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●二つの事実誤認のお知らせ

 事実誤認をしておりました。
 ここに訂正をしなければなりません。

  私はたまにリニア中央新幹線計画についての講演を行い、そのたびに最新情報を盛り込んだレジメを作ります。
  そこで絶対に外さない情報の一つが、山梨実験線における「水枯れ」の事実です。その最初に登場するのが、

山梨県大月市の朝日小沢地区の簡易水道の水源が枯れた事例です。

 こう書いてきました。

★1999年9月に枯れた。JR東海は代替水源として井戸を掘り、水をくみ上げる電気代30年分を補償した。

 ところが、最近、1990年代後半に山梨放送がリニア問題についてシリーズで放映していた「浮上10センチの未来」を見直してみると、2つの点でそれが間違いと気づきました。正しくは以下の情報です。

▲枯れたのは1994年9月。
▲JR東海が行った補償は「20年分」の電気代。


 なぜ、こんな間違いをしたかというと、私がこのビデオを見たのが1999年であり、その年号がいつの間にか頭に刷り込まれていたことと、JR東海が補償の拠り所としている国土交通省の通知「公共事業に係る工事の施工に起因する水枯渇等により生ずる損害等に係る事務処理要領の制定について」に、

★①生活用水の場合
 (補償期間は)おおむね30(年)を限度とするが、将来の水道等の整備計画が見込まれる地域にあっては、当該整備計画等を考慮した年数とする。


 と書かれているように、その「30」という数字だけにとらわれていたからです。
 この補償期間は30年間ではない。「最長で30年間」ということです。

 こんな基本情報を今まで見逃していたことを反省するとともに、ここに訂正としてお知らせいたします。

●朝日小沢地区は今どうしているのか?

 と、ここで当然抱く疑問は、朝日小沢地区は今どうしてるのかということです。
 1994年に水枯れして、補償期間が20年であれば、もう3年も前の2014年から住民は自分たちで水の確保をしなければならなくなっています。
 どうしているのか?

 1999年に山梨県を取材したときに関係者から集めていた連絡先などを整理した資料を漁ると、この朝日小沢地区の住民の一人だけ電話番号が分かりました。

 名前は出さないとのお約束なので、仮にAさんとしておきます。私との電話のやり取りを中心に、現状を説明します。

 朝日小沢地区では、近くの九鬼山でリニアのトンネル工事がある前に、JR東海から地区に事前説明として「沢に影響があるかもしれない」との情報は得ていました。ただし「枯れる」とまでは説明していなかったようです。
 ところが、1994年6月に九鬼山のトンネルが貫通すると、8月から水源の沢の流量が徐々に減り始め、9月にはまったく枯れてしまいました。これに当然、朝日小沢地区(16世帯)は驚くわけです。
 
Aさん「JR東海の職員は理屈っぽくって、現状を知ろうとしない。全然現場に来もしないで、最初は『そんな水枯れなんてありませんよ!』と言っていた。俺らの沢が枯れると、当然、俺らはJR東海の事務所に行って『とにかく現場に来い!』と言ったら『水は枯れないはずですが』と返してくるので、『そんなこと言ったって、飲み水がないんだから、とにかく行ってみろ!』とけしかけたんだ。そして、実際に現場で水枯れを見たら、JR東海は泡を食っていたね」

――それでJR東海はどう行動したのですか?

「人間、水がないと生きられない。JR東海は、応急措置として、タンクローリーで水を運んだ。それから、本格的な補償として沢に5本くらいの井戸を掘って、地下水を電気でくみ上げるために5馬力の水中ポンプを設置した。そして、20年分の電気代として、1000万円を地区に払った」

――補償は20年分ということですね。

「そう。俺らはその金を大切に使おうと、貯金して、その利子でやりくりしようとしたが、金利が低くて無理。そして、井戸から貯水タンクまでは600メートルも離れていて、高度差も110メートルあって、なかなか水が上がってこなかった。電気代だけで月に5,6万円かかった。そのうち、ポンプがいかれ、5年もたたずに使い物にならなくなった」

――そこでJR東海に何かの要請は?

「1000万円もらった時点で補償は完了。あとは自分たちでやらなければならない。JR東海に何かを頼むことはもうできません」

――では、5年目くらいから、自分たちで策を考えたのですね。

「だから俺らは必死に考えた。水なきゃ生きれないから。で、まだ貯金があるうちに、元々水が出ていた山の高いところに自分たちで井戸を掘って、新しい1馬力のポンプを買って、それで水を確保した。幸いにも技術の進歩で、今は設備がいいからね。貯水タンクがいっぱいになれば電源が自動的にオフになり、水が1メートル低くなれば、自動的にオンになって汲み上げを開始するので、今では、電気代は1カ月で4000円から5000円で済んでいる。ここの地区は16世帯なので、1世帯あたり月に300円ちょっとの出費で済んでいるのが何よりだ」

 上記、国交省の通知を読み返すと、「(補償期間は)おおむね30(年)を限度とするが、将来の水道等の整備計画が見込まれる地域にあっては、当該整備計画等を考慮した年数とする」とあります。さて、朝日小沢地区が、この「将来の水道等の整備計画が見込まれる地域」であったのか? 私は簡単な質問をしてみました。

――水が枯れた当時、大月市は朝日小沢地区に上水道を敷く案とかはもっていなかったのですか?

「ここは山奥なので、市の上水道は敷いてくれません。本来なら簡易水道にも市がいくらか補助してくれるのに、それもしてくれない。申請しても、水道組合が16世帯しかないので、小さすぎるからとの理由でだめなんだ」

 そもそも、なぜ朝日小沢地区で補償期間が『30年』ではなく「20年」という数字が割り出されたのか。そこは今後知りたいところです。

――今、枯れた沢はどうなっているのですか?

「枯れた沢は何本もある。なかには、時間が経って流量が復活した沢もあれば、未だに復活しない沢もある。復活といっても流量ははるかに少ないですけどね」

 ついでながら、話が、先日に本ブログで書いた実験線での残土に及ぶと、大月市内の山間の土地を残土で埋め立てて田んぼにした農地では、そこそこのコメの収穫があることから、それだけはメリットだとAさんは評価しています。
 そういった「有効利用」のデータの一つ一つは入手したいところです。それで初めて、残土全体の何%が有効利用されたかが分かりますので。


●そういえば補償期間は「30年」との説明だったろうか?

 JR東海の環境影響評価書には、水枯れの場合の補償期間は「30年」と書いていません。ただ、「万が一補償が必要な場合は、(上記、国交省の通知の)『公共事業に係る工事の施工に起因する水枯渇等により生ずる損害等に係る事務処理要領について』に基づいて補償を行う」と書いているだけです。
 30年はあくまでも「最長」の場合です。
 そういえば、住民説明会では、JR東海はこの件で「30年」と言っていたかな? それとも、やはり、「補償は、『公共事業に係る工事の施工に起因する水枯渇等により生ずる損害等に係る事務処理要領について』に基づいて行います」との説明だったかな? 取材ノートを見ればいいのだけれど、後者だとすれば、水枯れへの補償は『30年』ではなく『20年』にもそれ以下にもなる可能性があるということです。

 今後、リニア工事が本格化すれば、多くの地域で否が応でも直面するのが水枯れです。
 今一度、そうなった場合の補償期間をJR東海から具体的に確認するのが必要かと思います。

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