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●またもするどい裁判長

 2月24日、「ストップリニア!訴訟」の第3回口頭弁論が開催されました。
 法廷は、いつも通り、東京地裁で一番広い103号法廷。傍聴席98席。
 この98席を求めて、152人が並びました。私はまたも当たり券を引き、これで3回連続の当たりです。

リニア裁判第3回地裁前デモ


 この日の口頭弁論で、報告すべき点は2つです。

1.裁判長からの鋭い指摘

 まず、前回の裁判で、裁判長から「鉄道事業法に定めている、鉄道事業に必要な「経営性」「安全性」「計画性」について考慮しないままでも、全幹法だけでこのリニア事業を進めていくのか」との質問が被告の国に出されたわけですが、これに対しては、被告は準備書面で「全幹法1~8条の規定で鉄道事業法の要件を充足していれば足りる」と回答しております。
 そこで、今回、裁判長は以下の質問を被告に投げました。

工事実施計画の認可(事業認可)の前に、(2011年5月20日の)営業主体・建設主体の指名という段階と、(5月26日の)整備計画の決定という段階がありますが、それぞれの段階での判断がもし違法であれば、それが承継され、最終的に工事実施計画の認可も取り消し事由になるという判断枠組みでいいですか?

 リニア計画は、とても大雑把に書くと、

①2011年5月20日  国土交通省に設置された交通政策審議会・中央新幹線小委員会の審議を経て、「中央新幹線はリニア方式で」「ルートは南アルプスを貫くCルートで」と決まり、国はJR東海をその「建設主体」と「営業主体」に指名。

②2011年5月26日  その「整備計画」が決定され

③2011年5月27日  国はJR東海に対して、リニアの建設指示を出す。建設指示とは、工事しろということではなく、工事に必要な手続きに入れということ。つまり、まずは環境アセスからやりなさいということです。

③2014年10月17日  その環境アセスの結果を審査した国土交通省がリニア事業を認可する。これで、JR東海は着工が可能となりました。

 との手続きを踏んでいます。

 裁判長は、①か②か③での判断が違法であれば、④もまた違法になると判断していいのか? と国に尋ねたということです。

 これに対して、被告は

「建設指示については、工事実施計画の認可とは別の処分となる。基本的には、違法性の継承は認められないと考える。ただちに工事実施計画の認可の違法にはならない」

 すろと、すぐさま裁判長は

「そこがポイント。そこをまとめてください。そこを曖昧にしたままだと進められない

被告「次回期日までには明らかにしたい」

裁判長「早めにお立場を固めてください」


 裁判のあとの記者会見で、中心弁護士の関島保雄弁護士は「裁判長は鋭い質問をした。要は、今回の事業認可の前に建設指示をしている。法律論として、事業認可の前段階の建設指示や手続きに違法があれば(十分な安全性の議論がなされていなければ)、今回の事業認可手続きの違法性につながるんですか、どうですか? と裁判官が釈明した。これは一つの争点になります」と今後の進展への深い関心を示しました。

 また、記者会見のあと、参議院議員会館の報告集会へとタクシーで移動したわけですが、たまたま同じタクシーに乗った関島弁護士は「今回の法律論は、国の準備書面では曖昧にされていた。ところが、あの裁判官はそこをきちんと読みこみ、はっきりしてと指示した。見ているところは見ている裁判長だ。的確に質問している」とその丁寧な仕事を評価していました。

 本ブログでも、今回の裁判長、古田孝夫裁判長が、かつて岡山地裁に在籍していた時に、アスベスト被害者が労働基準監督署による労災不認定処分の取り消しを求めた訴訟で、原告が勝訴したことを書いていますが、関島弁護士によれば、その裁判は古田裁判長が赴任する前は、どちらに転ぶか分からないぐちゃぐちゃの展開をしていたようですが、古田裁判長が赴任するや、論点が整理され、短期間で判決を出したそうです。
 勝訴か敗訴とかではなく、互いの資料をとてもよく読み込む裁判官として知られているようです。


