あなたはリニア中央新幹線に乗りたいか？ 速いけど早くないかも。

●運転士のいない時速500キロでの地下トンネル走行

　2027年には東京から名古屋まで。
　2045年には東京から大阪までが開通すると言われているＪＲ東海の「リニア中央新幹線」。

　強力な磁力で車体を地表から10センチ浮上させ、時速500キロで、名古屋までなら40分、大阪までなら1時間7分で到着する。
　
　小さい頃なら、この計画には「飛行機みたいな新幹線に早く乗りたい！」と思ったでしょうが、今は諸々の理由でなかなかそうは思えません。

　リニア計画の詳細部はＪＲ東海から発表されていません。
　とはいえ、計画の概要を知るだけでも、これはいろいろな意味で「凄い」プロジェクトです。

　以下、リニア計画のほんの概要です。これを知って、みなさんはリニアに乗りたくなるでしょうか？

★リニアに運転士はいない。時速500Kmの車体は遠隔操作される。

★大阪までの路線の８割はトンネル。南アルプスの山々にもトンネルが開く。

★地下ルートでは、排気口や非常出口となる直径30メートルの縦杭を５～10Kmおきに設置。もし真冬の南アルプスで事故が遭ったら、どうやって外部から救出が来るのかは、現時点では想定されていない。

★山梨県でのリニア走行実験では、トンネル掘削により、私の知る限り、3箇所の近隣集落の水源が枯れた。南アルプスでは地下の水源が絶たれることで、どう影響する？

★大阪までの総工費は約10兆円。ＪＲ東海の自費建設だが、約３兆円の借金がある同社が負担可能か？　国民負担はあるのか？

★強力な磁力で車体を浮かすので、車内での強力な電磁波の発生が予測されている。
　ＷＨＯ（世界保健期間）は、電磁波の強さが４マイクロガスで小児白血病の発病率が3倍弱になるとの日本の国立環境研究所の研究データを評価。その国立環境研究所は、リニアの床では４万マイクロガウス、つまりその１万倍もの電磁波が出ると発表している。

★その電力供給のため3基から５基の原発増設の可能性が高い。


　もちろん、車掌くらいは乗っているかと思いますが、たとえば、真冬の南アルプスの地下トンネルでリニアが緊急停止。その場合、乗務員の誰かが数キロ離れた縦杭まで客を誘導するわけですが、エレベーター、もしくは階段で地上に出ても、そこは山の中。

　また事故がないとしても、運転士のいない時速500キロの車両の地下トンネル走行。
　１時間前後も強力な電磁波を浴びながらの車窓の景色もない旅。


●リニアの旅は本当に大幅な時間短縮できるのか？

　ＪＲ東日本では、昨年から新幹線の時速３２０キロ運転を可能にしています。

　一方、リニアを予定しているＪＲ東海の現在の最高速度は時速２７０キロ。
　現在、東京→新大阪までは２時間２５分で行けますが、仮に時速３２０キロ運転が可能になれば、単純計算だと、２時間２分という数字が出てきます。
　
　それでもリニアの１時間７分にはかないませんが、ここである計算をしてみます。それは、新幹線もリニアもあくまでも乗車時間の数字だけが出ているのであって、「出発駅の入り口」から「到着駅の出口」までとの時間ではありません。

　リニアの名古屋開通は２０２７年ですが、それ以降は、２０４５年の新大阪開通までは、名古屋から新大阪までは、新幹線に乗り換えることになります。そして、東京（品川）、名古屋、新大阪でのリニアの駅は大深度法（11年11月29日のブログを参照。http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-110.html）でできるので、地上から地下のホームに行くのに、従来の新幹線よりはプラス５分はかかる場合が想定されます。

　また、リニアは従来の線路ではなく、ガイドウエイという磁力コイルを板状にした床面と側壁の中を走るので、新幹線や在来線へのスムーズな乗り換えは期待できません。

　となると、次の試算は乱暴でしょうか？

　★ケース１　　東海道新幹線が、ＪＲ東日本と同様に時速３２０キロ運転になった場合

　品川駅の入り口　→　新幹線のホーム　　５分～10分
　新幹線で新大阪まで　　　　　　　　　　１時間５６分（東京／品川にかかる６分を２時間２分から引いた）
　新大阪駅のホーム　→　駅の出口　　　　５分

　合計　　　　　　　　　　　　　　　　　２時間６分～２時間１１分


　★ケース２　　名古屋までリニア。名古屋から新大阪まで東海道新幹線の場合。

　品川駅の入り口　→　リニアのホーム　　１０分～１５分
　リニアでの名古屋までの移動時間　　　　４０分
　名古屋での東海道新幹線への乗換　　　　１５分
　名古屋から新大阪まで　　　　　　　　　５２分
　新大阪駅のホーム　→　地上出口　　　　　５分

　合計　　　　　　　　　　　　　　　　　２時間２分～２時間７分


　なんと、ほとんど時間が変わらないことが分かります。

　現在、東京駅の横須賀線の地下ホーム、そして東京メトロの永田町駅（深さ36メートル）や都営地下鉄の六本木駅（1番線で42.3メートル）など地中深いホームはありますが、利用された方はご存知の通り、地上に出るまでに10分はかかるのはザラです。
　エレベーターがあるにしても、設置台数が少ないので、そこに行くまでにまた時間がかかり、ドアが開くまでにまた時間がかかります。
　
　リニアの地下ホームもこの事例に倣って試算してみました。

　実際、ウィキペディアで、駅の深さを説明するサイト（「都営地下鉄大江戸線」）がありますが、そこに面白い記述があります。

　この路線は駅の多くが地下深い場所にあり、地上との移動に時間がかかることから、テレビ朝日のスタッフが「徒歩で行くべきか地下鉄に乗るべきか迷う時がある」とのことで、同局のバラエティ番組『タモリ倶楽部』で、大江戸線の1駅間を移動するのに「大江戸線乗車と徒歩でどちらが早いか検証する企画」が放送され、赤羽橋駅 - 麻布十番駅間、麻布十番駅 - 六本木駅間では「徒歩の方が早く着く」との結果が出た。


　上記の試算でも、もし2045年以降に品川・新大阪が開通されたら、リニアが勝つとは思いますが、じつは、新大阪で下車する人は現在もあまりいません。ほとんどの人は、やはり在来線に乗り換えて、大阪駅に向かうか、山陽新幹線で岡山や広島などに向かいます。

　リニアはやはり新大阪駅でもこれら在来線に１５分くらいの乗り換え時間がかかると仮定すると、やはり、「駅の入り口」から「駅の出口」までで計算すると、それほど早さを期待できないかもしれません。
　「大阪駅」までで考えたら、最初から東海道新幹線に乗ったほうが断然早いのは目に見えています。

　重い荷物がある人なら、乗り換えが面倒なので、はじめから利用しないと思われます。

　ともあれ、これら条件でもリニアにそれでも乗りたい、乗りたくないを決めるのは個々の人々です。みなさんはどう思われますか？

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