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 これまで2回、阪神淡路大震災における県外避難者の問題を書いてきました。
 ここで書いたことは、今回の地震+津波+原発事故による県外避難でも既に起こっていることかもしれません。だからこそ、できるだけ多くの方に、その対処について考えていただきたいのです。なぜなら、県外避難者は私たちのすぐ身近にいるからです。

 2年。

 県外避難者が出身地に戻れるかどうかは、この期間にかかっています。
 これを過ぎると、高齢者は新しい土地で正式に福祉を受けるため、若い人は仕事をするために、帰郷を諦めざるを得ないのです。小さいお子さんなら、2年もたつと多くの友人ができるのでますます離れにくくなります。
 
 自治体に求められるのは、これら県外避難者を「いつでも」「速やかに」帰してあげる具体的な支援策です。
 ところが、阪神大震災の時にはこれがなかった。
 理由は簡単です。日本の自治体は「属地主義」に縛られているからです。

 属地主義。

 これは簡単に書けば、「県や市の金を県の外では使えない」という自治体の根幹政策です。つまり、県や市町村の外に出て行った人は「住民ではない」から、自治体のサービスは受けられないということです。

 自治体職員が今回の震災+津波のあとの復旧にどれほど努力しているかは頭が下がります。そんな優しい職員たちも、属地主義のなかでは、同胞たちの帰郷を阻害せざるを得ないのです。

 前置きが長くなりました。
 本日は、県外に出たが、帰郷した人たちのことを書きます。

 県外に出た人が帰郷するにはいくつかのパターンがありますが、阪神大震災のときで言えば

●誰も行きたがならない姥捨て山のような仮設住宅に当選した
●自費でアパートやマンションを借りた(つまり、低所得者層はこれが無理)
●何度も何十回も申し込んでようやく市営住宅などに当選する(仮設住宅の人はすぐに入居できる)。

 などです。

 そして、これら帰郷を果たした人たちが元の生活に戻ったかというと、答えは多くの場合でNOです。
 一言で言えば「浦島太郎」状態に置かれるのです。

 確かに同じ住所なのに、そこにはまったく違う建物(復興住宅という高層マンションや新築アパートなど)が建っている。まったく知らない人たちが住んでいる。誰も私を知らないの? と。

 高齢女性の森下さん(仮名)が、神戸に戻ってみると、震災前に毎日井戸端会議を重ねていた地域は既に消失し、周りは殆どが知らない人ばかりになっていました。
「まさか、生まれ故郷での孤独を味わうなんて思ってもいませんでした。なんで神戸に帰ってきたんかと思うときあります。大阪では孤独を孤独と割り切れたけど、ここでは割り切れませんわ」

 太田貞子さん(仮名。2000年で82歳)は、岡山県に夫婦で避難していたのですが、帰郷を前に97年1月、夫が死去しました。同年9月、市営住宅に当選した太田さんは一人で帰郷するのですが、せめて自分を慰めてくれると思っていた故郷では、もう自分を知っている人は誰もいなかったのです。
 太田さんの元には週に2回、ホームヘルパーが訪ねてくるだけ。話し相手のいない張りのない毎日。気力が衰えると体力も落ちる。

「もう料理も自分ではできません。納豆を食べるくらいです。風呂も自分で沸かせません。今やりたいことですか? 希望も何もありません。不自由なだけです。早く、早く主人が迎えにきてくれないかとそれだけを考えています」

 高齢者は、県内に留まり、避難所→仮設住宅→市営住宅や復興住宅と住居を変えた人もいれば、避難所→県外→帰郷と戻ってきた人もいます。 どちらの場合も、待ち受けていたのは孤独だったのです。
 
 ある仮設住宅の自治会副会長をしていたAさんは「行政は同じ失敗を二度犯したんです。避難所から仮設住宅への移動で地域社会が崩れ、仮設から復興住宅への移動で、仮設でできた共同体もまた崩れたんです」と語ります。

 県外避難者の場合は、避難所を出て県外に逃れた直後から孤独が始まり、すぐに帰れると思っていた故郷に帰れないという現実に襲われました。 

 今回の震災での仮設住宅ではその点が考慮されている自治体もあるようですが、県外避難者についてはどれだけ考慮されているのかはまだわかりません。
 いずれにせよ、「属地主義」がある限りは、大きな進展は望めません。

 私は神戸市で何度か、ボランティアの人たちが一人暮らしの高齢者を回るのに同行したことがありますが、多くの人が「話し相手おらへん」と、鉄の扉の向こうで必死に孤独に耐えていました。

 もちろん、神戸市は都市型の災害なのでどうしても開発と同時に高齢者の孤独の度合いが深まる素地はあった。逆に言えば、今回の多くの被災地の多くは集落なので、神戸ほどの孤独が待っているとは断言できない、またそう願いたいのですが、いずれにせよ、自治体が豊かな地域を復興させるためのどういう青写真を描くかが課題です。そして、それは自治体任せではなく、多くの市民や市民団体も声を上げていかねばならないことです。
 
 最後に、阪神大震災の県外避難者には、5年以上経っても帰郷を望む人がいますが、彼らを支援するNPOですら「2年を過ぎたらもう諦めたほうがいい」と薦めます。どういう結果が待ち受けているかを知っているからです。
 
 大雑把なまとめ方ですが、やはりここは、それぞれの自治体の判断だけではなく、国も速やかな帰郷支援策を打ち出すべきです。

 既に3ヶ月が経ちます。2年にはあと1年9ヶ月です。

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2011/06/06 21:46 東日本大震災 TB(0) コメント(0)
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