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樫田秀樹

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●ただ雑用のために

 私たちは給食センターの開所から、老若男女を問わず、マグドールで死者が出た場合は、その葬式前後に皆が飲むための紅茶の葉と砂糖を、せめてものお見舞いとして支給することにしていた。つまり、誰が死んだという情報はすぐに知ることになるのだが、ある日のことだ。数日前まで給食センターに子どもを連れていた母親に会った。

「あれえ、今日子どもはどうしたの?」
「死んじゃったぁ」
「え、いつ?」
「昨日よぉ」

 いともあっさりと言われると、会話そのものにまったく現実感を感じることができず、数秒間はどう反応していいものかわからなくなる。だがすぐに、「そんな馬鹿な話があるか!」とどこにもぶつけようのない感情が湧いてくる。

 そしてその数日後、違う母親と私はまったく同じ会話を交わした。それが何度と続くのだが、どの母親も悲しみの表情を浮かべることなくごく日常行事のように私にそれを伝えた。

 そういう社会なのだろうか、ここは? 子どもの死をごく当たり前に受け止める社会なのか?
 そんなことを思い始めていたある日のこと。午後の仕事も終わり帰りかけようとしたら、セクション3のリーダーのカヒンがやってきた。

「急患だ!」

 アミノという女性が予定より早く産気づき、出血も伴っているそうだ。CHWのカマルが女性の小屋に駆けつけたが、「オレじゃだめだ。ドクターを呼ぼう」と、私たちは急遽ルークの町のRHU事務所に赴き、アブドラハマン医師を連れてきた。簡単な診察後、アブドラハマンは言った。

「すぐに町の病院で入院の手続きをとろう。行こう」

 女性と家族を車の荷台に乗せてルーク病院に向かう。もう日が暮れていた。

 翌朝、私は病院に行った。そこで病院の医師から「彼女に別状はないが、胎児は死にました」との説明を受けた。そして、この説明に立ち会っていたアミノの家族の男性が、ベッドに横たわっているアミノの元を訪れた。

「赤ちゃんは?」
「実はな、アミノ。赤ん坊は死んだんだよ」

 その瞬間、アミノの目から、涙がスーと褐色の頬へと流れていった。

 私ははっとした。ソマリアで初めて見たのだ。我が子の死に涙する母親の姿を。しかも彼女は初産ではない。

 この涙は、子どもの死と母親についての再考を私に促した。

 そして2回目はすぐにやってきた。マグドールは後日、コレラが蔓延するのだが、私たちは連日、コレラ患者の発見に努め、隔離病棟にまで患者を運んでいた。

 ある夜、母親と2歳くらいの子どもが患者として運ばれてきた。すぐにCHWが点滴を開始した。母親は病気の苦しみで呻いている。子どもは息も絶え絶えだ。そして数十分後、子どもは静かに死んだ。隣で苦しみながら点滴を受けている母親はそれに気づかないでいるので、CHWがそっと母親に告げた。すると、母親は、自分自身の呻き声に嗚咽を重ねて泣き出したのである。

 母親は我が子の死に涙する。その当たり前のことが、やはり当たり前なのだと私は改めて気づかされた。そしてわかってきたことがある。

●いつまでも悲しんではいられない

 アミノはわずか2日後に退院した。なぜそれが分かったかといえば、運転する車の中でCHWのカマルが「あ、アミノだ!」とある方向を指差したからだ。

 そこには、バケツを頭に載せ、浄化給水所から水を運ぶという重労働をしているアミノがいた。その数日後には、歩けば往復五時間以上もかかるブッシュにまで出かけていたのだろう、背中いっぱいに薪を背負っているのも見た。

 日中の気温は50度以上。アミノは家庭での料理も洗濯も小さい子どもたちの世話も見なければならない。

 アミノだけではない。ソマリアの奥地に住む女性は、主婦業と言うにはあまりに苛酷な雑用をするために生きている。

 ここでは確かに、魚の卵もその数%しか成魚にならないのと同じように、10人近く子どもを産んでも、厳しい自然に適応できない赤ん坊が1人か2人は死ぬのもまた当たり前なのだ。

