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大津市でのイジメによる自殺事件、痛ましくてしかたありません。学校にはいろいろな意味での責任があります。

ところで、私が中学3年生のときにも、ある日突然、学校全体でアンケート調査が行われたことがあります。きっかけは、煙草の吸殻がトイレに散乱してあったとか、女子トイレの壁に穴が開けられていたとか、同級生への暴力沙汰も噂に上ったりとかで、非行の全体像を捉えたいと、全校一斉アンケートが実施されたと記憶しています。
 本当に、ある日突然のことでした。

 このとき、3年生では7クラスあるうち、私のクラスだけに非行の該当者がいず、他クラスでは相当数の生徒が保護者と共に学校に呼ばれ、皆が泣きまくったと聞いていました。今にして思えば、あの時の学校の判断は正しかったのだと思います。
即ち、学生生活に異変を感じたらすぐに調査を始め、その調査結果を基にすぐに解決への道を取った。生徒にも保護者にも厳正に当たった。

 チクリは正しい行為なのです。
 今回の問題は、そのチクリを活用できなかった学校に問題があるといえそうです。
 

●教師になってほしくない学友たち

 とはいえ、今回は大津市の事件についてではなく、教師そのものについて書きます。

 私は大学では教育学部に属していました。しかし教師にはなりませんでした。途中から向いていないと思ったからです。
 教育学部には1学年で数百人が在籍していましたが、ほとんど例外なく卒業後は教師になり、教師にならなかったのは私の他にもう一人だけと思います。彼は、自分のやりたいのは教師ではないと悟り、陶芸家の道を歩み、今、それで食っています。

 この親友とたまに会うたびに話すのが「オレたちの同級生にだけは、オレたちの子どもの担任にはなってほしくないな」ということです。
 無論、半分は冗談です。しかし、半分は本当にそう思っています。
 
 おそらく、大学3年生の頃、多くの学友が考えたはずです。自分は教師に向いているのかと。
 だが、そこで軌道修正せずに、多くが教師になっていきました。その理由はわかります。軌道修正には悩みとエネルギーがつきまとうからです。

 私が見る限り、学友たちは3つに分類されます。

1.是非とも教師になってほしい人(3分の1くらいでしょうか)
2.う~ん、どうかなと思う人(これが一番多い)。
3.絶対に教師になってほしくない人。

 困るのが、もちろん、最後の「3」です。

 学生寮で暴力事件を繰り返すヤツ、明らかに教師になりたくないのに教育学部に入学したヤツ、人はいいけど内にこもる研究者タイプ、人生のいろいろな壁と向き合わないヤツ等々。

 そのなかの一人は、私たちが大学1年生のときから「あいつは教師は絶対に辞めたほうがいい」と評価していた人物です。
 だが、彼は卒業後そのまま教職へ。
 だが、幸か不幸か、校内暴力で荒れた学校に赴任し、すぐに担任を持ち(こういう人事は辞めてほしい)、結局は、やっと「自分には合わない」と悟り、1年で教師を辞めて企業に転職しました。
 これは、学校のためにも彼のためにも賢明な選択でした。

 だが、辞めない人間が圧倒的に多いわけです。


●公務員だから

 私は4年間の教育学部の生活で、なぜ、学友たちが教育学部を選んだのかがおぼろげに判ってきました。
 一つには、純粋に教師になりたいということ。一つには、国立大学とはいえ、私の大学の教育学部は他の学部、他の大学と比べると、入試の偏差値がやや低めだったこと。一つが、教師を、生涯、身分の安定した公務員として考えていること。

 私の学友、先輩、後輩たちが今、イジメや不登校、学力低下や友人関係や家庭事情に悩む生徒の心に、どれだけ立ち向かっているのかは判りません。なぜなら、大学の4年間で、特に最初の3年間は学生寮にいたこともあり、何かに一所懸命に生きた姿や、友人や後輩に心からの支援を寄せたり、はたまた、社会の問題に対して(政党系の学生を除き)「間違っている!」と声を挙げるなどの学生をほとんど見たことがないからです。

 学生寮の先輩は毎日「あーあ、なんかいいことないかなあ」とつぶやき、ある先輩は毎日パチンコ屋通い。ある先輩は夜中にリュックを背負ってのリンゴ泥棒。ほとんどの先輩は学生寮の廊下にゴミを山積み。この点、工学部や農学部の学生寮はとてもきれいで、教育学部の学生寮は本当に汚かった。そして、暴力事件を繰り返す隣人。
 こいつら、本当に教師になるんか? と何度も思ったものです。
 
