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●葛藤

 私たち日本人は、Mが交通事故を起こした17日から幾度となく話し合いをもち、Mの処分について意見を出し合った。

「人を殺しておいて平然としているヤツに、難民救援の資格はない。クビにするしかない!」

「いや、故意ではなかったのだから、殺したという表現はヘンだよ」

「でも、彼は間違いなく反省も何もしていませんよ。ただ、ここで感情的になるのではなく、あくまでも、交通事故に対する罰則を課し、その反省を促す意味で謹慎処分という手もあると思うよ」

 ある女性スタッフはこう言った。

「私はどうしていいかわからない。だって、Mはわざとこの事故を起こしたのではないし、きっと反省もしてると思う。そこのところで、私たちが追い討ちをかけるような処罰を決めていいのかしら?」

 腕を組んでじっと聞いていた高橋さんが口を開いた。

「今、そんなことを話し合っているんじゃないんだ。例えばさ、ここに同じ組織に属しているⅩという男がいるとする。そのⅩが過ちとはいえ交通事故で人を死なせてしまった。そのとき、あんただったら、そのⅩをどう適正に処分するんだ?」

「それは・・、やはりしばらく運転を禁止させますけど」

「それがあんたの意見じゃないか!」

「・・・」

「なんだか、議論のための議論をしているみたいだな・・」

 いやしくも一緒に働く仲間である。どうしても温情論が出てくれば、その反省ない態度につい感情的な厳罰論も出てくる。いずれにしても、私情での判断を高橋さんは諌めたのだ。

 とはいえ、私自身は、当初、どう処分すべきかで明確な答えを出せなかった。個人的には、今回の事件を抜きにしても、MはJVCにいるべきではないと常日頃考えていたからだ。

 JVC内の被差別民族に属しているスタッフを冷遇したり、あるミーティングで、一人の日本人スタッフに「お前に用はない。あっちに行け」との暴言を吐いたのに、それをあとで責められると「私は生まれてからそういう侮蔑の言葉を吐いたことがない」とみえみえのうそをついて最後までその日本人スタッフを精神的に苦しめたりで、その言動を巡り、私としばしば激論を交した。

 彼さえいなければ、どんなにこのチームは雰囲気がよくなることかと何度も思った。とはいえ、交通事故を利用してのクビはしてはならない手段だ。とはいえ、今後のチームの雰囲気を考えたらクビも選択肢の一つだ…。

 分からない…。

 何日にも渡り、私たちは意見を交換し合った。

 この事件で一番苦しんだ日本人は、Mと一緒に農業プロジェクトを進めてきたKさんである。彼はこう言った。

「俺はもうこれ以上、Mが罰を受ける必要はないと思う。それは、Mがもう充分に裁きを受けたと思うからじゃ。こういう事故が起こったのは、一緒に仕事をしている俺にも責任がある。俺も何らかの責任を取ろうと思うんじゃ」

 日本人だ。日本人の価値観=連帯責任がこのときほど衝撃的なほど鮮烈に聞こえたことはない。

 高橋さんが厳しい口調でこう返した。

「Kちゃんは、もう罰を与える必要はないと言うけど、あの事故のあとから今に至るまで、Mに運転禁止令を出したのはKちゃんだろ。言っていること矛盾してない?!」

 Kさんは力なく首を前に落として、呟くように言った。

「そうじゃ、その通りじゃ・・」

 高橋さんは、この3カ月後にはJVCを辞め、高校生からの夢であったサハラ砂漠緑化のNGOを立ち上げるため、西アフリカを訪れる予定だった。そして、高橋さんの後に農業プロジェクトを引き継ぐのはKさんしかいないと、周りもKさん自身も意識していた。だが、5ヵ月後の86年4月、最初の1年間の契約が終わった時点でKさんはソマリアを離れた。この事件が精神的な糸を引いたのではと当時のスタッフたちは推測したものだった(数年後、日本で再会したときにKさんは「あの事件が原因ではない。高橋さんのやってきたことを現状維持するのが役目だったから、その後適任者も赴任していたから去った」と私たちの推測を否定した)。


●反省なし

 さて、話を戻すが、喧々諤々の論議のあと、私たちは最終的にMの処分を以下の通りに決めた。

・ 当分の間、現場を離れ、モガディシュのJVC事務所での勤務とする。
・ その間の給与は基本給のみとする。手当てはなし。
・ 車の運転も当面禁止。
・ 反省文を提出すること。
・ 当面、JVCの車の鍵は日本人スタッフが所有する。

 Mはこの決定に従った。つまり、反省文も書いた。私は、今でもその内容を覚えている。

「今回の事件は残念であったが、すべてはアラーの神の思し召しであった。あの少女は、あの日、アラーの神のご意志でこの世を去ったのだ。ともあれ、私は今後、二度とこういうことがないようにアラーに祈る。なぜなら、もし、もう一度こういうことが起これば私はJVCの職を失うであろうからだ。インシャーラ」

 このどこに「反省」が見て取れるのか。

Mはモガディシュに行く前、私に「わかるか。私は、ソマリア社会と日本社会の二つから罰を受けたんだぞ!」とその不満をぶちまけた。


●「日本人はおかしい」

 自分の運転で人を死なせながら「責任はない」というソマリア人。そのソマリア人と一緒に働いているというだけで「俺にも責任はある」という日本人。

 この対極に位置する2つの価値観に一致する妥協点はなかった。もし、Mが変人であるなら、今回の事件を巡る彼の対応は納得はできなくても理解はできる。だが、そうではない。今回の事件において、私たち日本人は圧倒的な少数者だった。

