リニア中央新幹線、ウラン鉱床は避けて

　ここのところバタバタしておりまして、ブログに書くネタはいくつもあるのに、まったく書けない日々が続いていました。

　簡単な宣伝です。

　といっても時期をやや逃しましたが、先週発売された週刊ＳＰＡに、私の書いたリニア中央新幹線の記事が載っています。
　ＳＰＡは首都圏では火曜日発売なので、つまり、本日までに書店に行けば買える可能性があります（在庫があればですが）。

　今回、初めて記事として書いたのは、リニア新幹線のトンネル工事で、もし岐阜県にある日本最大のウラン鉱床にぶつかってしまったらどうなるのか、なぜ、それが危ないのかということです。

　もしかしたら、もう書店に雑誌がないかもしれないので、記事の概要を以下に記します。
　放射性物質を含む土壌を一般社会に出すことは避けなければなりません。だからこそ、岐阜県の知事もＪＲ東海に対して「ウラン鉱床を回避せよ」との意見書を出しているのです。

ーーここからーー

　リニア中央新幹線は、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県、岐阜県、愛知県をほぼ直線で結ぶのだが、岐阜県では、他の都県にはない特殊な問題が起こるかもしれない。

　リニアが通過する東濃地区には、全国の6割もの埋蔵量が集中する、日本最大のウラン鉱床がある。そこに地下トンネルを掘ったら、膨大なウラン残土が排出されるのだ。

　リニアは品川から名古屋までの８割を地下か山岳トンネルで通過する。東濃地区も地下トンネルの予定だ。そして、リニアはその高速性ゆえ、真っ直ぐか最小曲半径８kmという大カーブでしか曲がれない。つまり、トンネル工事でウラン鉱床が出てきたとしても回避できないのだ（ただし、傾斜のきつい坂の走行能力は、従来の新幹線より高いので、上下運転で回避できる可能性はある）。

　今年２月、古田肇岐阜県知事はリニア計画に関してＪＲ東海に意見書を送った。自然環境や騒音など33項目についての厳しい対処を求めたが、その冒頭で訴えたのが「ウラン鉱床の回避」だ。

●ラドンガスが存在する

　そもそもトンネル工事でウラン鉱床にぶつかると何が起きるのだろうか？　保健衛生などの研究機関、国立保健医療科学院のＹ研究官はこう説明する。
「ウラン鉱床には、放射性物質の一つであるラジウムが崩壊した気体のラドンガスが存在します。海外のウラン鉱山労働者の疫学調査では、これで内部被曝し肺ガンのリスクを高めることが判っています。鉱床でのラドン濃度は、高ければ、１㎥あたり４０００～４万ベクレルで存在します」

●ラドンは肺がんを引き起こす
　
　ラドンがどう肺がんを引きこすのか？　Ｙ研究官が勧めてくれた「ＷＨＯ屋内ラドンハンドブック」にはこう書いてある（要約）。
「ラドンを吸入→ラドンが崩壊して放射性物質ポロニウムが生成→ポロニウムが照射するアルファ粒子が肺の生体組織と反応しＤＮＡ損傷を引き起こす。これはどんなレベルの被ばくでも起こりえる」

　岐阜県でのトンネル工事の従事者はしっかりした防護体制で臨まないといけない。また、問題は労働者に留まらない。採掘で排出されるウラン残土もまた、高濃度のラドンガスを発生するからだ。

●ラドンガスでガン死が相次いだ地区

　岡山県と鳥取県にまたがる人形峠では、’57年から原子燃料公社（現在の「日本原子力研究開発機構」）によるウラン採掘が行われたが、野積みされたウラン残土の風下に位置していた鳥取県の方面地区では、鉱山閉山後の’66～’94年の間に、人口約１００人のうち11人がガンで死亡。うち６人が肺ガンであった。この調査に携わった京都大学原子炉実験所の小出裕章氏はこう語る。

「ラドンの濃度は通常の空気には、１㎥あたり10ベクレル程度。法令では、鉱山の坑道などでは３０００ベクレル以下、一般居住区域に流す場合には20ベクレル以下にするよう定めていますが、人形峠の坑口でのラドン濃度は10万ベクレルに達したことがあります。気体のラドンは風に乗って方面にまで流れたのです。ウランの半減期は45億年。ひとたびウランを掘り出すと、その残土は半永久にラドンガスを放出し続けるのです」

　そして採掘から半世紀以上経った現在でも、人形峠のあちこちで述べ49万㎥ものウラン残土が、野積みされたまま今も放射線を放っている。

　かたや、リニアのトンネル工事で、岐阜県では約３００万㎥の残土発生が推測されている。人形峠の野積みウラン残土の約６倍。

●ウラン鉱床にぶつかったらどうするのか？

　もっとも、全ルートにウラン鉱床があるわけではなく、また、ＪＲ東海も全力でウラン鉱床の回避をするはずなので、発生するウラン残土はゼロかもしれない。だが問題は、出てきた場合にどう処理するかだ。
　ＪＲ東海はこう回答した。

「ウラン鉱床にぶつかってしまった場合の残土処分は具体的には決まっていません。ただ、現在の、放射能汚染された震災がれきのような処分も参考にしたいとは考えております」

　本決まりではないにせよ、ウラン残土を県外に出す可能性もあるということだ。

　ところで、東濃地区での地中の地層は判明しているのだろうか？

　東濃地区には、将来の高レベル核廃棄物の地層処分をするための研究所、日本原子力研究開発機構の「東濃地科学センター」がある。その地域交流課に尋ねたところ、こう回答した。

「私どもは、研究のため東濃地区で数十本のボーリング調査を行っていて、地中の地層をある程度は把握しています。でも、実際は、掘ってみないとどんな地層が出てくるかわからないのが現状です。ウラン鉱床にぶつかった場合、当然ラドンガスは出てきます」

　その場合の労働者や周辺住民への対応は何も決まっていない。ＪＲ東海には徹底したウラン鉱床の回避策を練ってほしい。。


ーーここまでーー
　
　全国各地で、震災がれきの受け入れ反対運動をしている人にこそ読んでほしいと思っています。

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