 また、大学4年生のときの教育実習が終わった打ち上げの飲み会で、そこの中学校の先生がこう言ったものですーー「原爆だって自然淘汰の役割を果たしたと思うんですよ」「そうそう!」

 一般社会では許されないこんな放言も、密室である学校では言い放題です。


●チームワーク

 とはいえ、上記、3分類のうち「2」に属する人間は、伸びるかもしれないと思っています。
 人間は成長するからであり、学校といういろいろな教師の混ざり合う環境でもまれれば悪い方向には行かないからです。

 たとえばイジメのない「いい学校」とは何かと問うたとき、そういう学校に勤務する先生が返す言葉は共通しています。

 「チームワーク」

 教師同士の連携で強い学校運営がなされているかどうかです。

 逆に、そういう連携がない学校は、なんでもかんでもが、担任一人の裁量に任されるだけ。
 つまり、やる気もあり、問題解決のノウハウも身についていて、ついでに体力もある。こういう頼もしい教師の下では生徒も安心して学べると思います。
 だが逆に言うなら、そうではない人間が担任になった場合、イジメなどにはろくな対応はしてくれないことを意味します。
 
 私たちが求めるべきはそういう「金八先生」ではなく、ごく普通の教師でいいのです。普通の教師であれ、要は、学校全体としてイジメに対処する体勢を敷いているかどうかです。


●なぜ認めないのか

 イジメがあったとき、ほとんどの学校では判を押したように、学校長も担任教師もイジメの存在を認めません。認めたとしても、自殺とは関係ないと主張します。

 理由はいくつかあって、その一つが「査定」です。

 たとえば、東京都では全公立学校に「教員等人事考課制度」が2000年に導入され、毎年、教師は副校長や校長に「通信簿」をつけられるのです。
 あまりにも低い評価だと、その教師には「研修所送り」や「僻地への赴任」などが待っています。

 そして同様に、校長と副校長も教育委員会から通信簿をつけられています。

 つまり、イジメがあると、学校運営がなっとらん、ということで、低い点数をつけられ、彼らもまた、僻地行きや(ちなみに、私は教育に都会も僻地もないと思う)、60歳の定年退職から5年間勤められる非常勤教員の採用試験にも不合格になるなどの処分がある可能性があるのです。

 ただ、それは一つの理由に過ぎず、やはり根本問題は、心の底から教師になりたくてなったのではない人間がちらほらいることにもあると思います。

 教育学部の4年間。学生は何をして過ごすと思いますか?

 たとえば、理科の専攻ならば、工学部の理科と同じように、4年間ひたすら実験や実習の日々です。
 私は数学の専攻でしたが、4年間、解析、幾何学、代数学など、いわゆる純粋な数学ばかりを勉強していました。いかに、生徒に理解されやすい授業を作るかなどの教育関連の授業は本当に短時間です。
 私の卒論だって「応用解析学」であり、教育とはまったく無縁の学問です。

 教育実習にしても、私たち国立大学の場合で5週間、私立大学で2週間程度だけ。
 はたまた、教員採用試験も、いわゆる一般教養と専門科目の筆記試験があるだけで、教育にかける人物像までは見てくれません(数分間の面接だけはあります)。だから、前述の、1年で辞めた彼のような学生でも教員採用試験に合格するわけです。
 もし、彼が今回の大津市の学校にいたとしたら…。やはりイジメがあっても対処せず、いざ事件のときも、イジメを認めなかったと思います。

 ただ、教師の連携の強い学校では、もまれて成長するものなので、私の学友たち(特に中学校や高校の教師になった人)が果たして、イジメや校内暴力、生徒の学内外での悩みにどこまで体を張っているのかは知りたいところです。


●ついでに

 だいたい、人生経験が乏しい22か23歳で教職につき、いきなり担任をもつのも歪な話です。私は、できれば、教師というのは、ある程度の社会人経験がある人間がなったほうが絶対にいいとの持論をもっています。

 子どもたちはやがて社会に巣立つ。その社会がどういうところなのかを身をもって知っている人が語る言葉は本物です。
 もちろん、社会人経験がなくても、長期休暇のたびに、いろいろな社会問題の現場と関わることで社会を知ろうとする先生たちであれば(実際にいます)問題ありませんが、そういう教師は少数です。
 また、特に東京都がそうですが、今の教師は授業関連だけではなく、事務報告というペーパーワークに忙殺されていて、生徒のために時間を割けないという本末転倒な教育現場に身を置いている。これはこれで改善していくべきでしょう。

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2012/07/26 01:21 教育 TB(0) コメント(0)
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