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●「土地を売っていないのはお宅だけですよ」

 これはリニアの問題というよりも、リニア計画で一山当てようとする輩が跋扈している話です。
 ただ、今後、あちこちのリニア関連の土地でも同じことが起きそうな気がします。8月下旬に見てきた事例なのに、他の仕事での自転車操業が途切れることなく続き、本ブログへのアップが遅れました。

 神奈川県相模原市緑区牧野の牧馬(まぎめ)地区。ここには非常口が建設される予定。

 昨年だったか、市民団体「リニア新幹線を考える相模原連絡会」が実施した「立坑ツアー」(神奈川県の山間部で建設する非常口の建設予定地を回った)で牧馬には来たことがありますが、そのときは、県道から枝分かれする細い道を案内人が指さして「この奥に非常口が作られる予定です」と説明しただけで、その数百メートル先にある実際の建設予定地には行きませんでした。というのは正確な場所が特定できていなかったから。

 今回、牧馬を訪れたのには訳があります。

 牧馬は10世帯いるかいないかの小さな集落なのですが、意外にもIターン者が多い。
 その一人、飯野さん(女性)に居心地を尋ねてみると「最高です!」。
 よそ者でも暖かく迎え入れてくれる上下関係のないつきあい。静かな自然環境。そして

「ここでは沢水がそのまま飲めるんです」

 牧馬では、全戸が沢水と井戸水だけで生活用水をまかなっているのです。 

 ところが、7月頃、この牧馬にある不動産業者が現れます。そして、各世帯を回り同じことを語ったようですーー「このあたりの土地は、リニアの非常口から出る残土置き場に決まった。土地は私たちが買い取ることになりました。地区長さんも了承した。了承してないのお宅だけですよ」
 
 え?

 飯野さんは、全世帯が顔見知りの集落でそんな話が出たこともないことから、あり得ないと確信。そもそも、14年8月、牧馬集落は非常口を違う場所に建設するようJR東海に要望しているので、土地を売ることなど考えたこともない。

 その不動産業者が言うには、非常口から出た残土は、どこかにもっていくのではなく、非常口周辺に、つまり、牧馬の人たちが大切にしている沢が流れる谷を埋めるという。

 不動産業者曰く、

「非常口口付近の沢を残土で埋め立てれば、遠くまで残土をもっていく必要がない。つまり、ダンプが県道を往来することが無くなるというメリットがあります」

牧馬の沢←ここを残土で埋める? ガセ話もはなはだしい。

 絶対にありえない話だ。
 おそらくは、不動産業者が安く買い取り、あとでJR東海に高い値段で売り飛ばすのでしょう。
 そんな手には引っかからない・・と飯野さんは思っていました。

 だが‼

 ここの自然に惚れて移住したAさん夫妻は非常口予定地のすぐ近くの借家に住んでいるのですが、そこの大家が土地売却を承諾していました。Aさん夫妻は、自分たちの知らぬ間に違う家に引っ越すことになっていたのです。
 さらには、その近くの畑の地主も売却の仮契約を結んでいたことが発覚。

 現在、本契約したのが1軒、仮契約はおそらく4軒だとのこと。

 Aさんの大家は不在地主。不動産業者はすでにそこにもコンタクトをしていたということですが、不在地主の場合は、自身の土地への思い入れは、移住者よりは高くないのかもしれません。

牧馬非常口1←非常口建設予定地。遠くに赤く見えるのが、Aさんの借家。大家がAさんに通知もせずに、不動産業者に土地売却契約を交わした。

牧馬非常口2←前の写真と逆方向から非常口建設予定地を臨む。

 とはいえ、この怪しい不動産屋の動きが知れ渡ると、非常口に近い畑の他の地主は改めて「売らない」と決意。
 このことは、集落の8月23日のお祭りで、全世帯(在住組+不在地主2人)が集まったところで、この問題に関心のもつ弁護士も来てくれたことで、全員が改めて話し合うと「ここを残土で埋めたら大変なことになる」「あの不動産屋はひどい」との言葉が飛び交い、全員が「売るつもりはない」と表明。
 ただし、全員といっても、集落の地区長だけが葬儀で欠席だったため、本決定ではなく、仮決定ですが、地区長はそもそもリニア凍結を主張している人なので、それが総意とみていいでしょう。

 JR東海とこの不動産業者が結託しているとはいいませんが、こんな怪しい動きは今後あちこちで出てくるのだと想像します。

●現実問題をどうする
 とはいえ、土地を売らないと決めても、問題がなくなったわけではなく、この地区では、56万立米が排出される残土の運搬車が一日240台走ると予想されています。
 そもそも、非常口のトンネル建設は、地下水脈を断ち切ることであるので、飯野さんらは沢水の枯渇をとても心配しています。
 ですから、牧馬では「非常口を違う場所に建設せよ」と14年秋にJR東海と相模原市に要請しているわけです。

 水枯れについては、事業説明会で、JR東海はその可能性を認めています。だが、飯野さんが自宅近くに住むおばあさんの代理として「沢が枯れないという文書での約束を書いてほしい」とJR東海に要請したところ、「無理です」。
 牧馬では、評価書などに書かれている「影響は少ないと予測する」を信じている人は誰もいない。

 次回は、この牧馬のあたりに生息する絶滅危惧種などについて、簡単に書いてみます。

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