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樫田秀樹

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●静岡県が「専門会議」委員の候補者とした稲葉紀久雄氏を、国が除外する

 稲葉さんは私の知人だけに、これはちょっと驚いたニュースだった。

200416県推薦の専門会議の候補者、国が除外

●静岡県の経緯【わかる人は飛ばして結構です】
 JR東海が2027年に東京・名古屋間で開通を予定しているリニア中央新幹線。
 ところが、そのトンネル工事により、静岡県では、大井川の水源である地下水脈が断ち切られ、無策の場合は1秒に2トンも大井川の流量が減ると予測されている。
 そこで、2014年から、静岡県、有識者、JR東海の三者が話し合う「静岡県中央新幹線環境保全連絡会議」が開催されているが、県の主張は「工事で失われる水はすべて大井川水系に戻せ」という当然のものだが、JR東海は未だにその具体策を示さずにいる。いや、示しても有識者からはそれでは不十分だとのダメ出しをされている。
 そこで、国(国土交通省)が割り込む。この膠着状態を打開するために、国が行司役となり、JR東海と県との妥協点を探ると。
 これには、各方面から異論が出た。そもそもリニア計画の事業認可を出した国交省が、つまりリニア事業を推進したい当局が、中立的な行司ができるのかと。
 そして異論のもう一つは、従来の連絡会議は現在も活発な会議を続けているのに、なぜもう一つの会議が必要なのかということだ。
 ともあれ、県は国の提案を呑んだ。ただし、条件としては国が立ち上げる「専門家会議」の委員は「双方が合意して決める」ということだ。
 だが、国側が当初示した委員の候補者に、トンネル工事を請け負った大成建設の社外監査役がいた。この時点で国の意図が透けて見える。
 県はこれに抗議し、さらに公募で委員を募集した。
 その結果数人の応募があり、県が最終的に選んだのは二人。その一人が稲葉さんだった。

●稲葉さんがしてきたこと。
 稲葉さんは、水問題にもっとも高い関心を抱き、かつ行動してきた有識者と断定していい。
 その詳細は、私のブログと、フェイスブックを参照にしてほしいが、大雑把に書けば

超党派議員でつくる「水制度改革議員連盟」(水議連)は2014年3月に、地下水は私水ではなく「共有水」と定めた「水循環基本法」を国会で成立させた。ただし、これは理念法なので、具体的に水を守るための法案としての「地下水保全法」の立案に取り組むことになる。
 この法案作成を担ったのが、水議連が設立した「水循環基本法フォローアップ委員会」。これは有識者41人であるが、全員が無償で参加した。それだけこの法案つくりに燃えていたからだ。
 特に幹事となった稲葉さんはこれに打ち込み、わずか2か月間で法案を作成した。それを水議連に上申したのが2015年2月17日。
 その内容にケチをつける人はいなかった。
 あとは国会にこれを上程すれば、間違いなく成立する法案だった。
 ところが、その直前、衆議院法制局から「その法案では、トンネル工事などの公共事業に支障が生じる」との横やりが入り、上程は見送られる。
 その後、水議連も、そして2016年3月からの新フォローアップ委員会でも上程の動きはない。
 稲葉さんは、新フォローアップ委員会にも相談役として所属していたが、見切りをつけて辞任した。
 ちなみに、このとき、新フォローアップ委員会の座長を務めたのが、上記、専門家会議の委員となった沖大幹氏(東大教授)だ。

★稲葉さんはその後「流域水循環文化研究委員会」を立ち上げ、そこでの研究の結果、出した答えが、「国民自らが声を上げなければ前進はない」ことから新組織「水循環基本法を“動かす”国民運動協議会」を設立する。

そこが開催したのが、2019年5月23日、上記フェイスブックの記事である、「水循環基本法を“動かす”シンポジウム」である。
190523水シンポ看板←シンポジウムの看板  190523水シンポの稲葉さん←シンポジウムで、水議連の事務局が作成した「流域マネジメントの手引き」を手に、「支離滅裂な内容だ」と批判する稲葉さん 
 190523水シンポ朗読劇← シンポジウムでは、稲葉さんも参加しての朗読劇が開催された。「水を守りたい」との意思が伝わってきた。

 全国各地で水を守っている市民団体が集まり、丸一日をかけての集会が行われたのだ。水議連などの国会議員も参加。
 目的は、早速形骸化しかけている水循環基本法を動かし、具体的な水保全を図ろうということ。
 
●ここまで水の保全に熱心な人をなぜ国は除外しようとするのか。
 国交省はその理由を「(県推薦の)2名の方についての専門分野を拝見するに、国土交通省がすでに選定している方々と専門性や知見を有していると思われる分野が重なっていると考えられます」と回答しているが、それは具体的に何をさしているのか。
 今後、静岡県はこれを国交省に詰める。
 国と県とはもうしばらくやりとりが続くが、いずれにせよ、稲葉さんの除外は私にはまったく理解できるものではない。

リニア新幹線が不可能な7つの理由


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