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●あんたの給食じゃない!

私たちの給食は、登録された本人が給食センターで食べることを原則にしていた。だが当初は、その家族による持ち帰りも認めていた。とはいえ、それがあまりに頻繁だと、その子の回復具合が確認できない。そこで私たちは、そういう子どもたちの家庭訪問をすることにした。
そこで助けになったのがセクションリーダーだ。その子の名前を教えるだけで、そこの家にすぐに行けるからだ。

 まず1軒目。
「いますか。入りますよ」
「ああ、どうぞ」
 小屋に入ると、入り口のすぐ脇に、確かに登録されている子どもがいた。だが、その子は登録時よりもさらにやせこけ、頭髪も無くし、老人の顔で、真っ裸で目を見開いたまま天に向かってハアハアと浅い呼吸を送っていた。
「ああ、給食の甲斐なく、この子もダメか」
 そう思って家族に目をやった次の瞬間、我が目を疑い、一瞬にして怒りが湧き起こってきた。
「何を食っているんだ! どういうことだ!」
 大人の男性――たぶん父親――が、鍋に手を入れて給食を口に運んでいたのだ。
 父親は悪びれもせずにこう返してきた。
「いや、こいつが食べようとしないんでね」

 仰向けに脆弱な呼吸を繰り返し、骸骨そのものの体を晒している子どものすぐ近くで、その子のための給食をむさぼる父親。なんという家族を見てしまったのか。
「それは、あんたのための食事ではない。もしこれからもこんなことを繰り返すのなら、俺らは毎日ここに来るよ!」
「ああ、ああ」
 わかってくれたのか、くれていないのか、締まりのない返事。憤り収まらぬまま、私たちは次の家へと向かった。
 そして、そこで見たものは、給食対象の赤ん坊の兄と思われる男の子が持ち帰りの給食をモグモグと食べている場面だった。

 嫌な予感がしてきた。それを確認するため、そして打ち消すため、次の小屋へと向かった。だがどこでも結果は同じだった。どこの家でも、当の赤ん坊を横に置いたままで父親か年長の男の子が、隠すことなく極めて平然と口をモグモグ動かしていた。 給食を持ち帰る家においては、子どもに給食を与える家族は実に少なかったのだ。

 だがハタと気づいた。この状況に憤っていたのは、日本人である私か、街育ちのソマリア人スタッフである。案内役のセクションリーダーたちは、何も語らずに立っているだけ。
 憤っていないのか? そう、憤っていなかったのだ。むしろ、憤っているのがプロジェクト責任者である私だから、まあ騒がないでおこうといったところだろうか。 

●生きる者が食う
 
 その後、私はJVCのソマリア人スタッフで遊牧民系の人間に尋ねてみた。なぜなのかと。そして分かってきた――この社会では、体力のある人間から、働ける人間から順に食べる。即ち、男が女より先に食べ、きょうだいのなかでも年上の男から食べていく。
 ソマリア人の女性は10代後半で結婚するのが通例で、結婚後は7人、8人と可能な限り子どもを産む。だが、そのうち何人かはこの苛酷な環境に順応できずに、3歳を前にして死ぬ。逆に言うなら、3歳を乗り切った人間はここで逞しく生きていけるのだ。

 それを乗り切れそうもない子どもがいる。そして、例えば、遠くのブッシュまで木を切りに出かけるなど、家族を支えるために働かなければならない大人がいる。それに必要なのは、ただ一つ、食うことだ。ならば、目の前の給食は大人が食べて当然なのだ。この厳しい環境で生きるため。それこそが、家族が生きるための合理的、かつ冷徹なルールなのだ。

 だが、私たちは踏みとどまった。日本人とソマリア人スタッフは話し合った。
「でも、俺らのは『補助給食』だ。家族全員の腹は国連からの食糧配給で満たすことになっているのだから、やはり、親や年上のきょうだいがそれを食う理由はどこにもない」
「じゃ、明日から、持ち帰りは厳禁にしよう。あくまでも子ども本人が給食センターで食べることを原則にしよう」

 以後、給食センターは、部外者の侵入を防ぐため、壁を補強し、敷地も有刺鉄線の塀で囲んだ。そして、持ち帰り用の鍋やヤカンを受付で見たら、登録カードとともに受付で預かり、子どもに給食を食べ終えさせた時点で、返却するようにした。これで、給食センターに来る子ども、特に赤ん坊は最後まで給食を食べることができるので、その栄養回復には一定の効果をあげることになる・・はずだった。やはり、死に行く子どもはあとを絶たなかったのである。


●あなたが食べさせなければならない

 鍋やヤカンの持込を禁止してからというもの、子どもに給食を食べさせずにすぐに帰ろうとする母親との「対決」が始まった。

 3歳以上の子どもの多くは食欲旺盛。なんの問題もない。だが前述の通り、長期間の栄養失調状態にあった3歳未満の幼児は食欲を失っていて、最初のスプーンの1口、2口くらいを口にしたあとは、それ以上はイヤイヤをして食べることへの拒否反応をする。そして、たいていの母親はこの最初の数分で諦める。子どもをよいしょと抱きかかえ帰路につくのである。ここで正義感の強い我らがソマリア人スタッフのアオキがズカズカと母親に近寄りたしなめる。

