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●家田仁教授の講演

 1月17日、リニア中央新幹線を軸とした新しい交通網についての、家田仁教授の講演会が神奈川県茅ケ崎市で行われました。

 ご存じのとおり、家田教授は、2011年5月、国がJR東海をリニア中央新幹線の建設主体及び経営主体に指名するに至った根拠となった答申を出した「国土交通省交通政策審議会・中央新幹線小委員会」の会長を務めた人です。

 リニア中央新幹線とは「リニア方式」の「中央新幹線」ということです。

 つまり、小委員会の答申で初めて、中央新幹線の意義が認められ、かつ、それは従来の新幹線ではなくリニア方式でと決まったわけです。

 本来、それは、小委員会の答申のあとに縦覧された同年6月の「環境影響配慮書」において自治体などで話し合われるはずでした。さらに配慮書では、南アルプスを貫通するCルートのほかに、それを回避するAルートとBルートの合計3つのルートを環境アセスしてから、どこが最適かを決定するはずでした。

 ところが、その前に小委員会でそのすべてが決まってしまったため、配慮書での交わされるはずの論議の根幹が外されてしまったのです。これは、日本の環境アセスの悪しき前例と言わねばなりません。


●家田教授への質問
 家田教授の講演そのものは、正直申し上げて、心地よい眠りを誘うものでした。時々ハと起きますが、隣の人も寝ている…。
 いまだに家田教授が新しい交通網の何を話していないかを覚えていないのですが、わかったのは、物事を俯瞰的に見ることには長けていても、地面に降りて家の一軒一軒を小まめに見るミクロの視点が欠けている人だということです。
 ただ、人柄は憎めないと言いますか、アクがなく、どちらかというと親しみやすさを身にまとっています。

家田教授


 家田氏の講演のあと、何人かが質問の手をあげました。

質問1.Aさん
 現在、各地でリニア中央新幹線の環境アセス審査会や公聴会が行われています。神奈川県では合計25人が口述し、全員がリニア計画への懸念を示しました。先生はそれでもリニアを作ったほうがいいとのお考えでしょうか? 環境対策と事故対策とを充実させてからでも遅くはないと思います。
 この計画には国民的無関心が多いのをどう考える?

回答1.
 整備新幹線というものがあります。
 新幹線には、第一ステージとして、東海道新幹線と山陽新幹線があります。これは東海道線のサポートとして作った。
 第2ステージとして、東海道新幹線を模倣して上越新幹線などができた。
 第3ステージとして、客が少ないのに、東北新幹線、北海道新幹線、九州新幹線を作った。これは、すべて税金で作っている(3分の2が国税、3分の1が自治体)。
 
 しかし、いざ開業すると客は増えた。開業前に批判していたA(朝日?)新聞も褒めるようになった。沿線の人も「よかった、よかった」と言っている。

 作る前は「何のために作るのか。採算は合うのか」との批判があったが、作ってみると「うちの子が福岡の大学に通えるようになった」「外国人がわざわざ九州に来るようになった」

 効果のほうはイマジネーションがないとなかなかわからない。
 東海道新幹線だって、建設前は、世界の3バカとマスコミで叩かれ、これからは自動車の時代なのに「あんなもの誰が乗るんだ」と批判された。
 ところが開業すると、翌年から論調が変わった。これはイマジネーションの問題ですね。

 リニアは、東海道新幹線からの収益で賄う。国税を使わない。

 そのリニアで、日本の人口の半分の6000万人が1時間圏内で動けるようになる。
 これは、日本の人口が減っていく中で、今の上海や北京のような活力を維持するためには、東京だけじゃなく、名古屋と大阪と一体となってやる。
 だが、東海道新幹線が切り開いた時代のようになるかといえば、なかなか想像できない。

 それから、名古屋以西について、さっさと工事をすればとの意見もあるが、国税使ってならやれるでしょうけど、どうでしょうかね、あそこの部分、名古屋と大阪にはすでに新幹線ありますからね。

 前半の質問ですが、リニア新幹線特有の問題は、トンネル走行ではなく、磁気浮上につきます。圏央道とか他の鉄道事業と比べて、中央新幹線のほうが環境的な負荷が大きいとは技術的には言えない。
 

質問2 男性。川崎市民。
 中央新幹線も整備新幹線でいいのでは?
 南アルプスに穴を開ける自然破壊をしなくてもいいのでは。
 なぜ、リニア方式でなければならないのか。

回答2. 
 ルートが3候補あった。
 南アルプスを回避して新幹線スピードでは投資効果が薄いと判断した。なるべくスピードが速いほうが投資効果が上がる。
 リニア方式にしたって、新幹線方式にしたって南アルプスに穴は開く。
 
 よくルート選定に悩まれたでしょ? と聞かれますが、悩みませんでした。
 北アルプスと南アルプスとは地質が違う。

 北陸新幹線は北アルプスを貫通せずに曲がりながら金沢に行く。地質が全然違うから北アルプスを貫通しなかった。
 
 悩みどころは、磁気浮上でいくか、通常の新幹線で行くかだった。かつて東海道新幹線を計画した時の悩みと全く同じです。
 東海道新幹線には、いろいろな案があって

 同じ列車を、従来の路線のすぐ横に走らせる複々線にするか、

 これを機に狭いゲージでなく広いゲージでやろうとの案もあれば、

 別ルートにしようかとの案もあった。

 そして、決まったのが、これまでにない広いゲージで別ルート。システムとして独立したものを作った。在来線と直通できない。

 中央新幹線も同じ。すなわち、

 新幹線なら直接乗り入れできる。東京から名古屋までを新幹線方式で行けば、そのまま、同じ幅のゲージを使って大阪までも行ける。

 いろいろな意見があるなかで、東海道新幹線のときだって、そんなものを作ったら脱線して皆死んでしまうと言われていたが、国鉄の技術者だけがいろいろな実験をして工夫をしてめどをたてて、在来線とはまったく独立したものを作った。今だからこそ「よくやった」と言えるが、当時は思い切った決断だった。その経験を1960年代にしたことを思えば、リニアも、今までやってきたものを単純に延ばすだけでいいのか、22世紀にも活躍するシステムをといった議論もおおいにあって、結果としてリニア方式が採用されました。


 これを読んで、お気づきのように、家田教授の意見は、「新しいものに挑戦しないでおいて未来はない」という主張です。
 また、講演では、つい首をかしげたくなる言葉もありました。

 たとえば、北アルプスと南アルプスについて地質が違う。だから南アルプスに穴を開けるとの論理は腑に落ちません。そのとおりであって、地質は違う。南アルプスの地質はもろいのです。しかし、JR東海はろくすっぽ調査もしないで、南アルプスに穴を開けることを決めました。
 そして、家田教授は「そちらのほうが早い」との本当の理由も語っていることから、この脆い地質にはあまり深く議論を交わしてこなかったのでしょう。

 また、そもそも、小委員会にもパブコメで相当多くの反対意見が届いていたはずなのに、小委員会が「投資効果」を主な判断材料にしていたことが判りました。

 南アルプスを回避したとしても、貫通ルートより6~7分時間がかかるだけです。
 この6~7分の違いでは、本当に投資効果も生まれず、地域活性化もしないのか? と家田教授は考えたのか?

 やはり、中央新幹線の是非、リニア方式の是非は「配慮書」で各自治体が討論してほしかったと思います。


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