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樫田秀樹

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●計画路線から外れても、地下水は地下でつながっている。
 リニア計画において、どの地域でも心配されているのが「地下水の枯渇」です。
 品川・名古屋の286Kmのうち86%の246Kmでトンネルが建設されるのだから、実験線周辺の河川の枯渇が事実として残った以上、今後の工事においてその周辺住民が心配するのは当然といえましょう。

●心配する座間市

 地下水枯渇を恐れるのは、リニア計画沿線上の自治体や住民だけではありません。
 神奈川県座間市でも相当に気をもんでいる。
 座間市は、リニアが通り中間駅も建設される相模原市に隣接する自治体。
 私はその怖れを初めて耳にしたのは、2013年10月上旬に相模原市で開催されたJR東海の「準備書」説明会においてです。

 JR東海の説明に対して、会場で手を挙げた座間市の住民が「相模原市と隣接する座間市はその水供給の85%が地下水です。リニア工事において、座間市の地下水位が下がったり枯渇する可能性はないのか」とJR東海に質問したのです。
 これに対して、JR東海は「影響は小さいと予測します」「事後調査もやります」といった回答をしていたと記憶しております。

 以下、座間市とJR東海とのやりとりを整理しました。

★2014年5月22日  平成26年度第1回「地下水採取審査委員会」会議
 地下水への影響を市も問題視しJR東海が「環境影響評価書」を発表した2014年4月の翌月の5月22日には、有識者からなる「平成26年度第1回地下水採取審査委員会会議」を実施しました。
 そこで話し合われたことは
評価書は情報が依然として不十分
▼評価書には、相模原地区での地下水データが4地点しか示されていない。座間市の涵養域では、相模原台地を横断する6Kmの区間について、少なくとも300~500mごとののデータが必要。
▼砂礫層の透水係数は通常、毎秒10の-3乗~10の-4乗メートルなのに、評価書では10の-5乗メートルと桁が違うのは疑問。
工事中に地下水位の変動が生じるのに、評価書では、構造物の完成後の落ち着いた状態での地下水位を示している。これでは地下水流動阻害についての情報は不十分。
▼相模原市での中間駅は「深層に建設すべき」。そうすれば、トンネルは相模原市と座間市の主帯水層である相模層群を通過しない。

★6月9日  「委員会」から遠藤三紀夫市長への建議。
 この会議により、6月9日、委員会は上記問題点をクリアするために、「座間市での水解析、工事中の地下水流の計算、そしてトンネルの深層での建設など」をJR東海に要望するよう遠藤市長に建議します。

★6月18日  市長からJR東海・柘植康英社長への質問
 この建議を受け、市長はその内容を文書でJR東海に伝えたうえで「貴社の見解を伺います」との質問を投げています。
 そして、そこには一筆「7月18日までに文書にて御回答くださいますようお願いいたします」と記しています。

●文書での回答はいたしておりません

 これに対して、JR東海は以下のように回答したのです。

★7月18日  JR東海・中央新幹線推進本部・中央新幹線建設部・環境保全統括部の内田吉彦部長から市長への回答
 これまでも環境影響評価の内容についてご質問いただいた際には、面談や電話にて説明させていただいており、文書での回答はいたしておりません。今回の内容についてのご担当の窓口に面談の上説明をさせていただきたいと考えております。
(といった内容については文書で回答している)

★同日  口頭での説明
  実際、同じ7月18日、神奈川県のJR東海環境保全事務所の社員が来庁し、口頭回答。市は聞き取った内容を書面に起こします。ごく簡単にまとめれば

▼地下水の解析範囲の南端(座間市に近い側)では、構造物(駅やトンネル)を建設してもしなくても、その地下水位の差はほぼゼロ。したがって、以南を解析する必要はない。
▼深層地下水の帯水層は傾斜があるので、地下水はトンネルの周囲を回り込むため、地下水位への影響は小さい
▼適切な工法で十分に遮水するので、トンネルが深くなる方向に地下水が流出する可能性はない
▼漏水の可能性は低い以上、モニタリングは必要ない

 といった内容です。

 この回答に対して、市長は、「回答には理解いたしかねる部分がある」として「回答の疑問点について」と題した文書を、再度、JR東海・柘植社長に提出。

★7月29日  遠藤市長から柘植社長への照会
 当市といたしましては、今回は座間市地下水採取審査委員会委員長からの建議を受け、座間市長から貴社の代表取締役社長宛に文書で紹介したもので同様に取り扱われるべきものと考えておりますが、貴社の考えを改めて伺います。文書回答できない理由が他にもあればご説明願います。

