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 少し遅れましたが、5月下旬のことを今書きます。

 私は北海道釧路市に在住の弁護士を取材していました。

 釧路。

 横浜市在住の私が、わざわざ釧路市にまで行かねばならなかったのは、釧路特有の事件があったからではありません。全国どこにでもある問題なのに、その問題を真剣に扱っている弁護士が釧路にしかいないからです。

 以前、日本学生支援機構(旧・日本育英会)から借りた奨学金を返せなくなった人たちのことを書きましたが、今の制度を簡単に書けば、まず、

●3ヶ月連続で奨学金の返還を怠ると、その人は、個人信用情報機関に登録されます。いわゆるブラックリストに載るわけです。
 そういう人たちが、今年5月の時点で約4500人います(文部科学省からの聞き取り)。

●それでも滞納を続けると、4ヶ月目から、機構は、返還を債権回収会社(サービサー)に委託します。
 つまり、4ヶ月目になると、サービサーから「回収の委託を受けました。滞納が解消するまでお相手をさせていただきます」との文書が来るわけです。
 
●そして、それでも払わないと、つまり9ヶ月以上も滞納すると、機構は、地元の簡易裁判所などに、支払い督促の申し立てをし、裁判所は、当事者に「支払い督促」を発行します。簡単に言えば「元本xx万円と延滞金xx万円と利息xx万円の計xx万円を一括で払いなさい」との命令です。

 今回、釧路で聞いたのは、その裁判所からの支払い督促にびっくりして、急いで裁判所に出頭したら、なんと、その場でたったの15分で「機構からの和解案」を受け入れることとの決定を出された事例です。

 仮に、この人をAさんとでもしておきましょう。
 Aさんは、奨学金を借りていましたが、さまざまな事情で返せなくなりました。
 そしてある日、裁判所から、以下の額を一括で支払えとの「支払い督促」が来たのです。

 借りた元本の残高は256万5000円。
 これに対する延滞金は76万5000円。
 支払い督促申立手続き費用が1万2000円。 合計334万2000円。

 ちなみに「延滞金」とは、奨学金の返還をしなかったとき、その年に返すべき返還額の10%を「罰金」として徴収するお金のこと。

 いずれにせよ、返せないから、これだけの債務が残ったのに対し、「一括」では払えません。

 ●まず、Aさんはこの件を無料弁護士相談で相談すると「機構はサラ金みたいな取立てはしない。きちんと裁判所で双方話し合えばいい。ともかく、出頭しないで、さらに不払いが続くと財産没収のような強制執行されるので出頭したほうがいい」とのアドバイスを受け(これはひどいアドバイスです)、Aさんは、裁判所に、機構側の弁護士とともに出頭します。

 ●機構はすでに「和解案」を用意していました。しかし、Aさんは、今の自分では延滞金は払えない。分割しても難しいと訴えたのですが、話し合いをとりもつ裁判官から告げられたのですーー「もう判決出します。あなたのもち時間は15分しかありませんので」

 ●結局、出された判決は、機構の和解案を受け入れること。これを受け入れないと強制執行になるので、Aさんは泣く泣く受け入れるしかありませんでした。

 ●その和解案もひどいものです。
  334万2000円を

 ★毎月3000円を半年間 ついで
 ★毎月5000円を半年間 ついで
 ★毎月1万円を1年間 ついで
 ★毎月2万円を1年間 ついで
 ★毎月2万5000円を9年9ヶ月 そして最後に
 ★9000円を一回払う

 というものです。

 釧路の弁護者は「この案ではこの人は破産するかもしれない」と嘆いていました。
 この和解案が決まってから、弁護士に相談があったので、もうどうすることもできなかったのです。

 「特定調停」という制度があります。
 これは、多重債務などに悩む人たちが、裁判所で、お金を貸してくれた業者と話し合い、債務を一本化したり、返済を長期化したりして、できるだけ負担の少ない返済を話し合うものです。

 特定調停ではおおむね3年以内で返済できるよう、裁判所の調停員が返済計画を立てて金融会社などと交渉してくれます。たいていの場合、特定調停が始まると、それ以後の利息の徴収はなくなります。支払いが楽になる制度です。

 つまり、今回の機構と裁判所による「取立て」はサラ金以上にひどいものであることがわかります。

 なお、この件は、某月刊誌で書く予定なので、詳しくはそちらに回したいと思います。そのときにはまたお伝えします。

 最後にこの数字にはぞっとします。機構が支払い督促を申し立てた件数です。

●2004年度  58件(この年に、日本育英会は日本学生支援機構に衣替えをした)
●2008年度 1504件
●2009年度 4233件

 こうやって訴えられた人の中には、もちろん「返さない」不埒な人もいるのでしょう。だが「返せない人」もいる。この人たちは訴えられたあと、いったいどんな道を歩いているのでしょう。

 日本という国が国民を大切にする哲学があるのか? この問題はその根本を突きつけています。

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2011/06/10 00:19 奨学金 TB(0) コメント(0)
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