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樫田秀樹

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●リニア、国土交通省の「有識者会議」の公開性について

●リニア中央新幹線の工事で、1都6県(東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知)のなかで唯一本格工事が始まっていないのは静岡県だけ。
 JR東海自らが「(無策なら)大井川が1秒間に2トン減る」と予測したことが発端だった。1秒に2トン。これは、大井川を水源とする県下の中下流域の8市2町の水利権量に匹敵するから、生活用水、農工業用水の枯渇を意味するだけに、その解決策を探るために2014年から始まったのが、県主導の「中央新幹線環境保全連絡会議」だった。
 だが5年話し合っても、JR東海は保全の具体策を示さず、データもあいまいで、その上、JR東海は、昨年10月には「トンネル掘削で湧出する地下水を大井川に戻すので、むしろ水は増える」という理論を展開するに至る。
 このタイミングで介入してきたのが国交省だ。
 県とJR東海との膠着状態の打開のため、まずは大井川源流問題を「有識者」が科学的・工学的に話し合う「有識者会議」を設置して、国交省は県とJR東海との「交通整理」役を果たすと県に申し入れた。
 連絡会議でJR東海と毅然と対峙してきた難波喬司副知事は「国が指導してくれるのであれば方向性は変わる」と捉えたが、国交省にその開催に当たっての5条件を提示した。
 委員や座長は中立的な人であること、目的は国交省がJR東海を指導すること、そして「会議の全面公開」などだ。
 有識者会議は4月27日と5月15日の2回行われ、そこで7人の有識者からの発言についてはすでに報道されているので、ここでは省略する。ただ、どの委員もそれなりにまっとうな意見や疑問をJR東海に投げているので、今のところ中立性は保たれていると思う。

●ジャーナリストから見た公平性

 さて、この有識者会議の「公開性」については、川勝平太県知事が「合意違反だ」として改めての全面公開を求めているが、私にも言いたいことはある。
全面公開しないのは「合意違反だ」とする県知事の見解を載せた記事

 というのは、この会議は、私のようなフリージャーナリストであってもオンライン閲覧できるのはありがたいのだが、私よりも、静岡県民やリニア問題に関わる市民団体はオンライン閲覧ができない。
 第1回会議において、国交省鉄道局はその理由を「回線の容量が限られている」と説明した。もちろん、リアルタイム配信では回線パンクの可能性もあるので、それを呑むとしても、後日youtubeなどで配信すればいいだけの話だ。だが、それもやらないという。
 有識者会議の閉会後は、オンラインで私たちジャーナリストは質問ができるのだが、第2回会議のあと、質問は「公開性」に集中した。
 だがこの第2回会議において、国交省の説明は今度は「委員に忌憚なき自由な意見を発言してもらうためにオンライン配信はしない」と理由を変えた
 さらに「メディアには公開しているし、議事録も後日公開するので、全面公開の要件は満たしている」と説明した。つまり、国交省は以下の内容も入れての「全面公開」だとしている。

●ライブ配信はしない。(これは否定はしきれない)
●後日の配信もしない。
●議事録に委員の名前は書かない。


 7人の委員の座長である福岡捷二中央大学研究開発機構教授は「委員も言い間違えることがある。それを生配信されてはよろしくない」と説明した。
 私は質問した。
「そうはいっても、テレビや新聞は早ければその日のうち、遅くとも翌日には委員の発言を報道する。福岡座長の説明は現実的ではない。伺いたいのは、7人のうち、いったい何人が、配信や議事録での記名を拒んだのか?」
 国交省はこの質問には「委員が特定されるので、差し控える」と回答しただけだった。
 これはおかしい。
 7人の議論を聞いていると、時々忘れる人もいるが、多くの場合は、発言の前に自分の名前を名乗っている。だからメディアが「xx委員がこういう発言をした」と報道することには何の問題もない。
 それがなぜ議事録では無記名となるのか?
 同じフリージャーナリストの井澤宏明氏は「委員の先生たちは責任をもってこの会議に出席しているはず。配信や無記名は納得できない」とかみつき、私も「川勝知事もこの件では納得していないが、知事と話し合う予定はあるのか」と質問すると、国交省鉄道局の江口秀二技術審議官は「これは国交省の会議です。このままでいきます」と明言した。

●固定映像
 さらに、オンライン閲覧といっても、その映像はひどいものだ。
 まず、カメラは2カ所に向けて固定されているだけで、その画面も手のひらよりも小さく、映像も荒いので、いったい誰を映しているのかさっぱりわからない。通常は、発言者に向けてカメラも向きを変えるが、本当に固定されたまま。
 下の写真は、1枚目が私のPCの外付けモニタ(23インチ)に映し出される閲覧画面。一番左が国交省の会議室。
 2枚目が、それをアップしたもの。

有識者会議の画面。肝心の国交省本庁の会議室の映像が小さく粗い。サイズ変更もできない。  有識者会議。モニタ上の小さな映像をアップで撮影。カメラはほぼ固定されたまま

 第3回目はいったいどうなるのか?

●蛇足
 JR東海は国交省鉄道局の下で行われる会議であれば、その指導に従うのだろうか?
 一つだけ印象的だったのは、第2回会議後に難波副知事が「県が何年も出してほしいと訴えても出されなかった資料(各施設の「標高」を入れた下記のイラスト地図)が、今日、有識者会議に提出された。私はこれを初めて見た」と語っていたが、これは、国交省が「指導」したから? それならそれで、きちんと評価をしたい。

静岡県が長年要求しても出なかった資料が有識者会議ではすぐに出た。

 もし、県と鉄道局との意思疎通がとれているのであれば、必要な資料はこれからも出てくるのか? しかし、資料が出れば出るほど、それが科学的・工学的に判断すれば、「トンネルを掘るのは無理」ということになれば、リニア計画を事業認可した国交省にすれば逆の結果を受け入れることになる。
 
 過去2回の会議は、JR東海の出した資料に対して、7人の委員が印象を述べている程度の内容であり、本格的な具体的な議論は第3回会議から始まるという。

委員の発言の概要 新聞記事

 7人の委員の中立性が問われるのはこれからになる。 とりあえず、7人の委員のなかでは、JR東海の訴える「トンネル湧水を戻すから大井川の水量は増える」については「そんなうまい話があるはずがない」、「増えるなら増えるで問題でしょう」との見解は共通している。
 注視したい。

リニア新幹線が不可能な7つの理由


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