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●受刑者と刑務所で就職面接する
 久しぶりに刺激的な会社を取材しました。
 おそらくは全国で唯一、受刑者を「積極的に」雇用している会社です。
 北海道札幌市の建設業者の「北洋建設」には毎日のように刑務所の受刑者から「採用の相談に乗ってください」との手紙が届きます。

小澤輝真社長←小澤輝真社長

 小澤輝真社長はやる気ありと見た手紙の主に会いに行くために、直接刑務所に行く。九州にだって行く。

社会復帰を求める手紙1 社会復帰を求める手紙2←社会復帰を求める手紙

 ただし、小澤社長は5年ほど前に「脊髄小脳変性症」という不治の難病に罹患し、余命ある身です。この病気はALSにも似ています。大脳はしっかりしたまま、つまり思考は保たれるけど、小脳が委縮するために、言語障害や体の機能障害が現れる。昨年までは杖で歩けた小澤社長も今では車いすか、両脇を支えてもらっての移動を強いられています。言葉も今はなんとかコミュニケーションが取れますが、一部、発音不明瞭になるときもあります。

一人では歩けない←病気のため、歩くときは車いすか、両脇から支えてもらうしかない。

 つまり刑務所に面接に行くには、もう一人の社員の同行が必要となり、九州には往復で24万円もかかりました。
 国の制度で月8万円は出ますが、まったくの赤字。受刑者が北洋建設で働く場合は、その刑務所から札幌までの交通費も会社が負担。それでも北洋建設は受刑者雇用にこだわり続ける。

 面接はアクリル板超しではなく、普通の部屋で直接受刑者と向かい合う。30分も話し合えば、受刑者が本気で罪を反省しているか、本気で働きたいと願っているかがわかり、その場で実質的な採用通知を伝えることもあるそうです。
 身受け保証人になるのはもちろんです。

●仕事があれば再犯には走らない

 ちなみに、このことは某月刊誌に書く予定なので、ここで詳しく書いては編集者に起こられるので、宣伝ということで、ごくごく簡単に書きます。

 なぜ受刑者を雇用するのか。
 北洋建設は、先代社長(小澤社長の父)が創業したころから、受刑者を受け入れてきましたが、どちらかというと人手不足を解消する目的があったようです。物心ついたときから、会社に前科ある人たちが当たり前に仕事をするのを目にしてきた小澤社長にはそれが普通の会社の姿と思っていたようです。
 しかし、26年前、小澤社長が17歳のときに先代社長が同じ「脊髄小脳変性症」の闘病生活の末に死去(この病気は3分の1が遺伝性)。享年48。高校を中退し違う会社で働いていた小澤社長は、18歳で会社を継ぐことを決意します。
 
 そして厳しい修行を経て一人前の経営者へと育つわけですが、気づいたのは、それまで当たり前と思っていた受刑者の採用が、世間を見渡すと、自分の会社しかしていなかったことです。
 現在、小澤社長が受刑者を受け入れるのは人手不足が理由ではなく、
★仕事さえあれば、人は再犯をしない。仕事がないからやむを得ず、再犯をする。
(日本の再犯率は48%!)
★受刑者は概して熱心に働く。
 との信念があるからです。
 北洋建設は全社員が約60人ですが、このうちの4分の1の15人が元受刑者です。ここでは、入社時にその過去は隠しません。というか、入社したその日に歓迎会がある。
 今回、小澤社長と一緒に会ったのが、殺人未遂で5年間服役していたKさん(実名も顔出しもOKですが、インターネットでは、その特性を考え、私の判断で匿名とします)です。

元受刑者とKさん。「私は罪を一生背負って生きていきますが、私をわだかまりなく受け入れてくれた会社には本当に感謝しています」

 受刑者がもっとも困るのが、出所しても、住所がない以上、仕事に就けないことです。
 だから、多くの出所者がやむなく再犯する。とくに北海道のように冬の野宿が無理な地域では、3食あり、冷暖房もあり、風呂もある刑務所に行ったほうが「生きていける」のです。
 Kさんは刑務所内で出所後の生活を何パターンかで想定していましたが、北洋建設のポリシーに共感。何せ社長が直接面接に来て、就職初日に会社の有志が歓迎を会を開催してくれる。
 小澤社長は断言します。
「いい人ばっかりだ。社会的に犯罪を起こさざるを得ないんです。でもみんな立ち直りたいと思っている。ここで一所懸命働けば、絶対に再犯はありません」
 北洋建設では、12人の寮があり、3食付き。このうち半分が元受刑者。

●裏切られても信じ続ける

 では、なぜ北洋建設のような会社が他にはなかなか見当たらないのか。
 実際の前科者である社員は「経営者にその度量がないから」。
 どういうことかというと、これまで北洋建設ではこれまで500人を雇い入れていますが、その多くが、自分の道を見つけて発展的に退職したり、あるいは、途中でいなくなる人も多い。

「なかには、仕事途中でコンビニのトイレに行くと言って、そのままいなくなる社員もいます。そうなると、車両の運転者がいなくなるので、その日の仕事が困る・・というケースも多々にありました」

 またなかには1年以上も出所前にやりとりをして会社に迎え入れる段取りをしていたのに、出所当日、一言もなくドタキャンする人もいる。

 それを何度も繰り返されたら、普通の会社なら「もう引き受けるのはやめよう」となります。でも北洋建設では、それでも受刑者の受け入れを止めない。
「数少なくても、育ってくれる社員を見るのは嬉しいんです」

毎日手紙が届く北洋建設には毎日受刑者から手紙が届く。


 おそらくは、北洋建設が素晴らしい会社・・ということよりも、素晴らしいと思えるほど、他のほとんどすべての会社が受刑者に対して更生の道を用意していないことも問題にすべきです。
 そして、一度罪を犯した者を徹底して許さない日本の風土もまた、受刑者を再犯に走らせているとも思います。つまり、私たちも悪い(もっとも、そういう私だって、あの犯罪だけは、あの犯人だけは許せない・・と思う事件はあります)。

●加害者家族への民度が冷たい日本

 「加害者家族」(鈴木伸元著。幻冬舎新書)という本があります。
 これは、その名の通り、加害者として服役した人たちの家族の末路(自殺、離婚、転校、婚約破棄、転職等々)を描いた本ですが、私が一番衝撃的だったのが、アメリカにおける加害者家族への世間の目です。こう書かれています(概要)。

――ここからーー
 1998年に高校で銃乱射事件が起きた。マスコミは加害少年の実名や写真を報道した。実名が報道されたことで、母親の元にはアメリカ全土から手紙や電話が殺到した。手紙は段ボール2箱に及ぶ数だった。
 だが、その中身は、加害少年の家族を激励するものばかりだったのだ。
「今あなたの息子さんは一番大切な時なのだから、頻繁に面会に行ってあげてね」、「その子のケアに気を取られすぎて、辛い思いをしている兄弟への目配りが手薄にならないように」、「日曜の教会に集まって、村中であなたたち家族のために祈っています」等々。

――ここまで

 アメリカで起こる犯罪はとんでもないものが多いですが、加害者家族に対するこの民度の差は雲泥の違いです。
 日本で再犯が多いのは、一つには、家族が周囲からつらい目に遭っているがために、もう故郷には帰れない。つまり、頼る場所の一つに頼れないためという背景もあるようです。

 北洋建設、引き続き、取材をしたいと考えております。

 ←「加害者家族」。日本での加害者の家族が置かれた立場がわかる。
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