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●土肥元校長の敗訴

 予想外の全面敗訴でした。
 1月30日。東京地裁での判決の主文は「原告の請求を棄却する」。たった3秒で裁判長は法廷を後にしました。
 地裁前で勝訴を信じて待っていた支援者たちは「不当判決」の文字に、「え~」と落胆の声。

横断幕 ← 不当判決をさすがに悔しがる土肥元校長


 このブログでも書いてきた、東京都立三鷹高校の土肥信雄元校長は、2009年1月に非常勤教員採用選考で意図的に不合格にされたことで、同年6月に東京都教育委員会を相手取り、損害賠償請求を起こしました。


●裁判に至るまでの過程のおさらい

★06年4月、都教委は都内の公立学校に「職員会議での挙手・採決の禁止」を通知。この通知は、「教職員から言論の自由を奪い」+「校長を都教委の言いなりにさせる手段」。だのに、都教委からの弾圧を恐れた200人以上校長たちはモノ言わぬ存在と化す。
 唯一「撤回すべきだ」と都教委に真正面から異を唱えたのが土肥校長だった。

★そして、定年退職後の60歳から65歳まで働ける非常勤職員の採用選考では、受験者790人中、最下位の成績で不合格。ちなみに不合格者数は22人だけ。

★土肥元校長ほど、生徒に愛されている校長はいなかった。
 約1000人もいた全校生徒の名前を覚え、毎朝昇降口で挨拶をした。あらゆるクラブ活動に参加し、生徒と一緒にボールを蹴り、走り、相撲をとった。進路相談にも乗った。
 離職にあたり、生徒から卒業証書や色紙をもらう。
 三鷹高校での、教師の人気投票でも、土肥校長は2位の教師を倍以上も引き離すダントツの一位。
 これほど生徒に愛された校長のすべてを都教委は否定した。

★定年退職後の6月に、都教委を提訴。

 裁判の内容は、表向きは、60歳からの5年間で非常勤教員として得られるはずだった報酬と慰謝料の計1850万円を求めていますが、実際のところは、争点はそれも含め9つありました。
 この裁判を始める前、担当の吉峯啓晴弁護士が「損害賠償だけなら勝てると思います」と告げましたが、土肥元校長は「世間に都教委の異常さを明らかにしたい」と、敢えて、都教委が行ってきた言論統制などの9つの弾圧を争点にしました。
 つまり、勝つ負けるではなく、裁判の場を、現職中に果たせなかった都教委との「公開討論」の場にしようとしたのです。

不当判決 ← 赤いマフラーを巻いているのが土肥元校長



●9つの争点とは、

1.文化祭での生徒の展示物への介入(都教委が「展示物に偏った考えのものがある。指導せよ」と「検閲」を繰り出してきた。裁判で、それが「沖縄戦」に関してのものだったことがわかる)
2.挙手・採決禁止
3.都教委を批判(実際は「独り言」や「冗談」だった)したことへの指導。 → 言論統制
4.絶対評価であるべき教師への業績評価を相対評価にと指導された。
5.業績評価問題を報道したことでの事情聴取。 → 表現の自由の侵害。
6.個別的職務命令の強要。卒業式では、教職員に対して、日の丸と君が代に「起立して斉唱すべし」との命令を出すが、それが一人ひとりに文書で渡す「個別的職務命令」と、全員を前に口頭で告げる「包括的職務命令」がある。どちらにするかは校長の権限に任されている。定時制に「包括」を出したら都教委は「個別で出せ」と強要。
7.都教委は、土肥校長が定時制にも「個別的職務命令」を出したと公表。
8.定時制研究会における発表者の交代。事前に決まっていた発表者を都教委が代えた。
9.不合格

 裁判の詳細は書きませんが、これは異常な裁判でした。

 まず、都教委が土肥元校長への「反対尋問を放棄」したこと(!)
 そして、終始、土肥校長と逆の証言をしていたこと。

 ただ、支援者の多くは、少なくとも、不合格への損害賠償だけは認められるはずと思っていました。もしくは、業績評価の事項も。
 
 というのには理由があります。
 土肥元校長とは別に、東京都世田谷区立の小学校教師である大嶽昇一さんが、04年度の業績評価で受けた最低のC評価は不当だと訴えた裁判で、10年5月に判決が出たのですが、これが勝訴だったのです。しかも、その裁判長こそが、土肥元校長の裁判の青野洋士裁判長でした。期待が高まるというものです。

 ところが!
 
 じつに不可解なことに、結審直前に人事異動があり、古久保正人裁判長に代わったのです。
 その結審での最終陳述を土肥元校長は覚えています。
「ちょっと嫌だなとは感じていたんだ。だってあの裁判長、僕のほうを一度も見ようとしなかったから」

 そして今回、すべての主張がすべて認められないという判決になったのです。
 判決文の最後のほうにはこんな記述があります。要約を書きます。

「都教委が原告を不合格とした理由は、『原告は、担当職務の意義や上司の指示を理解し、適切な判断に基づき職務を遂行する能力に欠け、また、組織の一員としての立場をわきまえず、他社からの説明を理解しようともしないばかりか、組織への協力・強調の姿勢も見られないとされていたことが考慮され、非常勤教員として任用した場合、他の教職員と協力・協調して学校運営に携わるといったことを期待できないばかりか、自分の考えに固執し、その思い込みに基づく言動が繰り返される状況が容易に想起され、都立学校教育に対する生徒・保護者・都民の信頼を確保するといった職責を十分に果たせるとは考えられないという判断』にあると理解できる」

 
●この判決文はヘンだ

 土肥元校長の弁護団も「これは最低・最悪の判決」と言いますが、判決文には、私のような素人が見ても「これはヘンだ」と思わせる箇所があります。

 それは、土肥元校長が、どこそこの新聞にこう言った、テレビでこう発言した、支援者のホームページにこう記載されたなどの報道や広報活動を指摘し、これらの行動を「短絡的な発言を外部に対して繰り返す行動」と断言していることです。

 これは憲法で保障されている「表現の自由」への侵害ではないでしょうか?
 こんな判断がなされたら、ますます学校の教職員や管理職は外部に向かって何もいえなくなってしまいます。
 今は戦時中の日本ではありません。私はこの判決は、時代を逆行させるものでしかないと思います。

●でも元気
 裁判後の報告集会で、土肥元校長は、「教育で一番やっていけないのはウソを教えること。ウソをつく人間が勝って、正直者がバカを見る社会でいいはずがありません。私は即控訴します。さっきまで怒っていたけど、怒りはもうすでにエネルギーに変わりました(笑)。もっと闘って、都教委の嘘を全国に広く知ってもらいます。今後とも応援をよろしくお願いします」と元気に締めくくりました。

 さあ、また闘いの始まりです。


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2012/01/31 13:27 抗う TB(0) コメント(0)
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