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樫田秀樹

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 スキージャンプの葛西紀明選手が絶好調です。
 葛西選手の場合、アナウンサーは必ずこう紹介します。

 葛西紀明、41歳。

 40歳を越してもなおもワールドカップの表彰台に何度も立つ。

 調子のいい今だからこそ、日本のメディアも葛西選手に注目していますが、葛西選手は外国に行けば、表彰台を逃しても外国人の記者たちに囲まれます。その理由は「respect(尊敬している)」。

 私が葛西選手を取材したのは10年前。

 以来、私は葛西選手を応援し続けています。

 一つは、スポーツ選手として、年齢とも付き合いながら、あきらめずに精進していること。
 これは、多くのマスコミがすでに書いています。

 そして、もう一つ。
 葛西選手が「母さんのために金メダルを取る」と心に決めていることです。
 以下、10年前にある雑誌に書いた記事に多少の手を加えたものを掲載します。


●オリンピックの時だけ運が逃げる

 スキージャンパー葛西紀明(31)には悲運と不運がつきまとう。
 ワールドカップでは日本人最多タイの14勝を挙げながら、オリンピックだけは個人メダルに手が届かない。

 長野オリンピックの前年に母は非業の死を遂げ、日本中を感動の渦に巻き込んだその団体ジャンプには直前にメンバー落ちし、涙を流し続けた。夢をかけて臨んだ4年後、4度目のオリンピックでも惨敗。だが諦めない。3年後、5度目のオリンピックでは33歳になるが「金メダルを取る」と、葛西は今も夏も冬も飛び続けている。
 
●栄光に包まれて

 1988年3月6日。第59回宮様スキー大会国際競技会で話題になったのは、大会のテストジャンパー葛西紀明の記録が優勝者のそれを上回ったことであった。それがまだ中学3年生との情報は、会場の観客を驚愕させた。
 北海道下川町で生まれた葛西がジャンプを始めたのは小学校3年生のとき。子ども用のジャンプ台を飛んだ初日に、何年も練習している友だちの記録を抜いてしまい、同年、町内大会の小学校3年生の部で優勝した。中学2年から3年にかけての大会では22連勝。

 92年2月、初のアルベルビールオリンピックでは「心臓のドキドキが聞こえる」ほどの緊張で好結果を残せなかったが、翌3月のフライング選手権では、182メートルという最長不倒距離を2度決めて優勝した。

「1メートル20センチのクリスタルカップを表彰台で手にした感激は今も忘れません」

 葛西の今までで一番嬉しい優勝だった。

 その翌年、ワールドカップ総合3位。94年、2度目のリレハンメル・オリンピックでノーマルヒル5位入賞。団体ジャンプは、原田雅彦選手の大失敗ジャンプで目の前の金メダルが逃げていったが銀メダルを獲得。葛西は着々と強くなっていた。だが、このオリンピックを境に苦難の道が始まる。


●悲運と不運

 94年11月、葛西はある大会で転倒し鎖骨を骨折した。手術をするが、来る世界選手権に選ばれるために無理をして1月の大会に臨んだ。すると、また転倒し同じ場所を骨折。以来、葛西の心に、「飛ぶ」ことへの恐怖が植え付けられ、数ヶ月、飛ぼうにも飛べない日が続いた。

「だけど決めたんです。恐怖心を取り除くには、逆療法で飛ぶしかないと」

 葛西は、まずは低い台を利用して飛び始めた。そして、普通の選手が三百本飛べば充分といわれる夏のシーズンに九百本の練習を積む。これが裏目に出た。陸上と筋力トレーニングが疎かになり、飛びすぎた結果、歩けなくなるほどの腰痛に見舞われたのだ。以後2年間、記録らしい記録を出していない。

 そのスランプのなか悲報が襲う。96年、下川町の実家が放火され、母が全身やけどを被い入院を強いられたのだ。炎の熱で肺も気管も焼け、一年かけての皮膚移植の甲斐なく、母は一年後に亡くなる

 自身のスランプと母の悲運。精神的どん底に突き落とされた。

「金メダルを取って、稼いで、家を建ててあげるからねと言っていたのに。貧乏だった家を支えてくれた母さん。貧乏なのにジャンプをやらせてくれた母さん…。何で俺がこんな目にと何度も思いました」

 だが、落ち込む葛西を救い出したのは、その母が書いていた日記や手紙だった。

「母さんは、入院中日記を書いていました。それを読み返すと今も涙が止まりません。母さんは、体の苦しみと死への恐怖と必死に闘っていたんです。それを思えば、僕の苦しみなんてちっぽけなものです」

 今でも、大きな大会の前に、葛西は、母が苦しみの底で書いてくれた便りを読む――「今このときを頑張れ。絶対にお前は世界一になれるから。地獄から這い上がってくるのを楽しみに待っている
 
 葛西の奮起が始まった。そして、97年1月のワールドカップ白馬大会で、葛西は最長不倒距離を叩きだし復活の2位を獲得するのである。移動するリフトの上で葛西は一人で泣いた。自分に、そして母に。


