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●栗原晟さんの意見陳述

 12月9日14時半。
 東京地裁で「ストップ・リニア!訴訟」の第2回口頭弁論が行われました。

リニア第2回裁判記者会見←左端が栗原さん。裁判後の司法記者クラブでの記者会見。

 この日、原告側から意見陳述したのは、神奈川県相模原市鳥屋(とや)に住む栗原晟(あきら)さんです。
 栗原さんのことは、本ブログでも書いています(こちらこちらです)。
 鳥屋に建設予定の巨大車両基地予定地に隣接する山林の所有者ですが、リニアが地域にもたらすであろう環境破壊と地域破壊に黙っていられず、土地トラストを始めた人です。

鳥屋車両基地鳥瞰図←JR東海が作成した車両基地予想図。長さ2キロ。さながら滑走路のようだ。反対運動がない限りは、予定地の全員が立ち退くことになる。

トラストフレンド募集←車両基地に隣接する山林を所有する栗原さんたちが始めた土地トラスト運動では資金的なサポーター(フレンド)を募集中。

 以下、栗原さんの意見陳述を公開します。


平成28年(行ウ)第211号
原告 川村晃生 外
被告 国(処分行政庁 国土交通大臣)
参加人 東海旅客鉄道株式会社

意 見 陳 述 事
       2016(平成28)年12月9日

東京地方裁判所 民事第3部 B②係 御中

原告 栗原 晟

 原告栗原晟が準備書面1について意見陳述します。

 私は、神奈川県相模原市緑区鳥屋に居住しており、関東車両基地建設予定地一帯の山を所有しています。この辺りの県道沿いの民家の多くがそうであるように、栗原家も江戸時代の頃からこの地域で暮らしてきました。先代はこの地域で学校の教員を務め、私は現在民生委員などを務めております。

 私が、この地域に車両基地が建設予定であることを最初に知ったのほ、2013年9月の「鳥屋に車両基地」と題する記事でした。記事を読んだ当初はどんなものができるのか全く見当がつかず、まさかこんなに大きなものができるとは思いませんでした。同じく9月にJR東海は環境影響評価準備書を公開していました。周囲の人はあんな分厚い物が読めるかと言っていましたが、私としては、地域にとっては重大事であり、賛成反対の結論は別としてまずはどういうものが出来るのかを知りたいと思い読むことにしました。

 準備書に記載されていた地図はたんに四角い点線で該当地域を囲んだだけのものであり、どの地番の地が工事の対象になるのか、車両基地の換業によってどの程度近隣の住環境に影響が生じるのか正確には分かりませんでした。ただ、リニアの必要性については疑問を感じましたし、工事量車両がピーク時には1日1000台以上も走行することが分かりました。残土処理捨て場を作るためにこのような場所に車両基地を作っているのではないかと考え、こんなもののために町の人間が土地を奪われ、退去させられるのは堪らないと思うようになりました。

 2014年1月には県の公聴会に出席して意見を述べました。JR東海の地域での説明会などは行われておらず、準備書以外に資料は無い状態でしたが、土砂捨て場のために町の人間が土地を奪われるのはおかしいこと、鳥屋は歩道未整備の箇所も多く、安全上も大問題であること、騒音・振動・排気ガスなどのために住環境が破壊されることなどについて、意見を述べました。
 その後2014年4月に発表された環境影響評価書を読んで、私の考えは確信に変わりました。準備書に対する各地域からの意見を読んで、リニアがペイするとは到底患えないし、地方の経済力が一部の大都市に吸い上げられて疲弊するだけだと思いました。このようなもののためになぜ鳥屋が犠牲にならなければならないのかという思いを強くしました。

 2014年11月に地域への説明会がようやく始まりました。基本的には評価書の説明を繰り返すだけで、誰の土地が工事対象地域なのか、当事者は誰なのか全く分かりませんでした。地図も平面図があるだけで高さのイメージもつかめませんでした。補償についても一般論が述べられただけでした。
 その後も2014年12月、2015年1月、同年2月と説明会がありました。車両基地の鳥瞰図は地域住民の要望により、2015年の2月になってようやく住民に公開されました。何より、いずれの説明も基地建設が前提で、建設自体の是非を地域住民と議論する機会ではありませんでした。2014年の10月には既に工事実施計画の認可処分が行われています。処分前は情報を極力伏せておいて、処分後に説明会を開催するやり方はフェアではないと思いました。その他質問に対する回答はほとんどが口頭であり、持ち帰って詳細に分析できる資料を貰えることはありませんでした。2014年10月には鳥屋地域振興協議会から工事が引き起こす環境悪化についてJR東海、県、市に対して要望書を提出していたのですが、これに対する回答もありませんでした。

