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第六章 助けなくてもいい!

定住計画

 最後の一家族のために動き回っていた私は、これが終わるともう帰国だと思った。やることがなくなったからだ。そのときだ。農業チームの日本人A氏から声がかかった。

「定住プロジェクトを始めるんだ。やってみないか?」

 当時、JVC農業プロジェクトは、50ヘクタールの砂漠に4つの農場を開墾し、マガネイ難民のなかから100家族が、1家族あたり0.5五ヘクタールの配分でもって土を耕していた。

 定住プロジェクトの名は、ソマリアに来る前の84年に既に耳にしていた。

 JVCの農業プロジェクトを高く評価していたUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が「難民が、農業を基盤とし、国際援助なしでも自立していける村を作りたいと思う。もしJVCにその意思があれば、金、資材、人材の全てを提供するのでやってもらえないか」とJVCに打診してきたのだ。

 だが、当時、高橋さんを中心とした農業チームは「なによりも、難民自身が定住したいと自主的に思わなきゃ、この何でも与えます方式では援助慣れを助長するだけ。そして、一度この話を受けてしまったら、UNHCRの望む期限までに村を無理にでも作ることになる。村は本来自然にできていくものだ」との意見統一をみて、この件は立ち消えた。
 
 その話し合いの録音テープをソマリア赴任前に私は聞いていた。「なるほど」と思った。
 
 難民の将来を保証するには、通常、三つの方法がある。

1 本国帰還。
2 第三国への移住。
3 流入した土地での定住

 だが、ルーク地区の難民に対しては、このどれも実現されず、食糧援助だけで10年も同じ土地につなぎとめておいただけだった。あるスタッフはこう推測していた。

「UNHCRルーク事務所は焦っていたのかなあ。ルークの難民に、UNHCRはもう10年近くも食糧配給以外にこれといった成果を出していないから」

 そして、その2年後の86年秋に同じ話が私に持ちかけられたのだ。私は尋ねた。

「でも、それって、本当に今農業やっている難民がやりたいって言ったの?」

「今回はUNHCRは関係ない。JVCと農民とが話し合って決めたんだ。とにかく、次の話し合いに立ち会ってみてよ」

 当時、ソマリアで2年も活動していれば、早くも中堅どころの扱いをされたものだった。実際、多くのスタッフは1年か2年でソマリアを去っていた。私もその一人だったが、たまたま、保健プロジェクトが終わったということで、ある程度の経験をもった私ならと声がかかったのだ。

 もし、農民自身が食糧援助を立ち切り、自分たちの力だけでここで生きていこうと決めたのならたいしたものだ。

「うん、とりあえず、話だけでも聞いてみます」

 その数日後、JVC側からはA氏とモハメッド=ハジ、農民側は4つの農場から代表格の10名が臨んだ話し合いに同席した。


話が違うぞ!

 互いの挨拶のあと、農民の一人が口火を切った。

「私たちもこの農場近くに住めたらとは思っている。その意味で、この定住計画では一人一人が精一杯頑張ることが必要だ。この計画を話し合ってくれるJVCのスタッフには深く感謝したい。よくぞ遠い国から俺たちのために働きに来てくれた。あなたたちとの出会いをアラーに感謝したい」

 こんな褒め言葉が延々五分以上も続いていたが、次の一言からいきなり内容が変わった。

「ラッキン(しかし)!」

「?」

「この計画ではまだ俺たちは納得できない。なぜなら、村というのに診療所もないというではないか。学校もない。浄化給水所もない。イスラム学校もモスクも市場もない」

 別の農民が同調する。

「この計画は素晴らしい。アラーの神に感謝する。ラッキン! 一家族当たり0.5ヘクタールで本当に定住できると思うのかな? 1ヘクタールは欲しい。それに土地が痩せているので化学肥料もいる。ニワトリ、ヤギ、牛といった家畜も欲しい。そうそう、収穫物を運ぶためのトラックも必要だな」

 おい、なんだか話が違うぞ…。何なんだ、この要求の嵐は。

 分かってきたのは、この計画はそもそも農民側から出されたものではなく、農業チームの定住プロジェクトチームから持ちかけたものであるということだ。

 その際、以下のものを農民に与えると約束していたのだ。

 読み書き教室、養鶏小屋、機械類の修理場、サトウキビ搾り工場、ゴマ搾り工場、集会場、倉庫、個人の家、道路補修、浄化給水所、農業教室、調理用ストーブ等々。

 これだけ言えば、話に乗ってくるのは当たり前だ。なんのことはない。かつてUNHCRがやろうとしていたことを内部でやろうとしていたのだ。しかも、農民はこれでもまだ足りないと言うのである。

