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●Wさん、ついに倒れる

 茨城県牛久ににある「東日本入国管理センター」で、2週間以上も水も飲まないハンストで手続きの改善を訴えていたブラジル人男性のWさんがついに気を失い倒れた。
 予想はしていたが、とりあえず、すぐに医務室に運ばれ点滴を受けたようで、最悪の事態だけは避けられた。
 同センターでは、不法滞在をしたり、難民申請をしたけど認定されないなど、日本での「在留資格」がなくなった外国人男性300人以上が収容されている。
 ここで12月20日から20人以上の被収容者がいっせいにハンストに入った。

仮放免申請書 身元保証書 誓約書 ← 仮放免申請をするときの書類。「仮放免申請書」「身元保証書」「誓約書」。 記載内容はいたってシンプルなもの。いったいどういった項目を調べて3カ月もの時間を費やしているのか、そのうち取材したい。

 在留資格を失った外国人であれ、逃亡の恐れがなく、保証人などがいれば、「仮放免」で日本に住むことができる。だが、この仮放免は申請したら最短で70日、最長で120日かかるが、一度の申請で認められることはほどんどない。私がアクリル板越しに取材した延べ約20人の被収容者は、最も多い人で15回前後も仮放免申請を出している。しかし、3カ月前後も待って「不許可」の通知をもらっても、その理由は一切告げられない。書類に一言「理由なし」と書かれているだけだ。

 自分たちはいつここから出られるのか。
 この仮放免制度の運用があまりにも不透明なことに憤りを覚えた被収容者のうち20人以上が話し合いの末に、いっせいハンストに入った。

 11月26日。私はWさんに会ったが、他の人と違って、彼は「水なしハンスト」を貫いていた。その時点で既に1週間。私は大丈夫なのかとの不安を覚えた。

●Wさんの突然の移送
 管理センターは、建物の中がいくつかのブロックに分かれているが、11月28日、Wさんは1Aブロックから7Bブロックに移送された。7Bブロックとは一人部屋だけの区画だ。つまり、それまで一緒にハンストをしていた1Aブロックの仲間とはもう会うことができず、新しいブロックでも部屋では話す相手もいない。28日にWさんと面会した市民団体のメンバーはこれを「ハンスト崩しだ」と見るが、その意図があるかどうかはともかく、確かに、ハンストを実施する人はこの日を境に激減する。
 そして、私は12月5日にWさんを再訪。
 アクリル板の向こうのWさんは11月26日に会った時よりも痩せていた。驚くことに、まだ水なしハンストをやっていた。
「もう体が慣れたのか、水がなくても苦しいとは思いません」
 すでに水なしハンストを始めて2週間が経った。危ない。やめるべきだと思ったが、Wさんは「いつまでやるか、いつやめるかはまったく考えていない。ただ、朝起きたら、今日もやると思うだけ。その繰り返しです」との決意を固めていた。
 だが、それは決意かもしれないし、意地なのかもしれない。
 私がやめるべきだと思ったのは、 同センターは、Wさんたちの11月20日の申入書に対して、その翌日には「回答しない。仮放免の運用も変えない」と回答しているからだ。つまり、ハンストをしても効果はない。
 たった一つ効果があるとすれば、それは誰かがハンストで亡くなり、マスコミがやっとこの問題を報じた時だ。
 原発も事故が起きたからやっと大々的に報道したように、事故が起きる、誰かが死んだり重傷を負うなどが起こらない限り、日本のマスコミは決して動かない。
 翌日の12月6日にWさんは倒れた。それを知ったイラン人の被収容者が市民団体メンバーに電話で伝え、メンバーから私に連絡が入った。

●頑張るのは外部にいる私たちではないのか。

 同センターにおける最大の問題は「いつ、ここから出られるのかまったく判らない」ことだ。
 刑務所なら罪の重さに応じて「あと何年」とわかる。
 だが、難民申請しただけの人たち、あるいは仮放免申請を出している人たちには「いつ』が判らない。

 今回のWさんが倒れた一件で私はつくづく思った。頑張るのはハンストなどで臨もうとする被収容者ではない。普段、人権、人権と声高に叫んでいる人たちなど、外部の人間こそが何かをすべきなのだと。
 もっとも、私に何ができるかを考えると、やはり、書いて伝えることしかできない。
 意外だが、この足元にいる難民(申請者)に対しての取材を継続的に行っているジャーナリストは、新参者の私を入れても片手で数えるほどしかいない。
 私がつかんだ情報は、謙遜抜きで、外に伝えなくてはならない。これからも随時、この問題はいろいろな手段で伝えたい。それを思わせてくれたWさんの突然のハンスト終了であった。

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2018/12/08 20:29 人権 TB(0) コメント(0)
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