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樫田秀樹

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●前科11犯。すべて放火。人生の52年を刑務所で過ごした男性

 11月3日。「生き直したい 服役11回 更生の支え」と題した人権セミナーに参加。
主催は、刑務所や拘置所などの被拘禁者の人権問題の改善とその啓発に努めるNPO法人「監獄人権センター」。
 確かに私も覚えていた。2006年1月に起きたJR下関駅の放火事件は大きく報道された。

下関駅←燃える下関駅の写真

 当時74歳の犯人、福田久右衛門さんにとって、それは人生11回目の放火。そして人生の延べ52年を刑務所で過ごすことになる。
 最初の放火は22歳のとき。
 5人きょうだいの長男。父はなぜか福田さんに厳しく、それに反発した福田さんは父を困らせようと放火に及んだのだ。そして最初の逮捕の数年後、福田さん曰く「自分のせいで」父は首つり自殺した。家族は離散し、福田さんは家族と絶縁する。
 軽度の知的障がいのある福田さんは刑務所から出所しても生活能力がないため、身元引受人もいないため、生きる場所として刑務所を選ぶしかなく、またも放火を繰り返した。

福田久右衛門さん←映像「生き直したい」の表題は福田さん自身が書いた。

●誰も助けてくれなかった。

 そして、10回目の放火で逮捕され、収監され、出所したときは74歳になっていたが、特筆すべきは、11回目の放火に至るまでに誰も助けてくれなかったとの以下の経緯だ。

1 道に迷い警察官に保護され、警察署でカップ麺をもらう。
2 小倉に向かうが具合が悪くなり、病院へ救急搬送。入院なし。
3 その後、福津市福祉事務所が隣接の水巻市までの電車の切符を手渡す。
4 北九州市の戸畑区役所に(生活保護を?)相談するが、対応なし。
5 刑務所に戻ろうと、スーパーで万引き。戸畑警察署に連行されるが逮捕されなかった。警察官がJR南小倉駅まで送る。野宿。
6 再び万引き。しかも店員に「盗みました」と自己申告し小倉北警察署に行っても逮捕されなかった。
7 小倉北警察署は福田さんを小倉北福祉事務所に連れていくが、事務所は下関駅までの交通費を渡すだけ。
8 その下関駅では、下関鉄道警察から構内からの退去を求められる。

 この8日間で、福田さんは8つの公的機関と接触したのに、誰も福田さんを救おうとしなかった。そのうち2回は微罪を犯しているのに逮捕もされなかった。そして最後の最後に駅構内の野宿すら拒まれたことで、福田さんはむしゃくしゃした気持ちを抑えることができずに放火に及んだのだ。

福田さんが見放された経緯

 そして、懲役8年。

●「絶対にこの人を生き直させる!」

 これら背景から、「福田さんが出所したら、何が何でも生き直してもらう」と誓ったのが、牧師であり、NPO法人「抱樸」(当時は「北九州ホームレス支援機構」)の理事長でもあった奥田知志さんだった。同時に、福田さんが出所したら「必ず映像にする」と決めたのが長塚洋ディレクターだった。
 長塚さんはかつてテレビ局で犯罪報道もしていたが、いつも覚えていた疑問は「罪を犯した人が刑務所に入ると、世間からはもう『顔の見えない人』になってしまうこと」だった。福田さんがどうやって奥田さんと交流するのか。人の更生には何が必要なのか。それを描くため、長塚さんは待った。
 そして2016年、映像「生き直したい」は、奥田知志・伴子さん夫妻に迎えられる福田さんの出所のシーンから始まる。その後、福田さんはしばらくは奥田家に住みながら、NPOスタッフたちの温かさに触れ、抱樸が運営するデイサービスにも通うことで明るさを取り戻していく。福田さんは84歳にして(現在87歳)、22歳以降の人生で初めて人と人としての当たり前の生活を送ることができたのだ。

左から長塚さん、福田さん、奥田さん←左から長塚さん、福田さん、奥田さん

 じつは福田さんは、奥田家での滞在中に、朋子さんのバッグを勝手に開けてしまったことがあり、叱られ、失踪したことがある。だが奥田夫妻は見放さなかった。
「悪いことをしたと思ったから逃げた。それはいい心をもっている証拠だ」
「失敗は成功のもとだよ」

奥田伴子さん←奥田伴子さん

 今福田さんには、身元引受人もいるし、生活保護で安定した生活も送れるし、地域のホームレス支援ではお手伝いをするという人の役に立つことも経験している。
 このセミナー、内容が濃すぎて、金言が多すぎて、ここではすべてを書ききれない。ただ、つくづく、人を殺すも生かすも、私たちの関わり次第なのだと考えさせられた内容だった。
 ネットでは「生き直したい」が2017年1月22日にテレビ朝日のテレメンタリ―2017で放映されたときの24分版を見ることができるので、ますはそちらをご覧ください。


←奥田さんの著書『「助けて」と言える国へ』。奥田さんは、まっとうな人間関係には、迷惑や傷や失敗こそが必要だと説く。その通りだ。

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2018/11/04 14:09 人権 TB(0) コメント(0)
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