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●防犯カメラは活躍したが

 オウム真理教の高橋克也容疑者が6月15日に逮捕されました。
 この逮捕の前に、テレビで盛んに報道されたのが、「どこそこの防犯カメラに映っていた高橋容疑者」です。

 防犯カメラは今や全国あちこちの街角に合計200万台以上設置されていますが、私たちが驚いたのが、一日に一台のカメラに数十万人も撮影しているであろうその映像から1日とたたずに「高橋容疑者はここにいた」との情報を割り出したことです。

だが、当たり前の話ですが、高橋容疑者だけではありません。田舎を除けば、私たち一人ひとりが毎日どこかの防犯カメラに撮影されているのです。

 そして私がわからないのは、この撮影された映像を国のどこの部署が、どのくらいの期間、監理しているかということです。


●ICパスポート

 まず、防犯カメラですが、これは近い将来、衝撃的な機能でもって私たちの前に現れます(一部は実現していますが)。

 2005年3月、東京で防犯製品メーカーの見本市が開催され、私はこの取材に赴いたことがあります。
 どこのメーカーもしのぎを削っていたのは「顔認証システム」です。

 指紋が一人ひとり異なるように、「顔情報」も異なります。顔情報とは、単なる顔写真的な情報をいうのではなく、たとえば、右目と左目との距離、両目の端から鼻の頭を結ぶ角度、眼窩・鼻・あごの輪郭等々、何十もの特徴を指します。

 メーカーが開発を進める顔認証防犯カメラは、あらかじめ登録しておいた人物の顔情報データとピタリと合う人間を捉えると、即座にその人物を追尾するというものです。
 もしくは、社員証の代わりに、出社の際に、防犯カメラが社員と認識してくれたら入り口を開けるということもできるそうです。

 しかし、ここで疑問なのは、社員用ならともかく、データベースとなる元々の顔情報をどうやってストックしておくかです。データベースがない限りは、どんなに顔認証防犯カメラが発達しても、犯人の捕らえようがありません。

 ところが、じつは国は既に3000万人分の顔情報を所有しています。いったいいつ? どこで?

 答は、2006年3月から始まった新型パスポートの申請の際に提出した顔写真です。これを電磁的に変換したデータが、新型パスポートに搭載されているICチップに格納されているのです。
 今、そのICパスポートで日本を出入国する場合、私たちは出入国管理官の前で手続きのために数秒間止まっていますが、そのとき係員の背後にある防犯カメラが私たちの顔を捉え、それがICパスポートに記載されている顔情報と一致するかの作業をしているのです。
 これは表向きの理由は、偽パスポートなどを使う不法入国者を防ぐためといわれています。


●警察がお得意様

 顔認証カメラはその4年前の2002年、サッカーの日韓ワールドカップでもひそかに使われていました。
 02年5月、成田空港と関西空港の税関エリアにおいて、6月開催のワールドカップに来日するであろうフーリガン対策のため。

 つまり、日本政府は欧米諸国からフーリガンたちの顔情報を得ていたのです。だが、設置者である財務省は、“効果の実績は”“現在も運用中か”“他空港での使用は”等の質問には「いっさい答えられない」と回答するだけでした。

 同様に、パスポート申請のたびに国が集めた顔情報は、国のいったいどこの機関が保持するのか? これには、外務省も法務省も明確な答を寄こしません。

 そこで、私は見本市でメーカーの担当者に尋ねてみたのです。
「この技術はいったいどう活用されるのですか?」
「ここだけの話ですが、お得意様は警察です。顔認証データは警察のサーバーに蓄積し、それとつながる監視カメラが手配犯や不法就労者などの顔を認識すると、警察内部に通知するといった活用を予測します。また、検挙した人間の足取りも、その個人名で検索すればいくらでも過去の映像が出てきます」

 たとえば、警察が「山田太郎」という男を怪しんだとします。この男は逃亡中。そこで、警察は防犯システムのコンピュータに「山田太郎」と入力すると、その顔情報とピタリと合う情報を全国の防犯カメラが捕らえていたかをコンピュータが検索。1秒以内には、全国のどこかの防犯カメラに山田太郎がx時x分に映っていたとの情報が入るわけです。
 すると、即座に、その防犯カメラに一番近い警察署から警官が出動する・・という仕組みです。

