取材しても、記事にできる情報は1割未満。しかし捨てた9割にも、伝えられるべきものがあります。ボツになった企画も数知れず。そんなネタを紹介します。なお、本ブログの文章と写真の無断転載はお断りします。ご利用希望者合はご一報下さい。
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 ここのところ、昼も夜もなく、平日も休日も関係なく、取材に次ぐ取材、執筆に次ぐ執筆で、締め切りに追われる毎日でした。でも、一つ一つの仕事は、時給換算したら最低賃金を割り込んでいるんじゃないのかな・・。
 たとえば、4日間をかけて取材・執筆した記事は、ギャラが3万円。ほとんど高校生バイトと変わりません。だから結局は、夜も仕事をすることになる。悪循環です。ルポで食うのはますます厳しくなっています。決して人に勧められる仕事ではない。

 ただ、これら締め切りのなかには、自分にとって大切なものもありました。

 2014年9月に、拙著「悪夢の超特急 リニア中央新幹線」を出版したわけですが、これが、1年10カ月をかけてようやく初版が売り切れそうです。ということで、出版社としては、同じものを増刷するのではなく、この1年10カ月の間に起こったことを増補しての増刷にしたいとの意向をもっていて、それに従い、けっこうな時間をかけて執筆に取り組んでいた次第です。

 とはいえ、増補されるのは、おそらく、32ページくらいなので、この1年10カ月の間に起きたことのほんの一部しか書けません。
 ただ、初版を発行したのは2014年9月ですが、その翌月に国土交通省はリニア事業を認可し、そして、今年5月に市民団体がその認可取り消しを求めての行政訴訟を起こし、かつ、6月上旬には、安倍首相自らが財政投融資を活用してのリニアの大阪延伸の前倒しを表明するなど、この1年10カ月で大きな山がいくつもありました。

 そこで、増補版では、事業認可から訴訟までの市民運動の流れ、新しく立ち上がった住民運動(トラスト運動など)、そして、私のブログでも高い関心を呼んだ、岐阜県東濃地区のリニアルート上で高い放射線値を測定したあたりの話などに絞って盛り込んでみました。

 増補版で敢えて書いてみたことがあります。

 それは、本ブログではすでに触れましたが、

 拙著は、本来は、2014年3月に、別の出版社から出版される予定でした。実際、3月上旬には3000部の印刷も終わり、来週には書店に配本されるところまで手筈されていました。
 ところが、出版社の上部団体である某大学が、突然、出版停止という措置を出してきます。

「大学の研究者や卒業生にも鉄道関連に携わる人がいる。(リニア問題を論ずる)この本の内容が大学の意図と同じと思われるのは困る」

 というのがその理由ですが、どんな先輩ジャーナリストに尋ねても、校正段階ならともかく、印刷後の出版停止は聞いたことがないと話し、私にもいまだに出版停止の真相はわかりません。

 それからは、幾社もの出版社に出版の企画をもちこみました。やはり、社会問題と真摯に向き合っている出版社に的を絞ってコンタクトしましたが、原稿を預け数週間後に来る返事はどこも「残念ながら…」というものです。
 いろいろな理由はありますが、共通項は「どれだけ売れるかが読めない」ということです。
 出版社にもそこで働く人がいる以上、その生活を成立させるためには売れるかどうかわからない本を出すわけにはいかないのでしょう。
 原稿を提出する。そして2,3週間待つ。そしてボツ。これを何回も繰り返すとさすがにへこんできます。

 もうダメかなと、そのボヤキをある先輩ジャーナリストにぶつけてみると、「それなら俺の大学の後輩が社長をしている出版社があるよ。社長に会う?」と、旬報社の木内社長にお会いしたのがその翌日。すぐに原稿を渡したのですが、その翌日に「これはたいへんな問題です。出版しましょう!」と回答があったのにはびっくりしました。

 一つには、原稿を渡したその日のうちに原稿を読んでくれていたこと。そして、また数週間待つのかなと思っていたのに、翌日に返事があったことにです。

 そういうことで、私は今、旬報社には足を向けて寝られないのですが、とりあえず、増補版を出せるというのは、出版社の業績アップにも貢献できるので、最低限の義理は果たせたなと思います。

 また、リニアに関しては、この1年10カ月の間にもいろいろなことがあったので、増補版で書けなかったことと、今後起こることなどは、あらためて新しい単行本として来年の出版を目指そうと考えているところです。

 原発関連の書籍は数多く出版されています。それは、事故が起こったからです。事故の後に、マスコミもフリージャーナリストも饒舌になり、関連取材を深め、無数の記事が出て、おそらく数百冊の出版がされています。
 ただ、リニアの場合はまだ建設前ではありますが、何か問題が、事故が、事件が起きてから騒ぐのではなく(もちろん、起きるとは断定しません)、その問題の本質が見えている以上は(リニア実験線では、水枯れ、日照阻害などが起きている)、そこに警鐘を鳴らすことこそジャーナリズムの役割です。原発の時には、それは事故前にはほとんどなかった。

 JR東海が広告主であるテレビや雑誌は仕方ないとしても、それに縛られない単行本などの出版業界には是非今からでもリニア問題に意識を向けていただければと願うばかりです。

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