2.岐阜県住民からの意見陳述
 12月の第2回裁判では、リニア車両基地が建設される予定の神奈川県相模原市緑区鳥屋の住民、栗原晟さんが意見陳述をしましたが、今回は、岐阜県土岐市の住民、和田悦子さんが、ウラン鉱床にぶつかるかもしれないリニア工事についての懸念を示す意見陳述をしました。
 リニアとウラン鉱床との問題については、本ブログでも何回か書いていますので、ここでは繰り返しません。

リニア裁判第3回記者会見←岐阜県の住民、和田悦子さん。土岐市議会議員でもある。東京地裁での記者会見において。右にいるのが関島保雄弁護士。

 以下、和田さんの意見陳述をスキャナから読み取ったものをそのまま転載します。


 原告和田悦子が意見陳述します。
 私は岐阜県土岐市泉が丘町に居住しております。12年前に隣市、瑞浪市日吉町の古民家を手に入れました。自然豊かなこの土地で農業をして余生を過ごしたいと思いコツコツと手作りでリフォームをしております。ところがその北西約300メートルの南垣外地区の地下にJR東海のリニア中央新幹線と非常口が建設されるということを聞き、とても驚きました。自然を壊してまで、東京名古屋間を40分で走るそんな早い乗り物を作る価値がどこにあるのか私にはわかりません。
 この地域は大小のウラン鉱床が点在しています。「春日井リニアを問う会」が2016年2月と3月に、3回にわたり東濃ウラン鉱床周辺の「放射線量調査」を行った結果、「リニアルート品川から245キロ地点の(御嵩町)で非常に高い測定値が認められました。
 私の古民家の近くにも宿洞ウラン鉱床がありますので、近辺の「放射線量」を測ってみました。地上から1mの所で平均毎時0.13~0.15マイクロシーベルトもありました。日によって計測値は変わりますが、他地区より高い数値ですので、地下深くを掘削すれば、放射線量の高いウラン残土が排出されるのではないかと危倶しております。
 JR東海はリニアの路線を設定するにあたって、「ウラン鉱床を回避した」と準備書には書いていました。しかし、それはJR東海自身がウランの有無を調査したものによるのではなく、既存の文献を参考にして作り上げた路線計画であることがわかりました。その文献は独立行政法人日本原子力研究開発機構(旧動燃)のものであります。あるジャーナリストがその日本原子力開発機構の職員にウランの有無を問いただしたところ「実際には掘ってみないことにはわからない」と答えたということです。私はその職員の言われた通りだと思います。文献上でウラン鉱床を回避したと言われても、実際にはウランを含んだ残土が出てくる危険があると思います。
 東濃地区のリニア問題を取り組んでいる団体「リニアを考える岐阜県民ネットワーク」が、JR東海に対して、2015年10月と2016年4月に、岐阜県内のルート上のウランの存在を確かめるためのボーリング調査をするように要請しました。それに対して、JR東海は「花崗岩による天然由来の放射能数値であり問題ない」と回答をしました。岐阜県はJR東海に対して、「事業者として、独自でウラン鉱床の有無を調べる責任があるのではないか」との意見を出しました。それに対してJR東海は、2016年7月25日に、瑞浪市日吉町の3キロ区間付近で、僅か11本のボーリンク調査を行っただけです。また、JR東海の評価書において、「万一、放射線量が比較的高い掘削土が確認された場合は、掘削土を覆土することにより敷地境界線における放射線量を管理値以下に低減させるとともに、速水シートなどを用いて雨水などの侵入を防止させることとする」としています。驚きました。覆土や速水シートを使うなど、そんな安易な方法しか対策をもっていないのでしょうか。ウランを掘削してしまえば、ラドンガスが発生します。ラドンガスは肺ガンを引き起こす一因になりうることが確認されています。
 地中にはこのほかにもカドニウム、水銀、亜鉛なども出土する可能性があります。2003年には東海環状線自動車道工事の掘削工事において、隣接している可児市久々利地区で黄鉄鉱という重金属が出土し、近隣の米農家は当時、耕作をやめなければいけない事態となりました。
 つい、今年の2月初めには、リニア日吉トンネル南垣外工区の工事で環境基準の4.2倍のヒ素と1.9倍のフッ素、1.4倍のホウ素が検出されたと報道されました。
 地元市民は大きな不安を抱えています。今後、どんな計測器で、どのようなプロセスを経て土壌の測定をしているのかを説明してほしい。また、市民による測定や見学もさせてほしいと要望しています。
 また、このヒ素などの問題に続いて、2月8日の新聞では、本件工事の施工業者が土砂災害のおそれのある区域で無許可で工事を行っていたことがわかり、岐阜県は業者に文書で是正を指導したことが報道されました。無許可であることを認識していたとのこと。許せない行為です。JR東海は市民の不安を払拭するべく情報公開をし、最善を尽くしてほしいと思います。
 加えて、井戸水が枯れた場合の補償に関してもJR東海から具体的な回答はありません。井戸は田舎で暮らす者にとってはお金には替えられない大切なものです。
 そもそも、JR東海は一企業の事業だと公言しておりました。「ペイできない」とも言っていましたので、おかしいとは思っていましたが、国から3兆円の融資を受けるようです。今後、何か事があった時は、福島原発事故対策費用やもんじゅ廃炉の多大な経費と同じように、結局、国民がツケを背負っていくことになるのでしょうか。
 私たち人間は、衣食住すべての面で、大地の恵みを受けています。今では宅地は自分の物のように思っていますが、昔は、決まった所有者は無く、自分がこの世にいる間、大地の神様より借りているものと考えられ「地の神様」を祀ったそうです。私は地中を深く掘り起こし、勝手に自然破壊することは神様の怒りに触れるのではないかと正直思っています。
 自然を壊すことは、人間をも壊していくことにつながります。本当の豊かさは自然環境をどれだけ残していけるかであると私は思います。脚本家の倉本聰さんは「日本は敗戦からただひたすら走ってきた。ブレーキもバックギアもなく、ゴールのないマラソンを欲望のままに走っているのではないか。哲学がなく、無反省な進歩をしている」と今の日本を心配しています。
 私達は未来を生きる子供たちのため、ブレーキをかけ、今後日本がどうあるべきかを真剣に考えなければいけない時が来ていると思います。このJR東海の見切り発車ともいえるリニア中央新幹線工事を一度立ち止まっていただきたいと思い、意見をのべさせていただきました。
 以上です。