「まだ食べ終わっていないじゃないか。なぜ、子どもに食べ物をやろうとしないのか?」
「だって、この子が食べようとしない」
「違う! あなたが食べさせなければならない」
 私にしても、一体何度この会話を繰り返したことだろうか。


●諦めないお母さん

「これじゃあ、オヤジが食うか食わないかだけの違いだな・・」
 そんな軽い徒労感を覚え始めていた頃、私たちは一人の母親に出会った。
 6月になると、新たな難民がやってきて、2万人ともいわれる人々はUNHCRにより、マグドール近くの荒地にトラックのピストン輸送で運ばれてきた。誰が呼んだか、そこはなぜか「マグドール2」と呼ばれるようになり、 私たちには何の話もなかったのに、その担当援助団体はJVCであると見なされていた。その腹立つ話は後述するが、当初、マグドール2に給食センターを作る余裕のなかった私たちは、給食センターに連れてくればとの条件で、栄養失調児をマグドールに受け入れていた。だが、給食センターまで歩けばゆうに30分はかかるマグドール2からわざわざ子どもを背負ってくる母親は数多くなかった。無理もない話だ。

 だが、彼女は、毎日2回、午前と午後の給食を食べさせるために、女の子を背負って裸足で給食センターに通っていた。女の子といっても、当初は男女の区別もつかぬほどガリガリにやせていた。名はアイーショ。2歳。この子は1日2回の集中給食に登録されていた。
 アイーショの母親は、給食センターに着くや床にドッシリと座り込む。だがアイーショは食事を拒否する。ここまでは見慣れた光景だ。しかし、母親はスプーンを皿に戻さなかった。そのままアイーショの口もとで、食べるのよと穏やかな顔を向け、スプーンを差し出し続けている。1分経つ、2分経つ、そしてアイーショは、ゆっくりと唇をスプーン半分に被せた。口の中に入った給食が弱々しく、だが確実に喉を嚥下していくのが伝わってくる。そしてアイーショは再び食事を拒否する。しかし母親は諦めない。1分、2分、また同じ事が起こった。

 私は別の仕事でそこを離れたが、1時間後に戻っても同じことが行われていた。そして、皿にあった給食はほとんどなくなっていた。尊敬の念がこみ上げてくる。どんなにアイーショが食べることを拒否しても、いらつくこともなく、焦ることもなく、ただひたすら子どもの口に給食を運ぶその姿は、乾いたソマリアの光景のなかで、私の心に潤いの雫を与えてくれた。
 当然の結果であるが、週に一度の体重検査でも、アイーショに体重増加が見られないことはなかった。アイーショは徐々に顔に丸みを帯び、女の子らしい表情を見せるようになる。そしてついに数ヵ月後、1日1回の補助給食に切り替わり、やがて完全に健康を取り戻すと、給食センターに来る必要もなくなった。


●諦める母親

 一方で、こういう母親もいた。彼女にも2歳の女の子がいた。名はスルダーノ。家は給食センターから歩いて5分。だが、この母親は、登録後、子どもを連れてくることがほとんどなかった。連れてきても、スルダーノが食べることに拒否反応を起こすと、さっさと立ち上がり、隙を見て、給食の残りを鍋に入れて帰ろうとする常習犯のこの母親とはいつもぶつかった。持ち帰っても誰が食べるかを、私たちは既に知っている。

「どうして帰るんだ!」
「この子が食べようとしない。登録カードを返せ!」

 こういうやりとりを続けていると、たまらない空しさに心が乾いていく。スルダーノは体重検査を何度行っても、いつも必要体重の70%未満でしかなかった・・。

 そして、なんの事情か、ある日、スルダーノ一家はマグドール2に引っ越してしまった。嫌な予感がした。これでますます来なくなるぞ・・。悲しくもこの予感はあたり、3日後、私とアオキはマグドール2を歩き回り、スルダーノ一家を捜し当てた。

「なぜスルダーノを連れてこないの?」
「給食センターまで遠くなって行けないよ」
「アイーショのお母さんを知っていますね。あの人もここから通っているんですよ」
「・・・・」
「明日から来るね」
「わかった」

 だがやはり来なかった。そこで私たちは、朝と午後、この家に立ち寄っては「行くよ!」と、半強制的にスルダーノ親子を車に乗せて給食センターまで運んだ。しかし、そうはしても、肝心の母親にやる気がないのであれば子どもが太ることはなかったのだ。
 アイーショとスルダーノ。どちらも2歳の女の子。どちらも、栄養失調に加え、下痢を伴う脱水症状を有していた。だが、一方はどんどん回復に向かい、一方はいつまでも死の淵をさまよい続ける。

 だが、ここで強調せねばならないのは、あの社会においては、スルダーノの母親は特別な存在ではなかったことである。非難されるべき存在でもなかった。むしろ、アイーショの母親に寄せた私の感動こそが奇異に映ったことだろう。
 少なからぬ母親が私に言ったものだ。

「子供が死ぬのは仕方がない」

 子どもの命を救おうと熱く燃えていた当時の私は、この言葉のもつ深い意味をまだ知らなかった。

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