 だからといって母親たちがその死を平然と受け入れているわけではない。ただ、あの社会では、いつまでも一人の子どもの死に打ちひしがれていては、家族全体が生きてはいけないという現実がある。

 忘れなくてはならない。雑用をするために。

 逞しくならなくてはならない。今いる家族が生きるために。

 アミノは重い薪を背負いながら、一緒にいた女性たちと笑いながら会話を交わしていた。その「逞しさ」こそ、この厳しい環境の中でできるだけ多くの家族が生きていくために身につけなければならない生活術なのだ。

 私たちの給食プログラムは、子どもだけではなく、妊娠六ヶ月目から授乳6ヶ月までの女性も対象にしていたのだが、当然、アミノもその一人だった。だが、突然の子どもの死。私たちは、アミノを登録から外さねばならなかったが、ちょっとばかりの心苦しさを覚えたものだった。葬式用の紅茶と砂糖は多目にあげたのだが。


●死後の幸せな世界

 そして私は、だんだんと、スルダーノの母親のこともわかるようになってきた。

 その理解のきっかけは、アオキから少し遅れて保健プロジェクトに参加した、JVCソマリア人スタッフのシェーク=アブディとの会話である。シェークとは、イスラム教の教義をすべて理解したものだけに与えられる、位の高い称号の一つだ。

 診療所や給食センターで難民同士でいざこざや口論が始まりそうなとき、彼が「ラゲイソ(聞いてくれ)」と一言言うだけで、ピタと口論は止み、彼の発する言葉に耳が傾けられたものだった。

 ある日、給食センターでの仕事が終わったあと、ほんの雑談でシェーク=アブディにあなた方は死後どこに行くのかと質問したことがある。彼はこう答えた。

「生前、善行を重ねた人ならば、アラーの神の楽園に行けます。そこは緑に溢れ、きれいな川がいくつも流れ、病気も老いもない世界です」

「でも、善行を重ねる暇もなかった小さな子どもはどうなる?」

「無垢な心のまま亡くなるのだから、当然楽園に行けます。だから、子どもとの死別は悲しくとも、死はこの世のお別れであっても不幸なことではないんです。ここでも多くの子どもが亡くなりますが、すべてはインシャーラです」

 インシャーラ。「神の思し召すままに」という意味だ。シェーク=アブディは言葉を続けた。

「病気になるのも事故にあうのもすべてはインシャーラ。それは人間の力ではどうすることもできません。ここでも、エチオピアに暮らしていたときと違い、我が子が骨と皮だけになるなんて誰も想像しなかったことでした。しかも、その子どもが食べ物を受け付けなくなる。そういうとき、見たこともない豊富な薬と食糧をもったカシダたち日本人が現れた。これもインシャーラです」

 だからこそ、食べ物を受け付けない我が子のために母親たちは「薬を!」と私たちに訴えてきた。薬は何でも治せるのだと。だが、私たちは大量の薬をもちながら、母親たちには「薬では治らないよ」と言い続けた。それが事実であれ、最後の拠る術を拒絶されたと思った母親たちは私たちに非難の言葉を投げてきた。

 私は改めてスルダーノの母親を思い出した。給食センターへも連れてこられず、充分な食事もできなかったスルダーノ。だが、母親のなかでは、「食べようとしない死に旅立つ子」であったのだ。少なくとも、母親はスルダーノといつも一緒にいた。いつも抱きしめていた。彼女なりに精一杯のことをしていたのではないだろうか。この世のお別れの後にスルダーノが住める安寧の地を信じていたのではないだろうか。

 もちろん、シェーク=アブティとこういう話をしたからといって、即座に物分りがよくなったわけではない。ソマリアでの滞在中は最後まで、「諦める」母親と口論するたびに心が乾く思いを無数に味わったのだから。

 私がたった一つだけ知りたいと思ったのは、スルダーノの母親のような女性たちは、アイーショのように元気になった子どもたちをどう思っていたのかということだ。あまりにも日本人的な質問なのかもしれないが。


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