●神様からの試練

 だが、運命は過酷だ。長野オリンピックの2ヵ月前、トレーニング中に足首を捻挫し2週間の入院をしてしまう。そして、葛西は決してそれだけのせいにはしないが、オリンピックでノーマルヒル7位に入賞するも、練習の様子から、コーチの判断でラージヒルと団体のメンバーから外されてしまったのだ。

 日本中を歓喜の渦に巻き込んだ団体戦。そのとき、葛西はホテルの自室で一人悔し涙に暮れていた。テレビには次々と大飛行を展開する日本人選手たちが映っている。1本目終了時に日本は4位。2本目が始まると、葛西は不意に会場に行こうと思った。そして、会場入りしたとたんに目にしたのは、優勝ジャンプを決めた船木和喜選手に駆け寄る日本人選手と歓喜に沸く観客の姿だった。悔しい! なぜ、俺はあそこにいないのか。いたたまれず、葛西は会場をあとにした。

「長野は、初めて個人でも団体でも金メダルを狙った大会だったので、あの悔しさは表現できません」

 それでも、葛西はいつしか自身にこう言い聞かせた――「これは神様がくれた試練だ。次のオリンピックではメダルを取る!」

 母のことを思えば、悔しさは4年後へのバネに過ぎない。前へ前へと進むために、葛西はひたすら国際大会で飛び続け、98年のワールドカップで総合3位、2001年は総合4位と好成績をあげ続けた。

 だが、試練は葛西に報いなかった。絶好調で臨んだ02年の4度目のソルトレークシティ・オリンピックでは、関係者の多くが、何より本人が、金メダルに一番近いと信じて飛んだジャンプは、ノーマルヒルで転倒、ラージヒルは予選落ち、団体はメンバー落ちという最悪の結果で幕を下ろしたのだ。

 葛西の勝敗のパターンは独特だ。ワールドカップや国内大会では表彰台に立っても、2年毎の世界選手権や4年毎のオリンピックの本番になると、とたんに調子を落とす。

「それがなぜなのか。これ以上競技を続けて勝てるのか。何が足りないのか。本当にわからなくなりました」

 頑張っても出なくなった結果。「限界」の二文字が頭をかすめ始めた・・。


●諦めない大切さ

 壁にぶつかった葛西と、所属する「土屋ホーム」とが決めたのは、「これ以上の同じトレーニングはマンネリになる。ジャンプ王国のフィンランドからコーチを招こう」との大胆な試みであった。
 果たして昨年、二人のフィンランド人コーチが来日する。彼らは葛西よりも年下だった。

「初めは少し抵抗ありましたね」(葛西)

 従来のトレーニングと違ったのは、コーチ学に基づいた「リフレッシュ」の導入だ。シーズン開始直前に、川下りや犬橇などで遊び、シーズンオフは二ヵ月近くも一切練習をしないという、頭と体からジャンプのことを完全に取り除く作業である。

「それまでは、どの国際大会も勝ってやれと全試合飛んでいたんですが、その疲れが、オリンピックや世界選手権で出ていたんです。それが今は、体も頭もすっきりした状態で競技に臨めるようになりました」(葛西)

 技術面でも、長年守ってきた飛行フォームを半年かけて改造する指導も受けた。
 その結果は今年2月現れた。葛西はとうとう、ドイツで、世界選手権初のメダル(ノーマルヒルもラージヒルも銅)を獲得したのだ。

「最高でした!」(葛西)

 この結果に、土屋ホームの川本謙社長は、技術だけではなく、葛西の生真面目こそが勝利を呼び込んだと評価する。

「普通、年下の指導なんて受けたくないでしょ。でも葛西は、コーチを年下とかではなく、尊敬すべき人間として指示を受け入れてきた。だから伸びたんです」

 それは、ファンに対しても変わらない。川本は目にしている。葛西が、どの大会でも、他の選手が帰っても、ファンの最後の一人にまで握手とサインを怠らないのを。
 
 葛西は、昨年のオリンピック直前に、それまで所属していた企業が倒産する憂き目に遭うのだが、川本社長が葛西の移籍を受け入れたのは、有名ジャンパーという以外に、お世話になる企業のためにそれまでの金髪を黒に染め直し、倒産企業のスキー部全員一緒の移籍を熱望するなど、他者を思いやる葛西の実直さに感銘を受けたからだ。

 ジャンプが葛西を育てたのか? 葛西は、ジャンプから何を学んでいたのだろう?

「どんなに辛くても諦めないことの大切さです。ですから、長野前後の経験は最高の経験でした。あの苦難があり、多くの人に助けられたから、僕は今も飛び続けているんです」

 取材の最後に、葛西はあらためて母を語った。

僕の家は貧しかったんです。お米も近所から借りるほどでした。母さんは、その家を支え、金のかかるジャンプもやらせてくれた。僕にとっては今でも一番の存在です。母さんのために僕は金メダルを取ります

 私は今も、初めて会った取材者に、自分の母親を「母さん」と表現し、その母のために金メダルを取ると述べる素直にただ感銘したのを覚えています。
 
 ソチにも葛西選手は母の手紙を持参するに違いありません。

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2014/02/03 10:43 未分類 TB(0) コメント(0)
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