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樫田秀樹

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●結局は土地を売った

11月9日。山梨県笛吹市のリニア実験線沿いに住む雨宮融(とおる)さんの自宅を訪ねてきました。
 山梨県にリニア実験線の誘致が決まったのは1989年8月ですが、この前後から雨宮さんは地域の住民とともにその誘致にも建設にも反対をしてきました。
 一つには電磁波への不安。また、県の主催で住民40人ほどが当時の宮崎県のリニア実験線を見学したこともありますが、結局、地元へのメリットも感じられない。
 宮崎さんの地区(約40世帯)では「土地を売らない」と決議。それを県にも伝えた。
 とはいえ、当時はまだバブルが続いていた時代で、計画沿線上では、数千万円の金を一度に入手できる機会に、点々と買収に応じる人も出てきました。
 ただし、当初予定されていた実験線の全線42.8キロは予算の都合で18.4キロしか建設されず、雨宮さんの住む笛吹市には建設がなされませんでした。そして、実験走行が始まった97年は既にバブルの崩壊が始まり、2年後の99年には、リニアが大阪まで走る本線工事が始まるどころか、実験線の残りの区間すら建築されないという状況に、住民はようやく気付くのですーー「リニアは実験だけで終わる」と。

 雨宮さんもそう思っていたようで、「ああ、これでリニアが笛吹市にまで来ることはないな」と安心していたようです。
 ところが、2007年にJR東海が突然の「全線自費建設」を公表します。
 そして、翌年以降に実験線の延伸工事が始まり、実験線の全線は2013年8月に完成となります。


●11月中旬から家が暗くなる
 リニア実験線のルート上にあった家屋は買収されたのですが、昔の「土地は売らない」と言っていた人たちも、地元のブローカーや地域のボスの立ち回りに次々と買収に応じたようです。
 
 雨宮さんが思い出すに、そのすべてが「戸別交渉」
 地域でまとまっての用地買収対策がなかったことが反省点だと振り返ります。
 雨宮さんの自宅は、沿線から数十メートル離れているので(感覚的にはほぼ真下なようなものです)、地域のボスは来なかったようですが、地区では9軒が立退きに応じ、そのうち8軒が同じ地区に場所を変えて新しい家屋を建てています。

「でも責められない。このへんは桃やブドウ農家が多いですが、周囲より若干標高が高いことで、収量が少ないから収入も少ないんです。だからバブルのときでも家を建て替えた人なんていません。そういうときにやってきた一獲千金の話にはどうしても乗ってしまったのですね」(雨宮さん)

 初期の実験線では騒音や振動の問題が指摘されていたことで、延伸線では初めから地上部にもチューブをつけていたため、雨宮さんのご自宅にいても、リニアが通過するときには一瞬だけビューンと音がするだけで、それほどの騒音とは感じません。
 雨宮さんの問題は、沿線の北側に住んでいることでの日照阻害です。

日照障害が起こる、ということは実験線の建設を手掛けた「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」からの口頭や文書での事前説明では聞いていました。
 だが雨宮さんは「もっと具体的に判る資料を出してほしい」と要請。
 この再三の要請に応じて機構が出してきたのが、下記の日陰のシミュレーション図です。各月の各時刻での日陰を数十枚も表したもので、下記の図は11月22日のシミュレーション図です。

当時の日陰のシミュレーション図←灰色の部分が、11月22日におけるリニア高架が作る日陰予想図。ボールペンが差すのは雨宮家。撮影が11月9日なので、あと2週間弱で雨宮家には一条の光も入らないことになる。

「実際に実験線が完成すると、11月に入ってからは、高架が作り出す日陰が、一日に1メートル、また1メートルと家にまで伸びてくるんです。ああ、本当に暗くなるのかとめげてきますね」