 というのは、他のソマリア人スタッフのほとんどが、私たちの決定に対し異を唱えたからである。Mがモガディシュに去った後のミーティングで、スタッフのラシッドは不機嫌に、かつ無表情に「言いたいことがある」と切り出してきた。

「なぜMがあそこまで責められなければならないのか。あの女の子はアラーの神の思し召しで亡くなったのだ。もう示談金だって払ったじゃないか。なぜそれ以上の判断が必要なのか!」

 ラシッドはMの親戚に当たる。だからこその擁護なのだろうと思った。

 だが、マグドールに出かけ、顔見知りの難民に事の顛末を話すと、「運命は神の思し召し。誰も止められない。あなたがたの処分は理解できない」との言葉を投げられた。

 おい、お前はどう思うんだよ、といつも冗談を言う気さくなCHWのギニーに問い掛けると、

「はあ、運命だからなあ。インシャーラ」

 と当たり前のように言う。私たち日本人はきつく責められこそしなかったが、間違いなく異端の存在だった。

 Mは、ただ、自分の過ちをソマリアのやり方に従って償ったに過ぎない。だが。

 だが、今回の事件を、ソマリアだけの解決策で問題の収拾に当たるべきだったのかと問われれば、私は今でも否と答えるだろう。私たちのプロジェクトは、日本の数多くの個人や団体からの支援によって成り立っている。車の購入費用にもその一部が充てられているのだ。その無数の意思がプロジェクトに寄せる期待に思いを馳せれば、人の命が失われたという、この件に関してだけは、日本人としての価値観をある意味貫き通す必要があったと思う。

 少なくとも、他国の文化をわかった素振りで「こちらのやり方に従おう」と簡単に言ってしまってはいけない。郷に入りても郷に従えない場合もある。


●軋むチーム

 しかし、その結果生まれた、日本人とソマリア人との間に走る深い溝は、その後の両者の関係を多少なりともギクシャクさせる作用で働いた。以後暫く、朝のミーティングで私たち日本人スタッフが何か意見を言ったり提議をするだけで、その言葉尻を捉えるように一部のソマリア人スタッフは噛み付いてきたのだ。

 例えば、Mへの処分とあわせ、車の鍵を日本人の一人が当面管理するという決定においては、ソマリア人スタッフは不満を爆発させた。Mがモガディシュに去ってから数日後、メカニックのハッサンが言い出した。

「皆で使っている車の鍵を、なぜ、ソマリア人に何の相談もなく管理することにしたのか!」

 この頃、仕事でもないのに、ええかっこしいのドライブとしゃれ込み、車を私用するソマリア人が散見されていた。私たちは締めるべきところは締めようと、交通事故を機会に鍵の一元管理を打ち出したのだ。確かに相談はせずともこう告げていた。

「今回のような事故が起こってはいけない。そして、最近目立つのは私的な運転だ。仕事が終わったあと、一体誰が鍵をもっているのか? 誰から許可を得たのか? これが実に曖昧になっている。皆で話し合っての車使用のルールを決めるまでの暫定措置として、鍵は日本人側で預かる」

 これを今一度説明すると、ハッサンは突き放すように言った――「どうぞご勝手に」

 Mは数ヵ月後に再びルークに戻ってくるのだが、依然、相当深い不信を日本人に向けていた。
 ある日、浄化給水場が、メンテナンスのためか、一時的な給水制限をしたことがあるのだが、これを受け、朝のミーティングで日本人の一人が「しばらくシャワーは一日一回だけ。それ以上の水浴びは川でしようではないか」と提案した。

 常識で考えれば当然のこと。日本人スタッフは頷いた。だが、即座にMはこれに噛み付いてきた。

「暑いときに一回だけの水浴びとはどういうことか!」

「給水制限がある以上しかたないよ。でも幸い、川は宿舎の脇を流れているから問題ないじゃないか」

「いやだね、俺は川では水浴びしない。暑いと思ったら何度でもシャワーを使うよ」

「そんなことしたら、他の者が使えなくなるぞ」

「まあ勝手にするがいいさ。日本人は何でもかんでも物事を勝手に決めて、俺たちに伝えるだけなんだからな」

 それが本音か・・。結局、彼が一日に二度シャワーを浴びることはなかった。つまりその程度の常識は持ち合わせていたのだが、彼は、ミーティングで突然、そういう議題が出たことに対して腹を立てたのだ。

「そういう議題は、日本人のなかでは話し合われたのだろう。俺たちソマリア人には突然告げるだけだ。せめて、事前に俺に伝えておけってんだ」

 との不満である。
 
 今回の事件で改めて強く痛感したのは、Mはソマリア社会であってはならない「プライドを潰された」人間になってしまったことである。それゆえ、交通事故のあともさらに、ソマリア人スタッフの古株たる自分に何の相談もなく、ソマリア人たちの目の前で「決定」が下されるのが許せなかった。どんな些細なことでも。

 少なくとも、日本人スタッフが一方的に決定事項をソマリア人側に伝えたことはなかった。だが、Mと彼に近い某ソマリア人スタッフは、意見や提案についてもいちいち噛み付くことを繰り返してきた。

「M! これは決定事項ではない。単なる意見だ。だったらお前の意見を言えばいいだろう!」

 日本人の誰かがこう言っても建設的な論議は起こらなかった。プライドを潰された彼の恨みは深い。

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