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樫田秀樹

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寂しさ

 86年11月中旬、あっという間に、新しい難民キャンプ「ジャボレ」への移送を拒まれたマグドールの人々は、親戚などを頼り他のキャンプに散っていった。あるいは、難民と認定されないのを覚悟で、自費でバスを乗り継いでジャボレに行った人もいた。
 ただ、マグドール2には元々正式な難民登録をされていない人が数千人いると言われていたが、その家族なのだろうか、多くの家がバラバラと残っていた。
 こんなところで、どう生きていくのか・・。かける言葉もなかった。

 私は、1週間から10日間ほど宿舎にこもり、マグドールに関する残務事務処理に追われていた。それが一段落した11月下旬、フとマグドール1に行きたくなった。もう給食センターも診療所もないことは分かっている。誰もいないことも分かっている。ただ無性に行きたくなった。

 一人で車を走らせる。ドリアンリーを過ぎ、マガネイに向かう途中で左に曲がって数百メートル。数ヶ月前まで連日、多くの人が訪れていた給食センターと診療所のあった場所。

 高橋さんに連れられ、初めてここに来たときのことを思い出す。あの時と同じ乾いた風が吹いている。あの時と同じように、ガラガラ四角張った石が日光をギラギラと反射させている。給食センター跡にはバラバラと建材のクズが散らばっている。

 人がいないということはなんと寂しいことなのか。例え、諍いがあったとしても、その人たちが皆いなくなってしまったというのはなんと寂しいことなのか。マグドール1の人たちは誰一人いなくなってしまった。難民の人々の小屋があった場所は、そこだけ石のない丸い空間を形作っている。

 一緒に働いてきたスタッフはもうほとんど誰もいない。
 高橋さんは、この年の2月、とうにソマリアを離れ、日本人看護士のIさんは数日前に帰国し、シェーク=アブディはジャボレに転任し、アブディサラムはJVCを辞めていた。RHUのCHWたちはそれぞれの現場に戻っていた。マグドールに住んでいたCHWのアボーカル、ほとんどのセクションリーダー、労働者たちはジャボレに行った。移送トラックに乗れなかった人たちは、政府の決定通り、ルーク地区の他キャンプに移ったり、自費をはたいてバスを乗り継ぎジャボレに行った。

 なぜ、オレは一人ぼっちなのか。思わず、ソマリアで初めて感傷的になった。


●一家族いた!

 そのときだ。誰もいないと思っていたマグドール1にたった一軒だけ小屋が残っているのを見た。空家か? 100メートルほど離れていたが、興味をそそられ吸い寄せられるように歩いて近づくと、私の足音に中から中年の男性が出てくるではないか。

「おー、カシダ!」

 人がいる! そこは6人家族。見ると、ディアコもいる。

「ディアコじゃないか!」

 その5歳くらいの女の子、ディアコはかつて栄養失調で給食センターに通っていたのだ。私は、家の主人に片言のソマリ語で尋ねた。

「どうしたんです、一家族だけで・・。ジャボレには行かなかったのですか?」

「それがな、食糧配給カードをなくしてしまった。ジャボレには行きたくても行けないんだ」

「どうやって生活を?」

「幸い、ニワトリをたくさん飼っているから、それを売ってるんだ。あまり金にはならんけどね。みんながいなくなったから、この広い場所じゃニワトリもエサには困らないよ。ハハ」

 まだ、マグドール1にも人はいた。この殺風景な風景のなかで逞しく生きていた。なによりも、私を覚えている人間がいたという事実に、心がほのぼの温まっていく嬉しさを覚え、私はますます感傷的になった――大丈夫だ、あなたたちを守ってやる。

 私は家族の一人一人と握手して別れた。

 宿舎に帰ると、私はこの事実をソマリア人スタッフに伝えた。みなが驚いた。そしてすぐに協力を申し出てくれた。

 まず、やるべきことは、この家族に、難民の証明書でもある食糧配給券を再発行するように役所に依頼することだ。その翌日か翌々日だったか、ソマリア人スタッフと私とその家族の家長がソマリア政府の出先機関に赴き、再発行を依頼した。その申請の間、家長は静かにイスラム教のお祈りでも唱えているのか、小声で何かをつぶやいていた。
 
 だがダメだった。再発行は拒否された。
 
 翌日、ある考えがひらめいた。当時、JVC農業チームは、第5農場をマグドールのすぐ近くに造成中だった。この家族が、今後、難民としてではないにしても、この地に留まると決めているのであれば、そこの農民になってもらうのはどうだろうか? JVC農場の農民になるには、難民キャンプのセクションリーダーの推薦枠や地主の推薦枠に入る必要があるが、農場の造成工事でよく働いてくれた労働者を農民に推薦する人数枠をJVCももっていた。

 私は農業チームのスタッフのラシッドを呼んだ。

「頼みがある。あの家長を第5農場の労働者にできないかな?」

「それなんだ。じつは、オレも同じことを考えていた」

「じゃ」

「そう。ゆくゆくは彼を農民にしたい。食糧配給も受けずに自力で頑張っている人なら、それくらいはやりたい」

「頼みます」

 果たして、この願いは実現した。造成工事の仕事で極めてまじめに働いた家長は、文句なしに、第5農場の農民に選抜されたのだ。

 保健プロジェクトを始めるとき、私たちは「最後の一人まで責任をもって仕事をしよう」と言い合っていたが、まさか、本当に文字通りの最後の一人とこういう付き合いをするとは予想もしていなかった。

 よかった。ほのぼのとした感覚に私は包まれた。私のマグドール1でのプロジェクトはこうして終わった。

 そして感じていた。

 終わった。ソマリアでの仕事は終わった。あとはいつ帰国するかだ。

 ところが、そうはならなかった。帰国どころか、私はソマリアに来て、絶対にやりたくない仕事をやる破目になる。それこそ精神がボロボロになる寸前まで。

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