★8月8日  内田部長から市長への回答
 環境影響評価に必要な内容は評価書に記載してあるものと考えており、改めて文書での回答をすることはいたしておりません 今回のご質問内容についても、貴市ご担当の窓口に面談のうえ説明させていただきました。


 そして、JR東海のこれら回答を受け、8月21日に第2回「地下水採取審査委員会」会議が開催されるのですが、そこでは、JR東海の回答を「到底満足できるものではない」として、各委員から多くの疑問や意見が提示されました。いくつか列挙します。

▼環境影響評価に示されている透水係数はばらつきが大きく、上総層群に至っては最大値と最小値で6桁も異なっている。ばらつきが大きい場合、リスク管理の観点から最大値を用いて計算する(中略)必要があり、単純に平均値を用いるのは環境影響評価として問題。
▼解析範囲の南端付近では地下水位差がほぼゼロであるとのことだが、解析範囲の南端の境界条件を既知水頭境界として設定しているのだからそのような結果になるのは当たり前であり、説明になっていない。
▼JR武蔵野線、京都市営地下鉄東西線の事例など、工事中に地下水流動阻害の影響が最も大きくなるという知見が数多くあるにもかかわらず、「影響が大きい工事完了後」という説明は受け入れられない。
▼遮水可能な工法を採用したとしても、全く地下水が漏出しないとは考えにくい。漏出は想定範囲であり、対応を考えておくべき。漏水が起こらないのが前提ならば、過去の事例を示すべき。

 委員会は、10月3日、この内容をJR東海に問い質すべきだ遠藤市長に建議。そして10月15日に遠藤市長がまたも柘植社長に「貴社の説明内容に係る意見・要望について」との文書を提出。
 これに対するJR東海の回答はA4用紙で2枚。

★12月26日  内田部長から遠藤市長に回答

 内容は、簡単に書けば「地下水への影響は、計画路線から10Kmも離れた座間市への影響はないものと考えております」といったもの。

★2015年1月30日  第3回「地下水採取審査委員会」会議
これに対して、「地下水採取審査委員会」会議は「納得できるものではない」が、「(3か月前の2014年10月に国が事業認可をして)建設の段階に入った以上は十分なモニタリングを行ってもらう」との方向性で一致。
▼モニタリングの地点、井戸構造、測定方法等の情報を提供してもらいつつ、最低月に1回以上はその結果を提供してもらう。
▼有識者、JR東海、座間市などで構成する「地下水対策検討委員会」の設立をJR東海に要望する。

 この2点について建議を受けた遠藤市長は、2月26日、その内容を「要望」として柘植社長に文書を送付。

★3月18日  内田部長から遠藤市長への回答
 「地下水への影響は、計画路線から10Kmも離れた座間市への影響はないものと考えております」
 「非常口およびリニア地下駅付近でモニタリングを実施することで、座間市域への影響も把握できる」
 「モニタリングの調査地点、測定方法、頻度などは学識経験者の意見を受けて検討し、着工前に座間市に報告する。モニタリング結果は公表する」

★5月8日  平成27年度第1回「地下水採取審査委員会」会議
 これについて、委員会は
▼モニタリング内容の決定前に座間市が意見を述べる機会が必要だ。
▼JR東海は、着工前の詳細な調査データを提示し、当委員会が同席の上で説明会を開催すべき
▼モニタリング結果はリアルタイムで公表すべき。
▼座間市が行っている地下水モニタリングデータもJR東海に提供する。

 等々を話し合い、またも、6月2日、遠藤市長が柘植社長に「要望」として文書を提出します。
 しかし、6月22日に内田部長から遠藤市長に送付された回答は、3月18日に回答とほぼまったく同じもの。
 これに対して、当然、委員会からは不満の声が出されるわけです。

★7月24日  平成27年度第2回「地下水採取審査委員会」会議
 ▼これ以上新たなシミュレーションの実施を求めても応答がない。
 ▼必要なのは、モニタリングで異常があった場合の対策を即時的に示してもらうことだ。
 ▼JR東海は座間市に説明するというが、この時に当委員会の同席もされるべきだ。

