っ白です」と多くを語らなかった。
 確かに、裁判長の言いぶりでは、あらかじめこの日の結審は既定路線だった。あとは敗訴の判決を出すのだろう…。指宿弁護士は「即時抗告する」と同時に、今回、裁判所が原告の文書提出命令を却下したことで、これについては異議を出して認められたら裁判再開もあり得るのでトライするとのこと。

「民事訴訟で当事者の意見も聞かないで判決が出るのはあってはならないことです」(指宿弁護士)

 もし同様の事例が欧米であれば、それでも司法は同じ判断をするだろうか。いや、しないと思う。また、市民も関心を寄せないだろうか。いや、寄せるはずだ。
 では英語で情報発信をしようかと支援者が裁判後に話し合ったが、それもアリだと思う。ある意味での外圧はこの国には必要だ。

210303 裁判後のダヌカ+支援者

 一つだけ言えるのは、このままでは、ダヌカさんは、強制送還すらされず、一生を就労禁止の「仮放免」か「収容」のどちらかで過ごすしかないということだ。人の血が通った行政ならここまでのことはしない。だが、入管はそれをしてしまう…。
ダヌカさんと婚約者は今、機会さえあれば、絶対に第三国で暮らそうと決めている。

←織田朝日さんの新著「ある日の入管」。マンガなので読みやすい。

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