リニア、神奈川県の水資源はどうなる？その２

●どこの水源がどんな影響を受けるのか？　→　判らない・・・

　先日の、神奈川県での水資源に対して、ＪＲ東海作成の「環境影響評価書」がどう評価しているかの続きです。

　あまり細かく書くと、理解が難しくなるので、ごく簡単に書きます。

　ＪＲ東海は、評価書で、リニア計画ルート周辺で以下の水資源を現地調査で確認しています。

★観測井戸 　　　　　　　　　　　 　　27カ所
★既設井戸　　　　 　　　　　　　 　　８カ所
★湧水　　　 　　　　　　　 　　　 　　 8カ所
★温泉　　　　　　　　　　　　　　 　13カ所
★飲料用水（浄水場や水道組合など） 12カ所
★農業用水（ポンプ場）　　　　　　　 ２カ所
★工業用水(川崎市）　　 　　　　　 229事業所
（相模原市）　　　　　　　 182事業所
★工業用水道（浄水場）　　　　　　　 ２カ所

　けっこうな数がありますね。

　ところが、評価書では、リニア工事中や工事後において、これら水資源の各々がどんな影響を受けるかとの記述はありません。
　これら水源のすべてをひっくるめて、
、
★水質
★水位

　への「影響がある」か「影響は小さい」かのどちらでしか評価していません。
　たとえば、「切土工等又は既存の工作物の除去および鉄道施設（駅）の存在」からの影響については、要約すれば、

★「公共用水道の水質に係る水資源への影響」は「小さいと予測する」。
★「地下水の水質に係る水資源への影響は」は「小さいと予測する」。
★「地下水の水位に係る水資源への影響」は「小さいと予測する」。

　と書かれているだけです。

　ただし、よく読めば、「影響がある」と記述している項目があります。
　それは、

●山岳部での「トンネルの工事及び鉄道施設（トンネル）の存在」

　によって、

★一部において断層付近の破砕帯等、地質が脆弱な部分を通過することがあり、状況によっては工事中に集中的な湧水が発生する可能性がある。
★破砕帯や土被りの小さい箇所の周辺の一部においては、地下水の水位への影響の可能性はある。

　と書かれているのです。

　しかし、この「一部」とはいったいどこの地域なのか、地下水の水位への影響でどの水源が影響を受けるかの記述は一切ありません。

　そこで評価書に添付されている地図とにらめっこしながら、山岳部での地下水に関連する水資源の場所を確認すると、以下を列記することができます。
　なお距離数は、資料を目見当で読み取っただけの大雑把なものです。

★篠原簡易水道組合（相模原市緑区。リニアルートから2キロ強離れている）
★伏馬田簡易水道組合（相模原市緑区。リニアルートから約500メートル）
★菅井水道組合（相模原市緑区。リニアルートから100メートル前後）
★菅井上水道組合（相模原市緑区。リニアルートから200メートル前後）
★綱子水道組合（相模原市緑区。リニアルートから200メートル前後）
★小舟水道組合（相模原市緑区。リニアルートから１キロ強）

★湧水
　4カ所（いずれも相模原市緑区）
★深層観測井
　7ヶ所（いずれも相模原市緑区。リニアルートのすぐ近く）
★既設の井戸
　8カ所（いずれも相模原市緑区。1カ所は車両基地予定地内）

　ここに挙げたのは、あくまでも、ＪＲ東海が現地調査をしたとする水源のみです。また、そもそも、すべての水資源（特に井戸）を現地調査したのかは、一般住民には分からないところです。
　そしてここでは、ＪＲ東海が文献調査をしたという他の水源については、挙げておりません。そこまで書けばややこしくなるので。

　それにしても、やはり大雑把すぎる評価書です。
　どこの水源がどんな影響を受けるのか。少なくともそれだけは明記すべきです。

悪夢の超特急 リニア中央新幹線 (2014/09/17) 樫田 秀樹 商品詳細を見る １９９９年からリニアに関する住民の動きを広く浅く追ったルポ。実験線周辺では、ＪＲ東海が「枯れない工法を施工する」と表明しても枯れ続ける川や沢。一つの谷間を埋めても用途の決まらない残土置き場。今後も、電磁波、国税投入、原発再稼働、処理できない膨大な残土、水枯れ、朝から晩まで数百台も1,000台以上も走り続ける工事用大型車両、立ち退き問題等々が予測されているが、一番の問題は、賛成派や反対派、慎重派、有識者、自治体、ＪＲ東海などが一堂に会する徹底検証が一度も行われず、「環境への影響は小さい」だけが繰り返され、ほとんどのマスコミは報道を避けているという、原発推進とまったく同じ構図で推進されていることだ。いかに、ＪＲ東海が住民を軽視しているのかも描いている。リニア問題を知る入門書。

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