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●リニアが『見える』地上走行、そして変電施設。神奈川県相模原市緑区小倉地区

 小倉地区は、リニア本線が地上走行し、かつ変電施設が建設される地域。対象面積は約5ha。
 その建設のために、この地区一帯は10メートルの盛り土をされ、おそらく10世帯以上が立退き対象になります。
 なお、この地域では、異常時対応のため、路線の一部(170メートル)をフードではなく、屋根のない防音壁だけの区間を造ります。ただし、屋根がないと積雪の可能性があるため、散水消雪設備を作るとのこと。

 本線は相模川に架ける新しい橋を通過し、相模川に曲がりくねながら合流する支流の串川を2回横切ります。アルファベットの「N」でいえば、一番右の縦線が相模川。左の縦線と斜め線が串川。つまり、本線はこの狭い土地で河川の上を3本走るということです。
 串川は、かつては、カワセミやヤマセミも多数みられ、鹿も川を飛んで向こう岸にまで渡ったほど、小さいがとても静かな落ち着く川です。私が訪れた時も、どこかの若者たちが河原でバーベキューを楽しんでいました。
 だがリニア工事のため、この串川の脇に幅5メートルの道路を建設し、高さ5メートルの擁壁を建設し、10メートルの盛り土をする。この静かな光景は失われることになります。

盛り土予定地写真奥に横に見えるのが串川。この小川の脇に5メートルの道路を造り、撮影地点までの高さ約10メートルを盛り土で覆う。串川は一日中、日陰?

小倉地区での建設予定地図JR東海の資料。小倉地区。曲がりくねる串川が相模川に合流。赤い点線が変電施設建設のための測量予定地。黄色がリニア本線。赤い点線の枠の右半分が屋根のない区間。

 さて、この地区でも、4月に「中心線測量を開始します」との回覧が回ってきましたが、住民は、JR東海から納得のいく回答をもらっていないとして、その実施を認めていないため、測量はまだ始まっていないようです。建設地に資材置き場をもつ高橋さん(工務店経営)にはわからないことだらけです。

「一番困るのは、ここの土地は元々売れない場所です。なかには、歳とったので売れればいい、という人もいますが、売る売らないは個人的なことなので、果たして何人が買収に応じるかはなんとも判りません。ただ、JR東海はあくまでも時価でしか買わないと言うんです。となると、立ち退いたとしても、新しい土地の値段はここの倍以上はしますから、今と同じ条件で生活できないんですよ。私は次男坊ですが、本家からやっと分けてもらった土地でここで事業をしてきたんです。それを今さらなくせって言われてもねえ」

高橋さんの資材置き場高橋さんの資材置き場

 小倉地区では、14年11月までに、市、自治会、JR東海で校正する懇談会を8回開催。「自治会」とあるように、一般住民は参加できず、懇談会のあとで自治会役員が整理した懇談会の内容が地域に回覧され、それに住民が意見を出すというシステムになっています。
 そのやりとりで明らかにされたのは以下のことです。

●騒音
 一部、屋根がない防音壁区間では、路線中心から約160メートルでも、騒音レベルは77デシベル。そのため、同区間の南側に防音林や防音壁の設置を検討している。
 住宅への騒音対策として「個別家屋対策」も検討している(防音窓のこと?)

●日照権の軽視
 14年5月の第5回懇談会で、リニアの高架橋による日照阻害が「受忍の範囲」に該当するのか不明だったため、その後、JR東海は判例を調べ、「日照阻害については、日陰蔭時間が何時間だから『受忍の範囲』を超えているとの判例はない。そのため、日照阻害に係る損害は、国土交通省が定める基準で補償する。従って、日照阻害に伴う用地買収は行わない」と説明。
 簡単に言うと、高架橋で日陰になるからといって、我慢できないものではない。だから、「日陰になる家には住みたくない。買い取ってくれ」との要請があっても、その土地・家屋は買収しない。だが、国交省の基準で補償する・・ということです。でも、確か国交省の基準で最長で30年の補償ではなかったかな。
 ちなみに、補償とは、日陰になることで必要となる、照明、暖房、乾燥機等の電気・ガス代などを意味します。

 この説明に自治会は「買収に応じるべきだ。相模原市の考えをお聞きしたい」と市に意見を求めると、市は「地権者の意向を確認したうえで、JR東海に対して柔軟な対応を求めたいと思います」と回答するにとどまっています。

●残地補償をする、しない?
 リニア本線や変電施設の建設地が明確になると、自分の土地や家屋で買収対象になる場所と対象外の場所が出てくる。この対象外の場所も買収してくれるのか?
 これについて、JR東海は「買収しない」。神奈川県は「JR東海は買収すると聞いている」。どちらだ。

 自治会としては、反対というよりは、自分たちが納得できる話し合いをしたいというスタンスですが、見方を変えれば、JR東海に真摯な態度が見られなければ話し合いに応じないということでもあります。
 たとえば、建設予定地に入るのに使われている河原橋という小さな橋は、老朽化し、大型車両も通れないので、JR東海に付け替えを要求していますが、無回答。
 今年4月10日の自治会の定期総会で「自分たちの要望に回答がないのに話が進むのはおかしい。答えがあるまでJRに対して話を進めない」との総意から、自治体とは別に「小倉地区対策委員会」が結成されることになります。これは、自治会役員や老人会などでの役職ある人で構成され、JR東海に要望を出していくというもの。

 JR東海の回答内容によっては、今後予定されている用地説明会や用地測量などの段階で、住民から何かしらの対処を行う・・。そういう住民の姿勢についての認識をJR東海がもつかどうかは今後の話です。


●あてにならない観光地化への思惑
 同じ相模原市緑区の鳥屋地区では、50haという車両基地が建設されるため、住民のなかには、リニアの見学者が増えて地域活性の起爆剤になると考えている人もいますが、地面から高さ30メートルの場所に建設される車両基地をどうやって見学しろというのでしょう。よしんば、山の中腹にそんな見学場所を設置するとしても誰が建設費を出すのでしょう。
 山梨県の実験線には車両基地がありますが、観光客はリニア見学センターに足は運びますが、車両基地に行くのはよっぽどのマニアだけです。

 同じような発想が小倉地区でもあるようで、一部住民は、「屋根の空いている区間で、走っているリニアを見学できる滅多にない場所。人が集まる」と声を上げているようですが、たとえば時速500キロで走っているリニアが長さ170メートルの区間を通過するのは約1.2秒です。当初は1時間に5本しか走らないリニア。確かに、鉄道写真マニアならば来ることでしょう。でも、その撮影ポイントがあるのかどうかはまだわかりません。
 仮に人が来たって、儲かるのは近くにあるセブンイレブンだけ。

 リニアに関しては、お役所にも一部住民にも皮算用で期待する人がいる。
 やはり、絶対に動かしがたい、JR東海が公に記載したこと(評価書の不備)、計算した数字や予想完成図などを基に考えてもらうことが必要なのではと思っています。 それは、リニア期待派だけではなく、反対派でも同じです。

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