●今後の日程

 いずれも103号法廷14時半からで、4月28日、6月23日、9月8日、11月24日、1月19日からです。原告弁護団としては、リニアが通る1都6県からそれぞれ一人を意見陳述させたい意向。4月28日が山梨実験線の被害について、6月23日が長野県での被害についての意見陳述が行われる予定です。
 じつは、こうやって何回も意見陳述を行うことを、通常、裁判所は嫌うらしいのですが、今回の裁判長はそのへんには抵抗はないようです。
 やはり長丁場になるかなと想像しています。 

 報告集会では、沿線住民の一人が「各地からの意見陳述を行うだけで相当の時間が取られる。そうこうしている間に工事は進む。裁判のスピードアップはできないものか」といった趣旨の発言がなされました。
 これに対し、弁護団は、「大型事業に対する裁判は、多くの場合、工事が9割がた進んでからの提訴となっているが、リニアはまだ本格着工前なので、時間的な余裕はまだある。まず論点を出し切る」と説明。

 確かに、1都6県からの意見陳述を、一回の裁判で一つずつやれば、それだけで来年1月までかかるわけです。
 もっとも、裁判は公判がすべてではなく、互いの準備書面の提出や、それを裁判官が読み込み吟味することも必要なわけです。

 それでも、私などは、一回の裁判で2つくらいの意見陳述ができないものかと考えてしまいますが…。
 ただ、このあたりは素人は口を挟まないのが賢明です。

渓流9条の会リニアよりシニア←釣り人の目線から環境問題に取り組む「渓流9条の会」の会員も裁判を傍聴。3月20日14時から東京都練馬区の石神井公園区民交流センターで「釣りと環境シンポジウム」を開催。原発事故による渓流魚への影響や、リニア計画の魚への影響などを報告する。右にいるリニア弁護団の山下潤弁護士も同会の会員。

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