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樫田秀樹

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●アルタ前で叫ぶ
 11月2日18時。
 東京の新宿駅のアルタ前広場に、3人の仮放免者が立ち、思いの竹をアピールした。

DSC09987_size.jpg←マイクを持つのはFREEUSHIKUの高橋若木さん。そして、写真左からデニズさん、ベヘザドさん、エリザベスさん。

 うち2人は、10月25日に仮放免され、もしかしたら、いや高い確率でわずか2週間後の11月7日は再(々)収容されるであろう、イラン人のベヘザドさんとクルド人のデニズさん。
 集会を主催したのは市民団体「FREEUSHIKU」だが、このアピール行動を「やりたい」と訴えたのはベヘザドさんだった。2週間しか自由の時間がない中で、一般市民に長期収容の問題を訴えたいと。その想いにFREEUSHIKUが応えたのだ。

●長期収容は人を壊す
 最初に訴えたのは、「仮放免者の会」リーダーのエリザベスさん(ナイジェリア人)。出身地、ナイジェリアのビアフラ地方は1960年代にナイジェリアからの独立運動を巡り、政府軍が徹底弾圧に乗り出し、これまで100数十万人が命を落としている。また、ナイジェリアは地域によっては女性器切除の習慣が残っていて、エリザベスさんはそういった治安状況と社会状況の二つの理由から国を出た。
DSC09854_size.jpg

 日本に来てからもう28年になる。
 エリザベスさんが訴えたのは、仮放免者は『働けない』こと、「移動の自由がない』こと。そして入管施設の被収容者は、骨折をしても医療を受けられずに放置されている、外国人に冷たい現状だ。
 何度も「助けて!」と訴えるように叫んでいた。

●2人目に登場したデニズさん
 デニズさんは、3年2カ月も収容され、愛する日本人妻もいるのに、アピールのなかでは「長期収容されていると、だんだん愛する気持ちよりも絶望のほうが大きくなり、私は今まで5回の自殺未遂をした」と訴えた。
 デニズさんは牛久入管(茨城県牛久市)で5月から始まった集団ハンストに6月から参加し、8月に仮放免されたが、たった2週間で再収容されてしまった。
 その再収容初日から再びハンストを開始して、1カ月たって体重が10キロ以上も減ったところで、再び仮放免を約束された。
 そして10月25日に仮放免されたが、またしても、その期間は2週間のみ。

DSC09892_size.jpg

 デニズさんは11月7日に東京入管(東京都港区)に出頭する。そこで仮放免の更新が不許可であれば、即日で再々収容されてしまう。 本人はまたハンストすると言っているが、こんな我慢比べはいつまでもやっていい話ではない。

 これは絶望を植えるためだけの行政処分だ…。

荒木さんの質問.mp4アピールのダイジェスト版の動画。やや日本語の補足が必要な説明もあるので、freeushikuのメンバーが仮放免の3人とQ&Aしたことで、全体状況が把握できるようになっている。最後のベヘザドさんの訴えは心にしみた。

●「どこでも命は同じです」
 最後にアピールに立ったベヘザドさんは、じつに3年10カ月も収容されていた。デニズさんと同じ日に仮放免されたが、やはり許可された期間は2週間だけ。
 だが、この2週間をただ座して待つだけではなく、ベヘザドさんは入管の長期収容問題について訴えたいと思った。その相談を受けたFREEUSHIKUが大急ぎで準備をしての今回の行動につながった。

 この日のアピールで、多くの人の心にしみたのはベヘザドさんのメッセージだった。
 彼はただ単に、自分が苦しいと訴えたのではなく、世界のどこでも失われる命の重さは同じだと訴えたのだ。
「私の出身の中東では爆撃や鉄砲で亡くなる人が多い。そして、今の時代、この日本でも、入管の収容所では自殺で命をなくすひともいる。これらの命に違いなどありません。私たちの命と自由を守ってください」
 
DSC09901_size.jpg


 もし今の長期、いや無期収容が続くのであれば、今年、そして来年にかけて必ず誰かが自殺をする。自殺未遂をする。

 そういう状況下に外国人が置かれていても、一部メディアの編集者などは「でも彼らは不法滞在だろ。自業自得だよ」としたり顔で理解しようとしない。
 私のやるべきことは、これら理解をしない人たちに理解をさせることだ。

DSC09766_size.jpg DSC09757_size.jpg DSC09747_size.jpg DSC09815_size.jpg DSC09797_size.jpg

●トルコ料理店へ
 アピール活動のあと、新宿駅近くのトルコ料理店に、ベヘザドさん、デニズさん、そしてFREEUSHIKUのメンバーらとともに食事に行った。だが、長期間でのハンストの影響、そして仮放免されても不安ばかりの毎日に、ベヘザドさんとデニズさんの食は思った以上に進まなかった。
 それでも、途中でベリーダンスのダンサーが登場した時には、その歌に合わせてデニズさんが口ずさみ、ダンサーに合わせて踊っていた小さな子どもに微笑みかけていたのが、なんともほほえましかった。これは普通の日常生活の一こまだ。
 だが、もしかしたら、数日後にはまたあの絶望の場所に戻る…。

●誰もあきらめない

 そういうわけで、ベヘザドさんも仮放免中の今も体重がそれほど増えていない。こういう体調で再収容されてもハンストを続けるのだろうか? この問いにベヘザドさんは「体調次第です」と答えるだけだった。
 だが、今回再認識したのは、FREEUSHIKU という10代の学生さんも含め、20代、30代、40代と若い世代の市民が時間があれば牛久入管で面会活動を続けていることで、被収容者の気力を保ってきたことだ。
 たとえ、デニズさんとベヘザドさんが今回再収容されてしまkとしても、FREEUSHIKUは、普通の仮放免に向けて、決してあきらめない。

 私は神奈川県の自宅に帰るため、店を皆よりも少し早く出たが、出口でベヘザドさんが見送ってくれた。
 3年10カ月ぶりに戻ってきた自由が、もしかしたら、わずか2週間で消えるかもしれない。
 
 だが、たとえ、彼が再収容されても、私たちにできることは、断続的に面会をして、メディアに属する私も断続的に報道をして、諦めることなくつきあうしかない。
 諦めない。小さいな力だが、世論に訴え、「下手な動きをすれば世論が動く」とまで入管に意識させるくらいにこの問題の発信を続けて、長期収容に歯止めをかけたい。
 犯罪者でもない人間を無期限に閉じ込める政策はあっていいはずがない。

となりの難民
←長年、被収容者への面会活動や仮放免者との電話相談などをしてきた織田朝日さんの新著。

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