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 昨日、NPOバンクの「天然住宅バンク」について書きました。
 NPOバンクは現在、日本に10以上存在していますが、その魁となったのが、1994年設立の「未来バンク」です。
 じつは、未来バンクの理事長と、天然住宅バンクの理事とは同一人物です。
 本日はその人「田中優さん」について書きます。

 従来の銀行が融資しようとしない市民事業や福祉事業、環境事業に、市民から出資してもらって貯めたお金を低利で融資していこうとの主旨で始まった「未来バンク」。

 元々の出発点は「財政投融資」でした。

 財政投融資とは、2001年度以前と以後とで制度は変わるのですが、ここでは優さんがその存在に気づいた1993年の制度で説明します。

 1986年のチェルノブイリ原発爆発事故以来、地球上を放射能が覆い、その直後に生まれた優さんの息子も虚弱であったことなどから、優さんは市民運動の世界に足を踏み入れました。
 以後、原発、ゴミ問題、リサイクル、ダム、大型公共工事、海外ODA等々、日本にある環境問題をモグラ叩きするような日が続きます。

 ところが、ある日気づいたのです。

 原発の一部だって、ダムだって、長良川河口堰だって、大型公共工事だって、ODAだって、お金の出所は一緒じゃないかと。

 それが、日本人の多くがお金を預けている郵便貯金でした。

 この200兆円以上の巨大な貯金は、無条件で大蔵省(当時)に全額預けられていました。
 それが決められたのは、なんと、1925年!
 その年に制定された「預金部預金法」という法律で、郵便貯金の大蔵省への全額預金が義務付けられたのです。それがなくなったのがやっと2001年です。

 ともあれ、大蔵省に預けられた郵便貯金は、様々な特殊法人に融資され、それが、原発、ダム、河口堰、その他大型公共工事、ODAへと利用されたのです。そして、それら特殊法人がそれら事業でもうけたお金の一部が、私たちが受け取る郵便貯金の利子でもあったわけです。

 優さんは「モグラ叩きだけなら問題はいつまでも終わらない。まずは財政投融資の問題を世間に知ってもらおう」と、自身も属している「グループKIKI」という市民グループから「どうして郵貯はいけないの」(北斗出版)という本を出版します。
 これには、ペンネームですが、私も一部原稿を書いています。

 さて、次に抱えた問題は、「問題は知ってもらえる。じゃあ、郵貯をどうするんだ?」ということです。
 最初に思いついたんは「タンス貯金」。つまり、郵便局に預けない。また、大手の銀行だって同じように環境破壊的な事業に融資しているので、やはり預けない。残るは、自宅から出さない・・。

 しかし、やがて、それが解決ではないと優さんと仲間たちは思い始めます。

 なぜなら、郵便貯金や銀行貯金には、環境破壊的な事業に融資するといった一面のほかに、もう一つの問題があるからです。
 それが、それら金融機関は市民事業、NPO活動、福祉などに融資をしないということでした。

 「じゃあ、自分たちでそれをやるか」

 というのが未来バンクへのスタートでした。

 一口1万円以上で1円単位でいろいろな人から出資をしてもらい、集まったお金は、市民事業、NPO活動、福祉などに融資をする。

 ところが、私は今でも覚えているのですが、優さんがいろいろな市民や市民団体に呼びかけ、実際にお金集めを始めたころ、同じ市民運動家の少なからぬ人は

「優さん、無茶やるよなあ。そんなことしたってお金なんて集まりっこないのに」
「出資したって利子とかつかないんだろう。無理無理」
「だいたい、融資を申し込んでくる人なんていないんじゃないのか」
「夢見すぎだよ」

 と否定的でした。
 
 つまり、NPOバンクという運動が根付かないと判断していたのです。

 それは、じつは優さん自身も悩んでいたことで、「未来バンクが出資金を集めている」との新聞記事をきっかけに、あちこちから徐々に出資金が寄せられ、それが何百万円、何千万円と積み重なっていくにつれ「もし、お金を借りた誰かの事業が失敗したら、オレがその責任かぶるんだろうか。破産するのか」と怖くなり、さらには、一緒に活動していた仲間が「集まった金を持ち出さないか」との疑心暗鬼に陥り、睡眠不足にも見舞われました。つまり、相当のプレッシャーのなかで未来バンクを立ち上げたのです。

 ところが、始めてみると、そのような杞憂はあっという間に晴れました。
 というのは、お金を借りた人たちは、ほんの1~2件を除き、全て完済し、お金を借りる側と貸す側との信頼関係が強まることで、「お金を貸すことはなんと楽しいんだろう」との充実感に満たされる活動だったからです。

 未来バンクの活動に触発され、今では全国に10以上ものNPOバンクが設立されています。どのNPOバンクの事例を見ても、返済焦げ付きの事例はほぼゼロ。
 
 NPO一覧については、

 http://ja.wikipedia.org/wiki/NPO%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF

 などを参照してください。

 ところで、冒頭にも書いたように、優さんはチェルノブイリ原発事故を契機に市民運動の世界に入りました。以来25年間、原発情報をいつも取り込み整理し、周囲にはそれを分かりやすく発信しています。

 今回の福島原発事故でもそうです。今、田中優さんの講演は全国で引っ張りだこです。
 原発事故にしろ、行き詰る日本社会にしろ、それでも優さんが訴えたいのは一つです。

「未来をあきらめない」

 今回の事故は起きたけど、それでも優さんは「絶望するだけではなく、何かができる」と信じ、情報を発信し続けています。
 本人のブログ「持続する志」 http://tanakayu.blogspot.com/ には、けっこう感動的な言葉が掲載されています。是非、お読みください。

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2011/04/23 16:14 NPOバンク TB(0) コメント(0)
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