富士山の高山病と『国際山岳医』

●息子の高山病

　８月１９日と２０日、８歳の息子と富士山に行ってきました。
　息子は、春からなぜか、夏に富士山に登るんだとの目標を立てていました。
　そこで、春から低い山から上り始め、最後は大人でもきつい神奈川県丹沢山系にある「塔ノ岳」（約１５００メートル）に上り、まあ、行けるかなと判断した次第です。本当は、２０００メートル急の山も経験させたかったですが、天候の関係で実現しませんでした。

　ともあれ、８月１９日は
・朝７時の高速バスで、横浜駅西口から富士山五合目へ。五合目着は１０時。
・ここですぐに上るのではなく、一時間ほど薄い空気に慣らし、絶対に疲れないペースで登山を開始。

　富士山に登るには４つのルートがあります。
　そのうち、テレビなどでも放映されるもっともポピュラーな「吉田ルート」では、７合目に７つの山小屋があります。鎌岩館はその真ん中の４つ目にあります。

　鎌岩館に決めたのには理由がありました。
　それは、そのわずか１０メートル下に「山梨県富士山救護所」があり、医師が２４時間体制で常駐しているからです。ただし、開設は、7月13日～7月15日、7月20日～8月23に限られているため、お盆を過ぎてやや山の混雑が緩和され、かつ、閉所する前にということで、今回の日程としたのでした。

　果たして、今回、この救護所のお世話になることになりました。
　７合目到着までは、元気がよかった息子ですが、就寝中の２２時、息が苦しいと訴え嘔吐。
　すぐに救護所に連れて行きました。
　
　６０歳くらいの先客もいましたが、脱水症状を起こしていました。
　担当してくれた女医さんからは、息子の体内酸素濃度は問題ないので、ポカリスエットなどの水分を摂らせて、呼吸を深くするようアドバイスを受けました。その後、山小屋に戻った息子は軽いいびきをかいて熟睡したのですが、午前２時頃、再び息苦しさを訴え少量の嘔吐。
　またしても、救護所へ。
　２４時間体制とはいえ、医師一人しかいないクリニックに午前２時過ぎに駆け込むのはけっこう申し訳ないものです。しかし、入り口のチャイムを鳴らすと、中から、（就寝中だったのでしょう）暗い部屋がパッと明るくなり、「は～い」と明るい声で女医さんが出てきてくれました。
　今度は朝５時まで酸素吸引しながらベッドで寝かせてもらいました。

　そして、高山病の治療法はただ一つ。下山です。
　５合目に戻ると、息子はケロリと元気になり、早速土産屋にかけこみ、物色を始めていました。


●国際山岳医だった

　ところで、この救護所は、治療費はかかりません。
　医師は３日交代で２４時間体制で常駐します。

　富士山７合目と言えば、特殊な医療現場です。いったい、どういう医師がこの現場にやってくるのか。

　帰宅後、女医さんから伺った勤務地「札幌」、苗字「大城」、専門「心臓」をキーワードに検索すると、なんと、日本人で初めて「国際認定山岳医」の資格をとった大城和恵医師でありました。
　国際認定山岳医は、高山病、低体温症や凍傷等々、山特有の症状に対処し、救命率を上げる任務を担う医師のこと。

　大城医師は、最近では、８０歳の三浦雄一郎氏のでエベレスト登山にも、専属医として２ヶ月間行動を共にし、標高６５００メートルまで同行しています。

　私が感心したのは、とにかく丁寧でアドバイスが的確だったことです。

　鎌岩館には、同じように、小学校２年生の男も泊まっていましたが、この子は登山中に嘔吐をして、夜中にやはり体調を崩し、救護所のお世話になっていました。
　この親子とも途中まで下山が一緒でしたが、高度を下げるにつれて男の子は元気になっていました。そのお父さんも「いい先生でしたね」と話をされていました。

　もし、小学生のお子さんを富士山に連れて行きたい方がいらっしゃったら、大城先生の以下のアドバイスに耳を傾ける必要があるかと思います。

「子どもには２泊３日のスケジュールを組んだほうがいい。１日目は標高１５００メートルくらいの山に上るか、１５００メートルくらいの町で一泊しておく。２日目に富士山五合目から登山を開始し、７合目あたりで宿泊する。三日目で登頂したら５合目に戻る」

　確かに、富士山五合目でも既に標高２３０５メートルあるわけです。
　下山途中で出会った６０代後半の男性は「私はもうトシなので、昨日、五合目の宿で一泊しました。今日は８合目でもう一泊します。そうやって薄い空気に徐々になれないと」と言っていましたが、もしかしたら、息子はこの五合目で既に高山病になっていたのかもしれません。
　大人ならば、７合目までは問題ないですが、子どもはそれ以下でもきついのだと今回勉強しました。

　ということで、来年は２泊３日での挑戦となります。
　もちろん、また鎌岩館に泊まります。ここは救護所にすぐ近いということに加え、スタッフが全員親切で気持ちよく泊まれた山小屋でした。お勧めです。
　
　最後に、大城先生、本当にありがとうございました。


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