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 8月15日。東京都の「東京仕事センター」で、日本ジャーナリスト会議(JCJ)主催の第58回JCJ賞授賞式が行われました。
 200人の会場は立ち見も出て、入れない人たちは廊下からも見ていたようです。

 JCJは戦争を忘れまじと、毎年8月に「8月集会」を開催していますが、そのなかの核となるプログラムとして「JCJ賞授賞式」があります。今回の受賞者は以下の通り。

<JCJ大賞>琉球新報 「『普天間・辺野古問題』を中心にこの国の民主主義を問う一連の報道キャンペーン」

<JCJ賞>
・北海道新聞佐竹直子記者「獄中メモは問う 北海道綴方教育連盟事件」
・東京新聞「3憲法学者の『違憲』明言スクープはじめ一連の安倍政権追及報道」
・樫田秀樹氏「“悪夢の超特急”リニア中央新幹線」(旬報社)
・眞並恭介氏「牛と土?福島、3・11その後。」(集英社)
・TBSサンデーモーニング

<JCJ特別賞>
・松田浩氏の長年にわたるジャーナリズム実践・研究活動への貢献

 
 どの人もとても魅力的でした。
 フリーランサーとして受賞したのは、私と、原発事故のあと牛への安楽死命令に背いて牛を生かし続けている人たちを追いかけている眞並恭介さんの二人だけでしたが、じつは、北海道新聞の佐竹直子記者も立場的にはそれに近いものがあります。
 それを知ったのは佐竹さんの受賞スピーチでです。

 佐竹さんのスピーチは、アクション+シャウトの連続で、「この人、芸人か!」と思ったほどですが、あとの二次会で尋ねたところ、「スピーチは私が5番目でしたが、前の人あたりから客席の集中力がゆるくなるのを感じました。ここは、みんなを目覚めさせねばと、叫んだ次第です。なんといっても、最後にスピーチする琉球新報さんにまでは集中を維持したいなと」との理由でした。
 
 佐竹さんのスピーチは、このサイトの52分54秒から始まっています。

 佐竹記者は名刺上は北海道新聞の記者ですが、実際は、その契約会社の記者であり、記事も北海道東部の釧路市の周辺区域に載るだけです。
 2年前、終戦企画で取材した元教員が、取材が終わった時に、ふと佐竹さんに「私の一番深い傷は、尊敬していた先輩がある日突然学校から姿を消し、二度と現れなかったことです」との言葉をかけた。
 これが「記者の勘」にひっかかり、佐竹さんはその関係者を訪ね、そこの書庫で資料を探すと、あった。70年以上も前に書かれた「獄中メモ」が。
 触っただけでボロボロになりそうな32ページのメモは、小さな旧字体の文字がびっしりと書かれ判読不能。わずかに読み取れたのは「警察」「叩く。ける。座らせる。脅かす。そのうち自分も妙な気持になり、手記を直され、教えられているうちに『赤く』なっていた」だけ。
 1940年から41年にかけて、生徒たちに生活のありのままを書かせる「綴り方教室」を行っていた道内の50人以上の教師が、ある日、治安維持法違反で逮捕。このうち、執行猶予つきの懲罰刑を受けた元教員が残したのが「獄中メモ」でした。
 教員たちが逮捕された理由とされる、生徒が書いた作文はたわいのないもの。

 佐竹さんの本には、たとえば、こどもの兄弟で納豆売りをして小銭を稼ぐ話が紹介されている。
 それが、「児童に資本主義社会の矛盾を自覚させ、階級意識を醸成した」との理由で、教師たちは逮捕されていったのです。

 佐竹さんは「これは歴史に残さなければならない」と、旧字体の専門家に判読を依頼するが「読めない」と断られる。そこで、「じゃ、私が解読する」と、じつに2か月半もの時間をかけてやり遂げたのです。そこには、特高から暴力や脅しで自白を強いられ、裁判らしい裁判を受けられなかったことが記録されていました。

 解読直後に、北海道新聞(釧路版)では佐竹さんの連載を開始。当初4回連載の予定が、読者の「終わるな!」の声に押され、31回までの連載となり、それを加筆・再構成したのが「獄中メモは問う」(北海道新聞社)です。
 連載開始時の13年11月は、特定秘密保護法案の国会審議時期。本を上梓した14年12月は同法の運用開始の時期。そして、JCJ賞が発表された今年7月は、安保関連法案が衆議院で可決されたとき。
 JCJ賞の授賞式で、このくだりになった時、佐竹さんは力強く訴えましたーー「これは偶然ではないと思います。戦時下で教壇を追われた先生たちが『あんた、一日も早く、こんな作文教育が弾圧されることが繰り返されてはいけないと言ってくれ』と頼まれたのだと思います」

 また、「獄中メモは問う」はこれまで3刷りで5000部を売っているのですが、これも二次会で皆が「すごい。よく売れていますね」と言うと、佐竹さんは「売れているんではなくて、売っているんです!」。
 なんと佐竹さんは札幌などに行くときは事前に書店にアポを入れ、自ら営業活動を行い、本を平積みするように交渉しているのでした。
 それでいて、佐竹さんに入ってくる印税はゼロ。つまり、北海道新聞の連載を書籍化したものであるから、印税は北海道新聞に入るわけです(私は折半すべきだと思う)。
 それでも佐竹さんが腐らずに営業を行うのは「一人でも多くに読んでほしい」との熱意によるものです。私も読みました。一気に読みました。
 取材期間1年半。取材人数は全国に100人以上。まさに一記者の執念で、70年以上前の獄中メモに導かれるままに完成した一冊です。

 佐竹さんの言葉ではないですが、安保関連法案が話し合われている今だからこそ、この本は読む意味があると思います。
 初めは、国体の変革や私有財産制度の否認が目的に制定された治安維持法が、徐々に芸術や文化、教育までを処罰の対象とした過去は、将来への暗示だとも思えます。

←獄中メモは問う。1400円+税。久しぶりに読んだ、記者の執念が生んだ一冊。戦前の治安維持法が具体的に誰を苦しめたのかも、どういう国体を作ろうとしていたのかもわかるだけに、恐怖する。繰り返してはいけないと肌からわかる本。

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2015/08/19 23:18 戦争 TB(0) コメント(0)
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