 立ち退きを求められている谷戸地域の方が困っているとの話も聞きました。自分は当事者ではないので関係ないという人もいます。しかし、それでは同じ町の人間が困っているのに関係ないと言っているのに等しいでしょう。私はたまたま準備書を読んでこれはおかしいと思ってしまった。知ってしまった以上は無関心であることは許されないと考えました。この裁判に参加する多くの原告の気持ちも同様だと患います。

 最後に、足尾鉱毒事件の田中正造の言葉を引用します。「其の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし。」リニアの是非を問うこの裁判を通じて、私達の文明が真の文明と言い得るのかが問われていると考えます。



 この陳述には、JR東海の住民への「丁寧ではない」説明のことも述べられていますが、その説明以前に栗原さんが「おかしい」ととらえているのが、赤線で示したように、手続きの順番が逆であることです。

 つまり、2014年10月に国土交通省が事業認可する前に、丁寧な住民説明会が開催されるべきなのに、事業認可のあとにそれが(丁寧ではないが)実現するのはおかしいと訴えたのです。


●裁判長の質問

 さて、今回の裁判を担当する古田孝夫裁判長が過去、原告の主張も被告の主張もよく分析し、まっとうな判決を出してきたということを、以前本ブログで書きましたが、口頭弁論のあとの記者会見前、弁護団の一人も「今回の裁判長が東京地裁にいる間に判決を出してほしい」との期待を匂わせています。
 その古田裁判長は、今回、被告にこんな質問を投げました(要約)。

被告は全国新幹線鉄道整備法(全幹法)をリニア事業に適用している。原告は、民間の鉄道事業である以上は『鉄道事業法』を適用すべきだと主張している。全幹法だけでの適用では、鉄道事業法を適用しないとしても、鉄道事業法5条1項で明記されている実質的内容を、本件の新幹線事業は満たす必要はないとまで仰っているのでしょうか

被告「まずは法令の適用関係について、国としての認識を示したうえで、必要範囲で今後、安全性を含め、輸送需要なども触れていく」

裁判長「全幹法内や関係法令のなかでそういう論理を持たす必要性があるとの具体的な条文があるのかを指摘していただきながら進めていくのがいいかと思う」

 鉄道事業法5条1項とは以下の内容です。

第五条  国土交通大臣は、鉄道事業の許可をしようとするときは、次の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一  その事業の計画が経営上適切なものであること。
二  その事業の計画が輸送の安全上適切なものであること。
三  前二号に掲げるもののほか、その事業の遂行上適切な計画を有するものであること。
四  その事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。


つまり、鉄道事業に必要な「経営性」「安全性」「計画性」について考慮しないままでも、このリニア事業を進めていくのか、と裁判長は問うたわけです。

被告(国土交通大臣)は、準備書面のなかでは

「『鉄道事業法5条に違反する』との原告らの主張は失当である。本件許可処分は、全幹法4条1項に基づき決定された中央新幹線の基本計画を全体として、整備計画及び工事実施計画を全幹法の規定に基づき順次決定し(中略)、そのプロセスにおいて鉄道事業法5条を適用すべきとする全幹法の規定がないのであるから、原告らの主張は失当である」

 と述べていますが、この点において裁判長は「詰め」の質問をしたわけです。

 弁護団の一人は、裁判長について「原告のも被告のも準備書面をきちんと読み込んでいる。過去の判例を見ても行政に厳しい判断をしている裁判長だけに、地裁の判決までは東京地裁にいてほしい」と評価しています。

 次回、被告は裁判長の投げた質問にどう回答するのか。注目したいです。

リニア第2回裁判開廷前行動1 リニア第2回裁判開廷前行動2 リニア第2回裁判開廷前行動3




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