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樫田秀樹

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●窓ガラスを叩き割れ!

 孤立死のニュースが相次いでいます。
 ニュースの内容には共通点があります。

 異変には気づいていた。だが、個人情報保護の観点から、電話連絡しようにも、連絡先をつかむ事ができなかった。あまりにものんきな回答です。

 孤立死。孤独死。

 日本に住んでいる以上、もしかしたら、私にも、誰にでもそういう死に方はやってきます。

 そして、悲しいことに、孤立死が今後高い確率で増えるのは、東日本大震災や原発事故などで仮設住宅に住んでいる方々です。

 私には思い出される取材があります。

 2000年。

 阪神淡路大震災から5年が経っていました。このときには仮設住宅はすでに解体され、被災者は神戸市やその周辺自治体の空きアパートや、新設の復興住宅などに住んでいました。

 その一人、秋月香さん(当時40代)は被災後、ある仮設住宅に住みながら、そこの自治会活動にも携わっていました。
 仮設での問題の一つは、高齢者の孤独死です。
 だが、そこには盲点がありました。青年層も孤独死していたからです。秋月さんはこう振り返ります。

 96年9月のこと。

「仮設住宅のYさん(男性、当時38歳)の部屋から、異臭が漂っていましてね。窓ガラスには得体の知れん虫が無数にはりついている。その虫たちが、畳の隙間を通って隣家にまで忍びこむにいたって、自治会が窓ガラスを壊して調査に入ったんですが・・」

 異臭のこもる中、秋月さんが見たものは、ミイラ化し身長130センチほどに縮んだYさんの遺体だったのです。
。虫が内臓を食い荒らし、遺体から孵化した虫が飛び回っている。死因はアル中による肝硬変。死後一年近くも経っていたのです。

 このときの後悔から、以後、秋月さんたちはわずかな異変があり、こちらの呼びかけに応じない場合は、その場で遠慮なくハンマーで窓ガラスを叩き割ることを始めました。
 個人情報保護法もなかった時代ですが、それでも、人の生死がかかっているときには、やはりこれくらいの行動は必要です。

 その結果、秋月さんたちは、10例の孤独死を発見。平均年齢54歳という若さです。


●若い被災者は盲点

 盲点でした。
 高齢者には行政のヘルパーが訪れたり、仮設の自治会が絶えず留意をしているものですが、まさか30代、40代の青年たちが孤独死するとは誰も考えていなかったからです。
 彼らの多くは、地震で倒壊した街、地震で亡くした肉親や友人、急変した家庭環境や生活環境、労働環境に心を病み、酒に逃げ、部屋に引きこもり、誰に見取られることもなく死んでいったのです。

 そして2000年、公営アパートに移り住んだ秋月さんのご自宅に伺ったとき、秋月さんはある留守番電話を聞かせてくれました。

「仮設で、私のことを『お兄さん』と呼んでくれた女性(30代)がいたんです。震災で両親を亡くしましてねえ。そのショックで、激しい拒食症に襲われ、体重は30キロ以下になってしまって。仕事も休んでいたと思います。でも、仮設のときは私らもいろいろと声をかけることができた。ところが今は、みんながバラバラ。これ聞いてください」

 と聞かせてくれたのが、その女性からの留守番電話。
 秋月さんが働いている昼間に、2、3日おきに留守番電話にメッセージが入るのだといいます。

 そこには、一言、「タスケテエ・・」と、とてもか細い声が吹き込まれているだけで、あとは延々と嗚咽が続いていました。

 秋月さんはいつもこの女性に電話をする。だが出ない。

「おそらく、一日中どこかをさまよっているのかも。とても心配です」


●あぶりだされた孤独

 被災地での孤独死。これは間違いなく起こっているし、ここしばらくは続きます。
 ただ、考えなければならないのは、今回の災害がそれを加速させるものであったとしても、震災前から孤独な高齢者はいたということは忘れてはなりません。

 私には阪神大震災関連で忘れられないニュースがあります。

 それは避難所に暮らしていた高齢女性が「今が一番幸せだ」と取材に答えていたことです。

 なぜか。

 答えはじつに簡単なものです。

 自分のために、毎日、多くの人が、特に孫くらいの年の若者が「おばあちゃん、おばあちゃん」と声をかけてくれる。食べ物も持ってきてくれる。自分の健康を気遣ってくれる。肩だってもんでくれる。

 それは震災前にはなかった日常なのです。
 それが皮肉にも街が破壊された大震災が起こったことで、この高齢の女性にやってきたのです。

 だが今、神戸にはもはやボランティアはほとんどいません。
 
 避難所も仮設住宅もありません。多くの高齢者は「復興住宅」という名の高層マンションへと移り住みました。そこには話をしてくれる誰かがいるわけでもありません。神戸の高齢者は今、鉄の扉の向こうでたった一人で孤独に身を沈めているのです。

 もちろん、これは、それぞれの復興住宅の自治会がどう機能しているかによってその濃淡はあります。絶対に孤独死はさせないと決めている復興住宅では随時イベントを打ち、日常的にも自治会が安否確認の巡回をするなど頑張っているところもあります。

 だが、その活動が熱心でないところでは…。

 数年前、私が支援団体と一緒に神戸の復興住宅を回ったときも、ある一人暮らしのおばあちゃんは「本当によく来てくれはって。これ、よければもっていってください」と、私たちにヤクルトを持たせてくれました。その精一杯のもてなしに私はなんとも言われぬやるせなさを覚えたものです。そこで数十分歓談したら、私たちはいなくなる。また次の数週間、あるいは1ヶ月間、この人は誰とも話をしないで過ごすかもしれないのだ…。


●東北でも同じことが起きる

 今の神戸は、東北の今後の鏡です。

 高齢者だけの問題ではないということ。

 避難所から仮設、そして、仮設から復興住宅へと、住環境がまともになるほどに問題は深刻化すること。

 私は今、もう一度、今の神戸の現状を確かめ、それから東北に出かけようと考えています。

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2012/03/09 11:04 東日本大震災 TB(1) コメント(0)
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まとめteみた【記事の裏だって伝えたい】
●窓ガラスを叩き割れ! 孤立死のニュースが相次いでいます。 ニュースの内容には共通点があります。 異変には気づいていた。だが、個人情報保護の観点から、電話連絡し
2012/03/20 01:07 まとめwoネタ速suru
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