 そして、11月中旬から雨宮家では一条の光も入らない日々が始まり、それが1月中旬まで続くのです。

撮影11月9日。間もなく闇が訪れる。←あと2週間で暗闇が訪れる。「この時期は必ず憂うつになります」


 冬が迫るにつれて、徐々に暗くなり、やがて真っ暗になる日々は精神的な負担が重く、奥さんの美恵子さんは昨年は大きな円形脱毛症を3カ所発症。皮膚科に通い、医師からは「何か心配事があるのですか?」と質問されたそうです。
 縁側から眺めることのできた、数十匹もの錦鯉が泳いでいた庭の池も日陰となったことで温度が下がり、錦鯉は一冬で全滅。
 これを機構に訴えても「前例がない」と補償の対象とはされませんでした。

リニアの日陰で錦鯉が全滅した←数十匹の錦鯉が全滅した池。すぐそばをリニアが走る。

 雪が降っても氷となって残るため、今、沿線沿いの北側の道路を車で走るには、スタッドレスタイヤが必須となっています。


●補償は?
 もちろん補償はあります。
 
 国土交通省国総国調第46号の通知「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」に基づき、公共事業によって日陰となる家には補償がなされます。

 だが、その保障は大雑把に言えば、雨宮さんのような個人宅であれば

★1日4時間までは日陰を受忍すること。たとえば、本来1日に9時間の日照があった家屋においては、4時間分は補償の対象とならない。5時間だけが補償されるということです。
★家の規模に関わらず、補償されるのは人数で算定される。たとえば、雨宮さんはご夫婦で暮らしているので、2人分、もっと言えば2部屋分の補償しかなされないということです。つまり、同じ日陰なのに、もし4人が住んでいたら、補償額はその倍になる。一人暮らしなら、補償額はその半分になるということです。
★補償期間はおおむね30年間(借家の場合は5年間)。
 これは水枯れの補償期間とまったく同じですね。

 補償は、日陰になったことで必要になる暖房に必要な電気代、燃料代、洗濯の乾燥機などに係る電気代などにあてがわれます。
 ただし、その補償額は30年分が一括して支払われます。

14年末に購入した薪ストーブ←雨宮さんが昨年末に購入した薪ストーブ。部屋が暖かくなり、なおかつ、薪を使うことで、炎がご夫婦の心を癒してくれるという。

 雨宮さんのようなご夫婦の二人暮らしなら、おおむね、300万円台を受け取ったのではないかと雨宮さんは推測しています。つまり、月に約1万円ですね。

 じつは雨宮さんの地区では、日照阻害への補償について「簡単にハンコを押すのはよそう」と地権者会での意見の一致を見ていました。
 理由の一つとして、かつて、実験線への建設にも反対した雨宮さんですが、それでも、当初、県や機構とは「実験線はあくまでも実験線であり、これが将来の営業本線を兼ねるかは決まっていない」との約束を交わしていたことで、結局、営業本線を兼ねることになった今、この日陰問題は半永久的に続くことになることを批判する意図があったからです。

 だが。

 あるときの日陰補償についての機構からの説明会の席上において、地権者の一人が突然「私はお金が欲しい」と発言してしまった。

「あれで一気に地権者会は崩れましたね」

 結局、最後まで判をつかなかったのは雨宮さんただ一人となりました。とはいえ、機構も実験線建設を終了した以上は撤退をしなければならず、補償問題を残したままにはできません。最後の最後は、雨宮さんも補償金を受け入れることになりましたが

「補償金の算出方法にも、30年という期限があるのもすべてが納得できない。リニアは半永久的にここを走る。31年目からは住民が電気代や燃料費を負担せよということなのでしょうか」

 さて、実験線では建設主体が機構でしたが、営業本線ではJR東海です。つまり、今後の建設ではJR東海が日陰の補償を行うということですが、そういえば、これまでの住民説明会で、この問題は話し合われていただろうか? 中心線測量をしてきちんとした建設範囲が確定してからの説明になるのか? このへんの情報も整理したいです。

 補償は家屋だけではなく、果樹にも適用されます。だが、農産地である雨宮さんたちの地域では、機構はどういう調査を行ったのか? それは次回書きます。

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