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●木材住宅は弱い?

 首都圏で3年以内に大震災が70%の確率で起こると報じられてから、にわかに、その被害シミュレーションなどがマスコミを賑わしています。

 そこで必ず強調されるのが、「密集した木造住宅が危ない」ということです。

 確かに、火災には弱いかと思います。だが、地震にも弱いのか? これには私は異論があります。

 というのは、1995年の阪神大震災において倒れなかった木造住宅もあったからです。


●170軒建てて倒れたのは1軒だけ

 このことで思い起こされるのは、神戸市東灘区の棟梁、天王寺谷巳之助(てんのうじや・みのすけ)さんです。

 私が天王寺谷さんと会ったのは震災から2年経った1997年の1月だったと記憶していますが、住所を頼りにご自宅を訪ねてびっくりしました。
 震災当日、阪神高速道路が倒壊したのは大きなニュースになりましたが、棟梁のご自宅である木造住宅はその道路沿いにあったのに、ヒビ一本ない状態で建っていたからです。

棟梁自宅←写真手前が棟梁宅。右に見えるのが倒壊した阪神高速道路。
 
 棟梁は当時86歳で、体力の衰えから、それ以前に大工を引退していました。棟梁としての現役中は神戸に170軒の家を建てていました。

 私が驚いたのは、その170軒の木造住宅のうち、大震災で倒壊したのはわずかに1軒だけだったということです。しかも、その1軒にしても、専門外である軽量鉄骨での構造部分だけを外注した2階建てアパート。

 つまり、170軒のうち100%自身が手がけた木造住宅169軒は無事で、その部分だけは手がけなかった、丈夫と言われていた鉄骨を使った住宅が倒壊したということです。

 私と会った当時、棟梁は言葉もややたどたどしくなっていましたが、それでも、自分が作った住宅すべてが無事だったことを話す時は、本当に嬉しそうに「大工冥利に尽きますわ!」と声を出していました。

図面←手がけた家の図面を大切にしていた天王寺谷棟梁


●普通の工事だった

 そこで私は棟梁に尋ねたのです。

「何か特別な工法を採用していたのですか?」

 棟梁は即答しました。

「してまへん。昔、師匠に教わった通りに、柱を基礎に固定し、通し柱を多く入れて、筋交いをしっかり作っただけです」

 つまり、棟梁はあくまでも普通の家を作っただけなのです。


●なぜ、阪神大震災の神戸では多くの木造住宅が倒壊したのか?

 財団法人・日本住宅・木材技術センターによる震災後の調査はこう結論付けています。

 倒壊した住宅の共通点は

・壁の少なさ
・基礎のない柱
・いいかげんな筋交い
 
 が多かった。

 つまり、「普通の家作り」をしなくなった大工が相当数いたということです。つまり、阪神大震災では死者の8割前後が住宅の倒壊による圧死だったと伝えられていますが、もし「普通の家」に住んでいれば、多くの方が死を免れたはずです。

 私が棟梁に会うきっかけになったのは、同じ東灘区に、友人の永田健一さんのお父さんが住んでいたのですが、そのお父さんのご自宅が倒壊したことで、健一さんが、「すぐ近所に倒壊しなかった木造住宅がいくつもある。どうも同じ大工が建てたらしい」と教えてくれたからです。

 そして健一さんのお父さんは、こう言いました。

「あの天王寺谷のオヤジは嫌われとったでえ。何せ、施主の注文を絶対に受けつけんかったからの。全部自分の思い通りに家建てよった。『もっと間取りを広く』という注文にも、『そんな作りじや家がもちまへん。それで建てるなら、この仕事なかったことにしてもらいます』と答えて、道具箱をしまって帰ろうとしたことも多かった。だが、今回の地震を境にあのオヤジへの評価は180度変わった」

 そして、健一さんのお父さんの家を建てた大工は?

「ワシんとこの大工はあちこちで手抜き工事ばかりしよったらしい。その大工、今回の地震で自分の家で圧死しよったよ」

 ちなみに、天王寺谷棟梁はご自宅を3ヶ月かけて自分で作ったとのこと。私が訪問したときは築30年でした。


●アリの被害は防げる

 さて、上記のことから、木造住宅はいい大工さえ選べば決して危ないものではないことが分かります。
 ただ、木造ゆえの欠点はもちろんあります。
 
 現在、大阪市立大学大学院生活科学研究科・生活科学部准教授の土井正氏が阪神大震災直後に、同じ東灘区東部地域の木造家屋709戸を調査したところ、シロアリの被害による腐朽も家屋の強度に大きく関わっていたと結論付けています。

 土井氏は、そのことを「頑丈で長持ちする住まいの耐震診断チェックブック」(発行:木構造住宅研究所)のなかでこう述べています。

「(シロアリの)栄養源は木材そのものであるし、制御は困難である。しかしながら、木材中の水分については制御可能であり、乾燥した木材を使用し、断熱材の適正な配置により壁体内での結露の発生を抑えたり、防水や断湿が適切であれば繊維飽和点以上に含水せず腐朽や蟻害を防ぐことが可能である(中略)。維持管理の努力なくして、住宅性能は維持できるものではないことを忘れてはいけない。結局、今回の震災では住まうということの哲学が要求されているように思えてならない」


●棟梁の建てた家を訪問

 私は棟梁にお礼を言ったあと、教えてもらった、棟梁が建てた家を訪問しました。そこも阪神高速道路から数十メートルの位置です。

 そのFさん宅でチャイムを鳴らし、事情を説明すると、奥さんが「それはそれは。せっかくですから上がって下さい」と家に上げてもらいました。
 そこには極めて普通の家がありました。ヒビ一本ありません。奥さんはこう説明してくれました。

「ええ、ウチは全て棟梁にお任せしました。お陰で、アルミサッシに少しガタがきただけです」

 そして印象的だったのが、Fさん宅の周りが空き地だったこと。Fさん宅を除いてすべて全壊してしまったのです。

F宅←手前の空き地には震災まで家があった。建っているのがFさん宅


 これら事実を思い出すに連れ、今、マスコミが言うような、木造住宅そのものが危ないのではなく

・いい大工に家を建ててもらうこと  と
・加えて、定期的に住宅を維持管理する  ことが求められている…と思います。


コウアン先生の人を殺さない住宅―阪神大震災「169勝1敗」の棟梁に学べコウアン先生の人を殺さない住宅―阪神大震災「169勝1敗」の棟梁に学べ
(1996/06)
中村 幸安

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阪神大震災での倒壊事例で、木造住宅は弱い、と言われた。だが、本書では、むしろその逆の事例を取り上げている。木造住宅だからこそ、あの大震災でも倒壊しなかった住宅を手がけた棟梁を紹介しているのだ。それは特別な工事ではなかった。昔ながらの教えを守った工事をしていたからこそ、棟梁の建てた住宅170軒のうち倒壊したのは1軒だけという驚異的な事実が残った。つまり、現在では、手抜き工事をする工務店や大工がいかに多いかを本書は示している。いい家を作りたい人への指南本でもある。



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2012/03/18 17:35 東日本大震災 TB(1) コメント(0)
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まとめteみた【記事の裏だって伝えたい】
●木材住宅は弱い? 首都圏で3年以内に大震災が70%の確率で起こると報じられてから、にわかに、その被害シミュレーションなどがマスコミを賑わしています。 そこで必
2012/03/20 01:07 まとめwoネタ速suru
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