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 明日、8月29日、山梨県のリニア実験センターにて、リニア車両の走行実験が2年ぶりに再開されます。
 朝9時か10時にはその「出発式」が開催され、太田国土交通大臣や地元の首長たちが集まるようです。

 さらに、JR東海は、住民向けの最後の手続きとなる「環境影響評価準備書」の公告、縦覧、そして住民説明会を9月中旬からにも始める予定です。

 一気にきました。JR東海の本気度を感じます。

 もちろん、今年2月には、リニア問題を訴える「リニア沿線住民ネットワーク」のメンバーも各地から集結するようで、「反対している住民がいる」ことを訴えるいい機会にもなるはずです。


●今さらながら分かったこと=戦略的アセス(SEA)

 リニア中央新幹線にはさまざまな課題、問題があります。水枯れ、残土処分、騒音、振動、電磁波、南アルプスへのトンネル掘削、生態系への影響等々。
 しかし、JR東海は、これまでの住民説明会でただの一度も、これら項目について具体的に説明しませんでした。いつも「詳細は環境影響評価準備書でお示しします」というだけです。
 ともあれ、その準備書の説明会が開かれる以上、その約束は果たされなければなりません。

 さて、JR東海が初めて住民説明会を開催したのは2011年秋ですが、これは「環境影響評価方法書」の手続きの一貫としてです。
 そして、この数ヶ月前にもJR東海はある手続きをしていました。

 それが「環境影響評価配慮書」(以下、配慮書)の公告です。

 この配慮書は、日本の環境アセスにとっては重要な役割を果たすものです。

 というのは、従来、環境アセスは、事業が始まってから実施されていましたが、いざ、それで「生態系に問題あり」との問題点が発覚しても、ひとたび始まった工事は止められない・・のが現状でした。

 これを改めるため、すなわち、計画が策定される前の段階で、一つの事業の複数案を比較検討するアセスを行なおう、その結果を計画策定に活かそうとの主旨で改正されたのが、2011年4月に改正され、13年4月に施行された改正「アセスメント法」です。

 これは「戦略的アセス」(SEA)とも呼ばれます。

 そして、このSEAは2013年4月の施行を前に、前倒しで、中央新幹線計画にも適用されたのです。
 
 つまり、中央新幹線は
・リニア方式か、従来の新幹線方式か。
・3つの候補ルートのどこがいいのか

 がいいのかを、本来、このSEAで比較検討されるはずでした。

 JR東海が、配慮書を公告、縦覧したのは2011年6月から8月です。

 ところが!

 この配慮書が公告された時点で、既に、中央新幹線は

・リニア方式で
・南アルプス貫通ルートで

 着工すべしと決まっていたのです。

 なぜか?

 配慮書が公告されたのは2011年6月。

 その前に、国土交通省中央新幹線小委員会では、2010年3月から11年5月までの1年間にわたり20回の審議を重ねてきましたが、この小委員会が、配慮書の公告の前月となる11年5月に「リニア方式で、南アルプス貫通ルートで」との答申を出してしまった。

 つまり、SEAは何ら機能することなく、お飾りで終わってしまったのです。

 怖いのは、これが悪しき前例となりうることです。つまり、他の大型事業でも、SEAに入る前に、何かの審議会で「こうすべし」と決まってしまったら、SEAは存在意義がなくなります。


●SEAの問題点

 もっとも、SEAにも問題点がないわけではありません。

★ たとえば、アメリカのSEAでは、配慮書の評価は第3者が行ないますが、日本では、事業者(リニアの場合はJR東海)の評価なので、結果、客観的な評価ができない仕組みになっている。

★SEAでは、環境省が意見書を書くことになっているが、環境省は今回の配慮書に「これではダメだ」と言いませんでした。
 懸念される環境問題、電磁波問題、残土問題等々に、環境省は、ほとんどすべて、「それらへの影響をできる限り回避・低減するよう検討し、必要に応じて専門家の助言を受け、代償措置を講ずる必要がある」と意見するに留まっています。

 もし環境省がダメといえば、配慮書手続きはやり直しとなり、事業策定もされなかったはずです。


★環境省は、その意見書のなかで、

「方法書以降の配慮手続きについて」、路線位置や立坑の場所、残土捨て場や変電所などの位置や規模を「評価書」で明らかにすることと記述しています。
 つまり、これは、方法書では、明らかにしなくてもいいとの解釈も生み出します。これが、現在の住民説明会の「具体的説明がない!」との混乱を生んでいると私は考えます。


●小委員会の杜撰さ

 前述の通り、国交省の小委員会ではリニア計画は20回審議されました。

 そして、その小委員会には、888件のパブコメが集まり、その大多数が中央新幹線への反対意見でした。
 ところが、国交省は、これら反対意見は「組織的である」と判断し、888件を10件程度にまとめ、答申前日の5月11日の夕方に(!)小委員会の委員に配布したのです。

 これは、当時衆議院議員(民主党)だった山崎誠氏が、答申から5日後の5月17日に、国交省から聞き取り調査で明らかにしたことです。
 このとき、国土交通省は、「反対意見は648件と数は多いが、多くが組織的な投稿であり、数はあまり重視していない」とのことで、報告書に10件くらいの意見を載せて委員に配布。

 つまり、小委員会では誰も888件の国民からの意見を読んでいないのです。

 果たして、5月12日の小委員会の議事録を読んでも、パブコメについての深い話し合いはゼロ。

 それどころか、小委員会は「反対意見は答申を覆す内容ではない」としてリニア建設にゴーサインを出したのは周知の通りです。

 国土交通省、環境省、そして小委員会のどこか一つでもまともな任務遂行をしていれば、おそらく、今のような、JR東海の住民軽視の態度は生まれなかったのではと思わざるを得ません。

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