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●廃品回収業者が始めた養豚業

 今朝、NHKテレビの「うまいっ!」で、鹿児島県の農業生産法人「えこふぁーむ」の「山を走る豚」を取り上げていました。
 この放牧豚は私も取材したことがあります。

 山の中をドドドドと走る豚を実際に目にするとある種の爽快感を覚えます。と思えば、ある一群は泥のなかでノンビリと昼寝をしている。

 「えこふぁーむ」の中村義幸社長の本来の仕事は廃品回収業。社名は㈱トップライン。
 それがなぜ養豚、しかも放牧にまで手を出したのか?

 妻であり専務のえい子さんは、実際にごみ収集に当たってきた人ですが、こう説明してくれました。
「ゴミのなかでも一番ずっしり重いのは生ゴミなんです。量も膨大。これをなんとかしたいと思っていたら、2001年に『食品リサイクル法』が施行されました。生ゴミをリサイクルしなさいとの法律ですが、そのときにピンと思い出したのが、小さいときに残飯で飼っていた子豚だったんです」
 
 そこで、中村夫妻は知人から子豚2頭を購入し、こともあろうに、えい子さんの母親の名前をつけ、まあ、それはどうでもいいのですが、残飯を与えると2頭はきちんと育ち、無事出荷されていきました。

 これを機に、さらに20匹を仕入れるのですが、ここで横井愼治さんが事業に参画したのがじつに大きな力となりました。
 横井さんは地元の大手豚肉加工会社に勤務していましたが、自分たちの豚肉製品が最終的に誰が食べるかわからない流通システムに疑問を抱き、また、私たちの多くが想像する「鹿児島の黒豚=健康豚」ではない実態を見ていました。

「ほとんどの養豚業者は、狭い豚舎に豚をぎゅうぎゅうづめ。だから豚はストレスで互いの尻尾を噛み切るので、あらかじめ尻尾も牙も抜いてしまいます。そして、抗生物質とワクチンと配合飼料で豚を無理やり太らすのです」

 そこで横井さんは、せめて自分なりの養豚をやりたいと、出勤前の時間を利用して、40頭ほどの豚を放牧させていたことがあるのです。

 そういうことで、えこふぁーむでは、「牙抜き」と「尻尾切り」を行いません。また、「味が落ちる」との理由ですべての養豚業者が行う「去勢」も行いません。

「今の養豚のほとんどは工業豚です。味のためとはいえ、去勢するのは可愛そう。オスはオスとして生きたいのですし」(中村社長)

 豚舎はありますが、それは生まれたての子豚と母豚のために用意したもので、広さはゆったりとあり、木材チップを敷き詰めているため清潔が保たれています。

●荒山が地味豊かな大地に

 えこふぁーむが放牧を実践して、中村夫妻が驚いたことがあります。
 荒れた杉山があっという間にきれいな大地に生まれ変わることです。というのは、豚は、鼻で土を掘り返しながら、土のなかの虫や植物を食べて歩き回るので、幹の細い杉であれば豚に倒され、さらに豚の糞尿で土はどんどん肥えてゆくのです。

 えこふぁーむの事業を整理すると

★地域の各施設(病院や老人ホームなど)で出た残飯を真空乾燥機で加熱処理し単味飼料を加えて豚の嗜好と栄養を配慮したものに加工。

★子豚を豚舎で飼育。母豚の母乳で育てるが、母豚などにはエサをあげる。

★ある程度大きくなった子豚は、放牧地に放す。

★豚舎で使う木材チップには糞尿が混ざるが、数ヶ月熟成させると堆肥になり、それを豚が耕した大地にすき込めば、再び豚の好きな野菜などを作れる。


●効率は悪いが
 
 とはいえ、これは普通の養豚業者から見れば極めて効率の悪い方法です。
 普通は3キロの餌で600~900グラム太るのに対し、えこふぁーむでは運動量が多いため、400~500グラムしか太りません。しかも、去勢していないので、初期の頃は「どんな味になるのか想像もつかなかった」そうです。

 そこである日、中村夫妻は、その豚肉をトップラインと関連会社の社員70人に何の説明をせずに食べさせたのです。すると、去勢していな豚につきものの「臭み」についての声は聞かれず、むしろ「独特の味がする」「弾力がいい」と評判で、詳しい経緯は省略しますが、その後は日本各地のレストランで使用され、数年前、世界首脳が集まった洞爺湖サミットではその食卓に添えられたのです。


●ファンド

 さて、ここからが本日書きたいことです。
 ただ、これをはじめた初期の頃の悩みは、飼育頭数が少ないため、事業が採算的に軌道に乗らないことでした。もっともトップラインの売り上げを利用する手はありますが、それもいつまでも続きません。

 そこで思いつくのは金融機関の利用ですが、この養豚業では「非常識」な事業にカネを貸してくれるところなどあろうはずもありません。

 そして2004年、中村社長がインターネットで見つけたのが「apバンク」でした。

 apバンクは、音楽家の坂本龍一さん、櫻井和寿さん、小林武史さんの3人が資金を出し合い設立し、環境に優しい事業、社会的事業などに年利1%で融資を行うという「NPOバンク」です。

「当面はトップラインの資金を使ってもいい。でも私は、従来の金融機関にはない、お金が誰にどう使われ、それが再び循環するという主旨に賛同して、是非、融資を受けたいと思ったんです」

