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 「地平線会議」で、原発事故での「計画的避難区域」に指定されている飯舘村のことを話しました。

 「地平線会議」とは何ぞや? ということですが、別に形がガシと固まった組織ではありません。言うならば、世界や日本のあちこちでいろいろな体験をしてきた人たちが集う場です。

 いろいろな体験。まさにいろいろです。

 オートバイや自転車での世界旅行、ゲリラ組織への従軍、ヒマラヤに通い続ける人、年金で世界中を放浪する人、各地の先住民と一緒に暮らす人、NPO活動などをしてきたひと、恐竜発掘に賭ける人、世界中の川下りをしている人、砂漠に木を植える人等々。

 地平線会議は1979年8月にスタートしましたが、その基軸となる活動は、月に一度、それら体験者の誰かに報告会をしてもらうことです。
 参加は誰でも自由で、受付で500円を払うだけです。今のところ、東京都新宿区の新宿スポーツセンター(JR高田馬場駅から徒歩10分)で第4か第5金曜日の18時30分からやっています。詳細は「地平線会議」のHPをご覧ください。

 私がこれに参加したのは1981年のまだ学生時代で、世の中にはこんなケッタイな生き方をする人たちがいるんだと、月に一度の報告会を楽しみにしていたものです。という私も、その参加前に真夏のサハラ砂漠をオートバイで走っていて、卒業後も就職せずにまたオートバイでオーストラリアなどを走っていたので、学生仲間からは「お前、将来大丈夫か?」とずいぶん心配されたものです。

 地平線会議に参加してよかったのは「どんな生き方をしてもいい」ということを学んだことでした。
 当時は学生・・とはいえ、私は岩手大学という地方の大学生であり、そんな地方で、学校を半年間休んでオートバイでアフリカに行くのは、周囲にはけっこう特異な生き方として映っていたようです。

 ですが、地平線会議に来ると、そんな人間がゴロゴロいる。そして、学生時代に限らず、社会人になっても自分の好きなことをやり続けている先輩たちがいるのは、私にとって幸いなことでした。

 私がオーストラリアの砂漠のオートバイの旅から戻り、借金した旅行資金を返すためにやむなく会社勤めしたときは「なーんだ。会社勤めか。お前ももう終わりだな!」と冗談とも本気ともつかない言葉が地平線会議の面々から寄せられ、1年半後にその会社を辞め、NPOの一員として、アフリカのソマリアの砂漠の中の難民キャンプで活動することを決めたときは、みんなが退職を喜んでくれました。「そうだよ、樫田君。それでなくっちゃいけないよ!」
 そういうことでは、ヘンな集まりなのでしょう。

 もっとも、地平線会議にはサラリーマンも数多くいます。なかには、休日を利用してカヌーで日本の沿岸を1週した人。走って日本を縦断した人。はたまた、長期休暇を取って海外にまで気球に乗りに行った人など様々です。労働形態はどうあれ、自分のやりたいことをやる。これを地平線会議からは学んだように思います。

 前置きが長くなりました。
 先月、そして今月と地平線会議では、大震災と津波の被害、そして原発被害に関する報告会を実施したのです。
 原発正門前まで行ったジャーナリスト、野良と化した犬猫を救う活動家、地震翌日に「放射能漏れです。直ちに南に避難を」の防災無線でとにかく逃げたいわき市民、ガレキ撤去などを行う市民活動等々。

 昨日の報告会では私がトップバッターとして、飯舘村で見聞きしてきたことを語りました。
 それはこのブログで既に書いてあるので、繰り返しませんが、最新情報で言うと、昨日は5月27日ですから、当初言われていた「5月末までの全村非難」までは4日間しかないわけです。当然、世間一般ではもうほとんどの避難が終わっていると思われがちですが、まだ半分以上の人口が村に残っています。

 いろいろな理由があります。
 ●村が避難先を人口の半分以下の2700人分しか用意していないこと。
 ●避難するにも引越し代がかかります。通常何十万円もかかりますが、その余裕のない世帯は引っ越せない。東電の仮払い賠償金100万円だってまだ支払われていないので動けない。
 ●家族内での意見の相違

 また、5月6日のブログにも書いた、飯舘村の酪農家の田中一正さんですが、東電が「補償します」と口先だけで一円も払わないことで、村の酪農部会はとうとう全頭を屠場送りと決めたのですが、実際、田中さんは11日に13頭、24日に3頭を屠場に送りました。
 残る牛は14頭。おそらく、次回の屠場送りで田中さんの牧舎は空っぽになるかもしれません。

 田中さんは、酪農に全てをかけて、この飯舘村に9年半前にIターンしてきた人です。当初は村役場からは「無理に決まってる」と一笑に付されるだけだったのですが、田中さんはとにかく牛舎を開放的(牛をつながない)に、かつ、毎日木材加工業者から毎日もらうオガクズを床に敷き詰めて清潔を保つことで、良質な牛乳を算出していました。村の牛乳品質検査でも毎年最優秀賞を受賞するほどです。

 牛がいなくなった牛舎を見たとき、田中さんは何を思うのか?
 田中さんはこう話しました。
「よく、原発で故郷がなくなるって言うでしょ。でも僕はその故郷をとっくに捨てて、ここに自分の骨を埋める覚悟で移住して酪農に全てをかけてきたんです」

 廃業の迫る田中さんに、国も東電も何もしない。

 
 さて、私がそんな話をした後に、ジャーナリストの恵谷治さんが、25年前のチェルノブイリ事故で近くの町を調査した話を。ついで、子どもたちの漁村体験をコーディネートする「海と漁の体験研究所」主催の大浦佳代さんが被災した漁村の現状報告を、日本中の漁船や漁具を研究してきた森本孝さんが被災地の昔の写真を、そして、宮城県女川町で住職を務める八巻英成さんが、実際に目の当たりにした津波の様子、避難所になったお寺での240人前後の避難生活を語りました。

 八巻さんの言葉はとても印象深かったです。たとえば

「童話の桃太郎では『大きな桃がドンブラコと川を流れてきました』とのくだりがありますが、今回の津波でのドンブラコは家でした。無数の家が、右からも左からも海をドンブラコと漂っていたのです」

「寺の毛布は50枚。避難してきたのは240人なので、4~5人で1枚にくるまってもらい寒い夜を過ごしてもらいました。最初の三日間は、食事は1日に一回だけ。握りこぶし半分のおにぎりと味噌汁少々でした。今だから言えますが、火の燃料には卒塔婆を使いました』

「国や町は今、高台に住宅地を設置しようとしています。でも、漁民は海の見えるところに住まないと、つまり、自分の目で海を見ないと漁ができないんです。今、町が目指しているのは復旧であり復興ではないです」

 私もこの高台案には一理あるとは思いますが、疑問視もしています。
 というのは、阪神大震災の後、神戸市には復興住宅という名の高層マンションがあちこちにできましたが、そこでは、近所付き合いを奪われた高齢者たちが、その寂しさに耐えられず、食事も満足に取らないまま孤独死し、もしくは自死しているのです。同じことが高台プランでは起きないか? 私はこれを怖れています。

 八巻さんは「とにかくこれを風化させたくない。東京周辺の人たちと力を合わせたい」と語りました。

 次回地平線会議は6月24日の予定です。6月も今回と同じテーマでやるようです。

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2011/05/28 22:00 地平線会議 TB(0) コメント(0)
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