 見本市のメーカーの担当者はこう言いました。
「人物の特定に要する時間は0.2秒。1分間で6000万人の人間の照合も可能です。他人と間違える誤認識は0.7%。顔認証の利点は、指紋や虹彩と違い、読取機の前で止まる必要がなく、動いていても大丈夫なことです」

 もっとも、顔認証システムも、斜め上などから、角度のきつい撮影や、サングラス着用には正しく認識しないことがあるので、まだまだ課題もあるのですが、上記のような活用方法はいつか実現すると思います。

 ただ、これが単純に犯罪者逮捕だけのためのシステムなのかは大いに疑問とするところです。
たとえば、ICパスポートがなぜ始まったかというと、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件以後、アメリカが、同年12月、不審者の入国を阻むため、アメリカとビザ免除協定を結んでいる22ヶ国からの入国には、顔、指紋、虹彩などの生体情報を搭載したICパスポート所持が義務化されたからです。
その22カ国でのパスポートの数はざっと3億3000万冊(日本は3000万冊)。

 そして、04年3月、世界35の国際人権団体がいっせいにICパスポート普及への抗議声明を出しました。「プライバシーがなくなり、個人の生体情報が国境を越えて管理されてしまう」と。

 また、パスポートの件は抜きにしても、私たちはまったく自治体からも国からも相談も周知もされぬまま、防犯カメラに日常生活を撮影されています。それは、鼻をほじっている場面、駅での別れで恋人を抱きしめる場面、酔っ払って誰かにからんでいるしょーもない場面かもしれません。これら映像は、おそらくはある程度の期間は保存されているはずです。


●欧米との違い

 ここに、欧米との大きな違いがあります。

 欧米にも既に、顔認証監視カメラは稼動しています。
 だが、基本的には、『国民との合意形成』と『情報公開』が存在することです。それは、日本にないことです。

 たとえば、02年、アメリカ・バージニア州のパームビーチ市では、警察が顔認証監視カメラ13台を設置。これは、警察が、市議会や市民団体との間で利用ガイドラインを作り、照合されなかった顔データの即時破棄を取り決め、手配者や行方不明者などに限り運用が始まったのです。
 
 イギリスのロンドン東部ニューハム地区では、悪化する治安に98年、300台の顔認証カメラを設置しました。犯罪発生は3割以上も減ったが、この運用は自分も撮影される可能性があるものの、そのメリットとデメリットを総合的に考え、地域住民の92%が賛同し、設置台数と設置場所を決めたという事例もあります。
 
 逆の事例としては、01年2月、米フロリダ州のスーパーボウルで主催者が無断で入場者を撮影し、顔認識システムで犯罪者データベースと照合したことが明るみになると大勢の怒りを買い、暴動寸前の社会問題に発展したこともありました。

 つまり、欧米では、監視カメラの運用情報を市民は求めることができるし、当局はそれに応じねばならないルールが存在します。市民の意志が最優先されるということです。

 ところが、我が日本では、誰一人として相談を受けることなく、なし崩し的にカメラが設置され、個人情報を国に吸い取られています。


●防犯カメラの将来

 将来、顔認証監視カメラはどう使われるのか? 個人情報問題に詳しい白石孝氏は「まずは、手配者や前科者などから手がけることで、社会から顔認証監視カメラのアレルギーを取り除きます。次の段階として、我々のような市民運動、労働組合、左翼系団体などがマークされるはずです」と予測します。

 今回の高橋容疑者の逮捕で、おそらく、多くの国民は「なるほど。防犯カメラは大切だ」と認識したことでしょう。
 私も防犯カメラには一定の力があると思います。すべてを否定することはできません。

 だが、どの人にも他人には見られたくないプライバシーがあるはず。防犯カメラの持つメリットとあわせ、では総合的にどう考えるかです。

 日本において、個人情報が大量に漏れるのは日常茶飯の話であり、防犯カメラが集めた個人情報がどう運用されるかはまったくのブラックボックスです。この運用には私たちの民意が試されているのだと思います。

 ちなみに、ICパスポートや顔認証カメラについて書いた記事は、私のHPで公開しています。こちらです

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2012/06/16 23:34 人権 TB(1) コメント(0)
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●防犯カメラは活躍したが オウム真理教の高橋克也容疑者が6月15日に逮捕されました。 この逮捕の前に、テレビで盛んに報道されたのが、「どこそこの防犯カメラに映って
2012/06/20 05:51 まとめwoネタ速neo
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