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●沖縄にも原子力産業がある

日本の電力会社で原発をもたないのは沖縄電力だけ。
 とはいえ、その沖縄には、放射線事業が存在します。

 その説明の前に、まず、沖縄からの農産物は今、本土の店でも売っていますが、その歴史は浅いという事実を知っておく必要があります。沖縄から本土への出荷が始まったのは1993年からと、たった18年前のこと。
 逆に言えば、1993年以前は、沖縄産の農産物の本土への出荷は固く禁じられていました。なぜか?

 ウリミバエという、幼虫が農作物を食い荒らすハエがいるからです。これが本土で繁殖したら、日本の農作物は甚大な被害を受けるための出荷停止でした。

 そこで、1972年、沖縄県が始めた実験が、ウリミバエの根絶作戦です。
 これを担当したのが、沖縄県病害虫防除技術センター。

 そもそも、天文学的な数もいる虫を根絶できるのか?

 それをやってしまったのです。


●害虫を放射線で殲滅せよ

 まず、センターでは、施設の中で、大量のミバエを増殖させ、蛹になったところで、「放射性物質」コバルト60のガンマ線を照射するのです。そうすることで、成虫になったミバエは不妊化します。

 そして、これら不妊化したミバエを保冷剤で仮死状態にし、毎週一〇〇〇万匹、手で野外にばら撒くといったことを繰り返したのです。すると、野生のミバエと不妊ミバエが交尾した結果、メスが卵を産んでも、その卵は孵化しません。

 それを繰り返すこと20年、不妊ミバエを530億匹生産し、ついに1993年10月、沖縄ではウリミバエ根絶が宣言されました。

 このことをルポしたのが「害虫殲滅工場」(中央公論新社。小林照幸著。1999年)。

 じつは、時事通信社から頼まれ、この本の書評を私は書いたことがあります。一読した感想は、「すごい研究者魂だ」ということでした。害虫を殲滅させるなんて、不可能とも思えることに挑み、実際になしえたその熱意に感服したものです。

 もっとも、心の片隅では、放射線を浴びたこれら虫たちが野外に放たれたことで、生態系に影響はないのかなということでしたが、その疑問もすぐに忘れていました。


●不安を感じていた人がいた

 ところが、今年の月刊「世界」10月号(岩波書店)を見て、「あ!」と驚きました。

 この殲滅工場の責任者は、琉球大学農学部の助教授であるのですが、その助教授から割りと近い場所にいた人からの読者投稿に、以下のことが書かれていたのです。概要だけお伝えします。

●沖縄では赴任虫放飼は「原子力平和利用」として重視されている。
●外国から虫が侵入する可能性もあるので、赴任虫放飼は今も続けている(知らなかった!)
●助教授は、ミバエ工場で働く研究者の健康について何も言わなかった。健康への不安は拭えない。
●助教授をIAEAも訪れたが、「原子力平和利用」として注目した。私は、放射能が怖くて施設に近寄らなかった。
●助教授の指導を受けて、ミバエ以外の生物を施設に持ち込み赴任化させた学生もいた。
●人体にも悪影響はあるはずだ。だが、その情報は不透明だ。

 私が、この投稿者の意見で強く共感したのは以下の箇所です。抜粋します。

「原発も他の原子力産業も、一度地域に定着すると永久に継続する。したがって周辺住民の健康や万一事故で放射能が漏れたときの健康被害について、原発賛成派・反対派の双方が共有できるデータが必要だ。(中略)今のままでは、放射能をわずかな量でも危険視する人と安全視する人の間で水掛け論が続くだけである。あくまでも厳密で定量的なデータに基づいて人体への放射能の影響を議論して欲しい」

 賛成派・反対派の双方が共有できるデータ。

 まさしく、その通りです。

 私は今、この害虫殲滅工場を、賞賛もしなければ批判もしません。というかできません。それをするためには、まさしくデータが必要なのです。

 そのデータが出てくるのかどうか。もし、周辺住民の要求にも関わらず、そのデータが出ない、出せない場合は批判の対象にしていいでしょう。

 沖縄での「原子力の平和利用」に関しては、原子力問題を扱う人のなかでも「盲点」であり、まずは、その活動がもっと知られてしかるべきだと感じています。

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2011/12/11 18:00 福島原発 TB(0) コメント(0)
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