 中村社長はこれに500万円の融資を依頼。そして審査の結果、無事融資を受けることができました。
 そして、中村社長がびっくりしたのが、その後、櫻井さんが視察に来たことです。
 櫻井さんが長靴をはき、豚と一緒に歩き、豚を抱く。「自分が働いている分以上のお金が入ってくることの心苦しさ」を覚えていたという櫻井さんにとっても、apバンクを始めてみて、目の前で自分たちのお金が確かに社会のために循環している事実を確認できたのは大きな喜びとなったのです。

apバンクは、毎年夏に3日間の野外ライブ「apバンクフェス」を開催しますが、会場内では、えこふぁーむだけではなく、ap bankから融資を受けたすべての団体のブースが並びます。


●新しいファンド

 そして2010年、えこふぁーむは新たなファンドを受けることにしました。
 当ブログでも何度か紹介しているミュージックセキュリティーズ㈱が運営するファンドを利用することにしたのです。

 これは、子豚100頭を育てる経費と借地料金、さらに豚が開墾した土地に西洋野菜を育てるための諸経費などの資金を募集したものです。
 一口3万円、351口の募集(1053万円)はすぐに完売し、5年間の運営の後、事業が順調に推移すれば、元本に加え分配金の配当もあります。
 そして、出資者への特典は、

 ・放牧豚しゃぶしゃぶ用薄切り肉、・放牧豚加工品セット(ソーセージ、生ハム)、・えこふぁーむ隣接レストランホテル「森小休」宿泊ご招待(2食付、交通費別途)、・生ハム工房見学ツアーご招待
 と盛りだくさん。

 同様のファンドは2011年にも募集され、こちらも完売。

 2012年の募集は? わかりませんが情報を待ちたいところです。


●地域も巻き込む

 えこふぁーむを始めた当初は、地域住民は「豚の放牧反対!」との立て看板をあちこちに設置していました。ところが今、その事業が認められると、地域の子どもたちの見学も増えてきました。

 中村夫妻には夢があります。

「せっかく豚さんが耕してくれた土地です。こんどはここに広葉樹林を植えたい。ええ、子どもたちと一緒に。
広葉樹林なら、秋にどんぐりを落とし、それを豚さんがまた食べる」

 エコファームの活動は、単なる養豚に収まらず、今では、環境教育の場でもあり、お金の循環を実感する場で
もあり、本当に人に求められる事業とは難なのかという経営哲学を学ぶ場でもあります。

 中村社長は、たまたま私と同じ北海道出身ですが、今後とも応援して行きたいと考えております。

 おそらく、NHKを見て、えこふぁーむへの問い合わせが殺到しているかと思います。じつは、もう数年も前から同社のHPを見て、えこふぁーむへの見学者は絶える事がないのですが、中村社長はそれを意に介さないようです。
 
「多くの見学者や研修生が来てくれるのはいいことです。人との輪が増えていくのは嬉しい。私たちに休日はなくなりましたが(笑)」(義幸さん)


 ちなみに、2006年に私が書いた本に、上記、apバンクやミュージックセキュリティーズのことなどが書いてあります。

「新しい貯金」で幸せになる方法―あなたの生活を豊かにする「NPOバンク」「匿名組合」のススメ「新しい貯金」で幸せになる方法―あなたの生活を豊かにする「NPOバンク」「匿名組合」のススメ
(2006/05)
樫田 秀樹

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タイトルがやや怪しいですが、日本で活発になりつつある、市民による市民のための金融機関「NPOバンク」と、いろいろな事業を市民の出資で支え、しかも、出資者には分配金の配当もあるかもしれない「匿名組合」という、新しいお金の流れについて書いた本です。従来の銀行貯金や郵便貯金が動脈だとすれば、NPOバンクや匿名組合は日本経済の静脈を元気にするシステムです。事例が満載されています。



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2012/05/01 15:19 NPOバンク TB(1) コメント(1)
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●廃品回収業者が始めた養豚業今朝、NHKテレビの「うまいっ!」で、鹿児島県の農業生産法人「えこふぁーを実際に目にするとある種の爽快感を覚えます。と思えば、ある一群は泥のなか...
2012/05/01 17:01 まとめwoネタ速suru
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 リニア中央新幹線の取材範囲は、東京都から愛知県までと広範囲で、多大な取材経費を要することから、数十組もいる会うべき人たち・組織の多くに会えないでいます。また、リニアに関する記事を書こうにも、ほとんどの雑誌はJR東海が広告主であるため、記事を掲載できず、取材するほどに資金力が落ちる状態が続いています。今後は、再び単行本の発行を目指しますが、私のリニア中央新幹線に関する取材へのご寄付をお願いできないでしょうか?  カンパをしてくださった方には ★ブログに記事を掲載する際のお知らせ。 ★雑誌に記事を載せる場合の、掲載誌送付。 ★単行本を出した際の、一冊謹呈。  など、せめてもの特典を用意いたします。  なお、いただいたカンパは以下の用途に限定します。 ★取材地までの往復交通費。 ★取材地での宿泊費。 ★リニア中央新幹線に係る資料代。  食費は自己負担としますが、使用明細は公開します。  ご協力いただける方は以下の口座への入金をお願いいたします。  みずほ銀行・虎ノ門支店・普通・1502881 カシダヒデキ  ご入金に際し、ご住所や連絡先などを教えていただけたら助かります。どうぞよろしくお願いいたします。
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