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●「会津電力」

 という電力会社があります。
 設立は昨年8月。社員数は役員も入れて9人。5人の役員はいまだに無給の小さな会社です。
 
 ここが、今月10月29日に、昨年から建設を進めていた、合計2・5メガワット(約700世帯分)の太陽光発電所の竣工式と発電を開始します。
 一番大きな発電所は、約2ヘクタールの山の斜面に設置した3740枚の太陽光パネルを敷き詰めた約1メガワットの「雄国(おぐに)発電所」(福島県喜多方市)。
 他は、エネルギーの地産地消を実現するため、数十キロワットという小さな発電所を福島県内の約20カ所に設置しています。

メガソーラー「雄国発電所」。会津電力の折笠さん。 ← メガソーラーを前に常務の折笠さん。3.11までは居酒屋経営者だったが、価値観ががらりと変わり電力事業に参入した。

高さ2・5メートル。この高さなら雑草も平気。またこの角度なら雪も下に落ちる設計。 ← 北国で太陽光発電は無理と言われるが、会津電力では、高さ2・5メートルにすることで雑草の管理を不要とし、この角度でパネルから雪が落ちるように設計した。

●原発爆発で「商売終わった!」

 喜多方といえば、蔵とラーメンで有名な街ですが、逆に言えば、蔵とラーメンをセットにして観光ブームに火を付けたのですが、その火つけ人は、江戸時代から224年も続く酒蔵の「大和川酒造社」の佐藤弥右衛門(やうえもん)会長。
 そして、この佐藤会長こそが、会津電力を設立した人です。

佐藤弥右衛門さん ← 暖簾を前に。佐藤弥右衛門さん。

 そのきっかけは、3.11後の原発爆発。
 喜多方市は福島県西部にあるため、地震の被害は少なく、また放射線値もそれほど高くはないのに、爆発のニュースを聞いたとき、佐藤会長は「商売終わった!」と思ったそうです。というのは、大和川酒造は、全国の酒蔵で唯一、自社の酒米を100%栽培している酒蔵であるからです。しかも、減農薬と無農薬で。そして、仕込みの水も飯豊山脈からの伏流水を使用。
 このこだわりで、代表的銘柄の「弥右衛門」は全国品評会で何度も金賞を受賞してきました。

銘柄「弥右衛門」 ← 代表的銘柄「弥右衛門」

伏流水← 大和川酒造の酒蔵のすぐ脇を飯豊山地からの伏流水が湧いていた。まろやかな水。うまかった。

 ところが、あの爆発で、世間一般は、福島の水も土も汚染された!と捉え、実際、大和川酒造にはあの3月には一本の注文も入りませんでした(今は回復)。

●東電に任せっぱなしだった自分達にも責任がある

 佐藤会長は当初は、「安全ですと嘘をつき続けてきた東電と国は許せない」と憤ります。
 そして、同じような思いを抱いている県民を集めてのシンポジウム「ふくしま会議」をその年の11月11日から開催。これには1000人超が参加し、今後の福島をどうしていったらいいのかの意見を出しあうのですが、そこで出された意見で共通していたのが「でも、やはり電気は必要だ」、「電気を電力会社任せにしていた自分達にも責任はある」ということでした。

 佐藤会長は「僕はそれまでは、水や食糧のことは深く考えてきたけれど、エネルギーは考えていなかったと気づいた。ならば、自分たちで責任のある電気を作ろう」と決めます。
 この思いに同調した人が集まり設立されたのが会津電力です。
 佐藤会長は、ここでは社長として就任します(ただしまだ無給)。

 経産省からの助成金、地元の信金と信組からの融資、そして市民ファンド(一口20万円のファンドで、1億円が3カ月で集まった)で事業は順調に進み、冒頭で書いた通り、今月29日に竣工式を迎えるのですが、「東北電力はとてもよく協力してくれた」と会津電力の社員は振り返ります。

●10年後には福島県の全電力をカバーする! ところが…

 そして、会津電力の夢は、10年後には、福島全域をカバーする190万キロワットもの発電を自分たちで管理することです。

 これを語る時の佐藤社長の言葉には力が湧いてきます。

「10年後の目標? まあ、大風呂敷(笑)。何千億円もの話ですから。でも、夢をもつのは必要だよ。まず、夢をどーんと表明すること。その実現のために、自らの行動が変わっていくんだから。リスクを考えていたら何も動けない。一つの組織に誰かノーテンキがいないとね。俺? そうだね(笑)。会津電力では、みんな俺と同じ気持ちなのが分かる。楽しいよ、この仕事は」

 じつは、この会津電力のこと、本日(10月6日)発売の週刊プレイボーイに書いたので、ここではまだ詳細は書けません。是非、書店で手に取ってみてください。

 この取材から帰宅したのは10月25日。ああ、いい取材だったと、その日の朝刊を何気に手に取ると、そこにはびっくりの曇天返しが。こう書かれていたのです。

九州電力が二十五日、太陽光などでつくった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく契約の受け付けを、一般家庭用を除き九州のほぼ全域で中断した。東北電力の海輪誠(かいわまこと)社長もこの日、契約受け付けの中断を検討する方針を表明。」

 なんだ、これは!

 急いで、会津電力に電話すると「私たちも東北電力から文書を受け取ったばかりでびっくりしています。ただし、まだ『検討』の段階なので、これから話し合います」

 じつは、この時点で、プレイボーイへの記事は印刷に回さねばならず、会津電力のこのコメントを最後に記事の掲載となりました。

 しかし!

 9月30日。東北電力は、再生可能エネルギーの買い入れの中止を『検討』ではなく、『方針』と決定したことを発表。

 そして、会津電力から私に連絡が入りました。

当社の来年度の事業が見直しとなってしましい、大変大きな影響を受けております

 今後のことは、社内で話し合って決めるようですが、とても残念なできごとです。
 2016年の電力自由化を受けて、会津電力も「pps」(新電力会社)として一般家庭に電力を送る事業を始める予定でした。それにも暗雲が覆いかぶさろうとしているのです。

 そもそも法律上、大手電力会社は、再生可能エネルギーの買い取り希望にはすべて応じなければなりません。
 ただし、「再生可能エネルギーの申し込みの急増によって送電網の容量を超えてしまうなど、電力の円滑な供給に支障が生じる恐れがある」場合は、買い取る電力量の上限を設定できるのです。
 今回、九州電力、北海道電力、四国電力、東北電力は、「一時的に管内の電力需要を上回る可能性があるから」「どこまで再生可能エネルギーが受け入れ可能かを見極めるため」との理由で、連鎖的に再生可能エネルギーの売買契約を中断することを決めました。
 
 これはまったくもっておかしなことです。
 出力調整のできない原発の電気は流しっぱなしにしておきながら、再生可能エネルギーのときだけ『円滑な供給云々』を言い出すのは。

 会津電力は、市民運動の世界で見られがちなモデル作りだけにとどまらず、本気で県内の電力需要を、太陽光、小水力、地熱、風力、木質バイオマスなどで長期的に実現することを考えているのです。
 福島で芽生えたこの火を消すことがあってはならない。そう考えています。


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2014/10/07 00:39 福島原発 TB(0) コメント(0)
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