 もっとも、それらにいくらかかるかを計算したら、膨大な予算が必要とのことがわかり、後日、農民に与えるものは「家一軒分の資材、給水所、モスク、診療所」の四つに限定されたようだが、それでも大盤振る舞いであることは変わりない。
 定住したいという人たちを支援するのではなく、こちらから「定住してくれ」と持ちかけているのだから。


原因不明の推進理由

 私は当然ながら、このプロジェクトへの参加を拒否。さらには、月1回のJVC定例ミーティングで、この計画の全面見直しを要求した。

「一体、この計画のどこに難民の自助努力への尊重が込められているのか。これでは、難民が座っているだけで村が出来てしまう。第一、この計画をこちらからもちかけたことは間違いだ。どんな計画であれ、相手にやる気がなければ実現するはずがない。マガネイの人々はJVCが来るまでの5年以上をUNHCRの食糧配給だけで生きていて、もらうことが当たり前になっていると聞く。今ここで我々が、彼らの努力に期すことなく、同じように与えるだけのことをしていいものか」

 ソマリア人スタッフのモハメッド=アデンは反論した。

「言いたいことはわかる。確かに私たちは与えようとしている。でもそれは最初だけだ。考えてみてくれ。家一軒もらったところで定住が完了するわけではない。それから先は全部農民がやるんだ。例えば、妻を2人もっている者は2軒目を自分で作る。いわば、家1軒はきっかけにすぎない」

「最初だからこそ与えるべきではない。家1軒というが、一般労働者なら年収分かそれ以上の金がいる。それをタダでポンと与えるのは決していい結果を見ない。なぜ、今住んでいる家を解体して移すことが出来ないのか。考えて欲しい。マガネイには2000家族が住んでいるが、JVCの農場に参加しているのはそのうちの100家族だけだ。我々は、他の1900家族に目を向けず、この100家族だけに支援を続けていいものか。家一軒をポンと与えて、他の1900家族はいったいJVCをどう思うだろう。これだけの金を使うのなら、他の難民に目を向けるべきだ。私たちはここで『難民支援』をしているのであって『農民支援』ではない」

「じゃ、どうしろというんだ」

「例え、家一軒建てるにせよ、それはローンで返してもらうべきだと思う。たとえ半額でもいい。何年かかってもいい。とにかく、こちらの態度としてタダではあげないということを示さなければならない。難民が人間としての最低限の努力をしない限り、この計画は間違いなく失敗する」

 私の説明にモハメッドはこう切り出してきた。

「ここはソマリアだ。俺たちはソマリア人だ。ソマリアのやり方は俺たちソマリア人が一番よく知っている。家一軒くらいで農民が自立心を失うことはない!」

 メチャクチャな論理である。他のソマリア人スタッフもほとんどが計画に賛成する意見を述べてきた。頑強に反対したのはチームで私一人だけだった。

 終わらない話し合いに、日本人の一人が言った――「多数決を取ろう!」

 9人いたソマリア人スタッフは全員賛成の挙手。6人いた日本人スタッフも半分が手を挙げた。圧倒的多数。そして決まったのである。定住プロジェクトの開始が。

 多数決を取ったのは私のソマリア赴任以来始めてのことだった。それまでは、どんな少数意見でも妥協点を探り当てるまで長い時間をかけて話し合ってきた。それを崩してまでの定住推進は何なのか。
 やるなら勝手にやれば。失敗するんだから。私はこの計画には絶対に参加しないと正式に表明した。
 
 と同時に、自分の言葉にハッとあることを思いついた。

 農民支援…。オレたちは難民のなかで農民だけを支援している。

 マガネイでJVCの支援の外にある1900家族にも、人間として尊厳ある生活ができる機会や場を提供すべきだと。

 私が思いついたのは、やる気のある人を対象にした「小規模事業支援プロジェクト」の実施である。パン屋、鍛冶屋、仕立て屋の技術をもっている人には開店資金を貸し付け、技術を求める人には職業訓練コースを設けるなどで、少しでも人間として尊厳をもった生き方を構築する後押しをするのだ。

 実際、これは後日実行に移す。ただし、本原稿ではそれにはあまり触れず、この定住計画がどうお粗末に進んだのかをしばらく書いてみたい。

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