 この建議を受けた遠藤市長がまたまた柘植社長に要望を送りますが、

★9月17日  内田部長から遠藤市長への回答
 この回答はA4用紙のわずか半分。

「モニタリングの内容については、事業者の責任において学識経験者等に意見を求めて策定します。これら内容は、事前に貴市担当部局に丁寧に説明いたします」

★11月12日  平成27年度第3回「地下水採取審査委員会」会議
 この回答に、委員はほとほと疲れたのでしょうか、以下の発言をしております。

▼「回答はほとんど前回と同じ。これ以上は何を言っても同じ文書が返ってくると思われる。重要なのはJR東海の説明に当委員会が同席して、しっかり意見を言うことである」


 で、この後、同委員会は平成28年度に一度(2017年1月30日)と平成29年度に一度(2018年2月5日)だけ開催されておりますが、ここでは、もうリニア関連の話は出てきません。座間市での地下水総合調査のコンサルに「パシフィックコンサルタンツ社」(リニア計画での神奈川県の環境アセスを請け負った会社)を決めたとの話くらいで、わずかに、2月5日にこんなやりとりがあるだけです。

委員長「リニアの関係で何か進展がありましたか?」
事務局「特にありません
。地下水に関する調査結果等については、結果がまとまり次第、JR東海から座間市に情報提供をいただけるということで調整しています」


●●私からの質問

 結局、何を質問しても同じ回答を受け取っていた市はこの状況をどう見たのか。
 私は昨年のある時期、座間市環境経済部環境政策課環境保全係に質問をしたことがあります。
 できれば、対面取材を望みましたが、議会開催時期と重なっていたので、先方の要望で文書でのやりとりとなりました。ただし、最初に電話で問い合わせたときは、担当職員は「あの対応には誠実さを感じません」と相当な不満を漏らしておりました。
 以下、判りやすいように、一問一答形式に書き表します。

質問1 貴市は、何度もJR東海に対して「モニ夕リンダ計画について当市担当部局に説朋される際には、当市担当部局朧員に加えて、座間市地下水採取審査委員会委員の同席を要望します」と要請していますが、JR東海は一度もそれに応える回答を寄せておりません。
 貴係が最後にその要望をあげたのは2015年8月17日ですが、それ以降、JR東海は何かしらの回答を寄こしたのでしょうか。
 また、文書だけではなく、電話や直接対面などでの交渉の席でどういう回答をしているのでしょうか?
回答1 その1か月後の2015年9月17日付で、「中央新幹線(品川・名古屋間)建設に係る地下水モニタリングについて(回答)」との回答文書がありました。
これ以後に電話や直接対面による交渉はありません。

質問2 JR東海に要請した「地下水対策検討委員会」設立は実現したのでしょうか?
回答2 地下水対策検討委員会の設立は実現しておりません。

質問3 JR東海は、リニア工事でも座間市の地下水水位に影響はないと結論しておりますが、この結論に貴市はどのように考えているでしょうか?
回答3 JR東海が、一連の法に従った手続き等を進めているとはいえ、座間市地下水採取審査委員会からの意見を見ても不十分さを感じております
 平成28年3月に改定した「座間市地下水保全基本計画」で地下水影響予測を行いましたが、現況と大きな差は生じませんでした。
 しかし、市民からの不安の声も多いことから、今後も監視活動を行ってまいります。

質問4 貴市として、妥協できないのは、やはり「モニタリングでの同席」ということになるのでしょうか。
回答4 モニタリング計画について、座間市地下水採取審査委員会委員の同席のうえ、説明をしていただくことが重要であると考えております。

質問5 もし、JR東海が「モニタリングの同席」を認めない場合、貴市として次に取りうる要請や手続きはどのようなものになるでしょうか?
回答5 座間市地下水採取審査委員会に検討及び助言を求めながら、市として必要な対応をしてまいります。


 おそらく、委員会や市としては、これ以上の暖簾に腕押しをするよりも、何か動きがある際に要望を出していくことになるのだと思います。

 ただ、座間市のやりとりを一読してもう少し知りたいと思うのは

▼委員会会議は公開されているが、記録を見る限り、傍聴者の人数はいつも「一人」。もちろん、こうした会議はとても地味で目立たないから、この参加の有無では計れないにしても、一般民の不安はどれほどのものなのか。
▼もし、座間市の地下水に何かしらの影響が出た場合、JR東海はどう対処するのか。
▼長野県中川村などはそうですが、文書の質問に対しては、JR東海はちゃんと文書回答している。なぜ座間市ではそれができないのか。

 といったことですが、やはり、住民の声が大きくなることが、座間市とJR東海との関係性をよくする一つの鍵なのかもしれません。
 ちょっと書きすぎました。
 本日はこのへんで。

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