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●大深度法とは何か?

 リニア中央新幹線は3年後に着工すると言われています。
 
 そして、2027年に東京(品川)から名古屋。2045年には大阪までの開通を目指しています。

 東京ー名古屋間に作る地下駅は3つ。

 品川、神奈川県相模原市、名古屋。深さは、品川は地下40~50m、名古屋が30~40m、相模原が20~30mの位置に建設すると報道されています。

 通常の高層ビル建設では、地下数十メートルにまで杭を打ちますが、ここよりもさらに深い地下を「大深度」と呼びます。その大深度で公共性のある事業を行うのを可能にした法律が、2001年に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」、通称「大深度法」です。

 この法律の最大の特徴は、大深度の真上に住む地主に開発の許可を仰ぐことも、ましてや補償も不要であること。
 上記3つの駅の建設には、この法律が運用されるはずです。

 また、大阪までの約500kの約6割がトンネルとなるのですが、ここでも大深度での建設があるかもしれません。

 大深度法は、「大深度地下を使用する社会的経済的必要性が存在する地域として政令で定める地域」を想定地域としていますが、私が2000年にこの法律について国土交通省を取材したところ、基本的には「東京」「名古屋」「大阪」の3大都市圏に運用されるとのことでした。

 今回、そのときに書いた記事を読み直して、改めて、そうだったのかと思ったことがあります。

 大深度法は、もともと国土交通省ではなく、1995年に自民党の野沢太三・国会議員(現在は引退)が議員立法として提出したものです。
 ところが、この野沢代議士は元・国鉄(現JR)の本社施設局長まで務めた人。さらに、2000年当時においては、「リニア中央エクスプレス推進国会議員連盟」の事務局長でした。出身地は長野県の上伊那郡。リニアのルート候補にあった地域です。

 こういう背景をもった人が議員立法で提出した大深度法。当面の適用地域は、東京圏、名古屋圏、大阪圏。
 これは何を意味しているのか?
 あまり深読みしては、事実から離れていくので、野沢・元代議士に関してはこれ以上は書きませんが、いずれにせよ、リニアの大深度での建設は大深度法が運用されるため、その地上に住む人たちは補償もされないし、反対運動も無視される結果とつながるのでしょう。


●大深度の世界とは?
 去年、埋め戻したそうなのですが、相模原市に東急建設が大深度実験を行っていた施設がありました。2000年、私はここを取材したのですが、場所は地下50メートル。
 東急建設には、将来の「ジオトラポリス構想」なる地下都市プランがあり、近未来での多目的スペースやデパートでの建設を目指しています。そこで、大深度ではいったい何がおきるのかという実験を行っていたのです。
 
 地下50メートルの実験場では凄まじい水圧のため常に漏水するため、それをポンプで汲み上げては地下に戻すことも行われていました。

 研究員の方は、大深度を「下に行くに従い、予期できない水圧の上昇、嫌気性の微生物の存在など、いきなり開発するとどんな影響が出るかわからない危険な世界」と語ってくれました。
 
 地質学者の陶野邦雄氏は「大深度地下開発と地下環境」(鹿島出版会)という本を出していますが、大深度についてこういうコメントをくれました。

「地質学でいう大深度は『空気のない地下』を指します。空気なしでも生きる微生物はいて、開発により空気が入ることでどんな影響が起きるのか、検証されていないんです』

「深度100メートルでもトンネルの1本だけなら大丈夫。でも、2本、3本になったら互いの力学的剛性がどうなるかはまったくの未知』


●大深度、もう一つの利用法=核廃棄物地層処分?

 取材の過程で多くの人に会いましたが、共通意見で多かったのが「大深度は間違いなく放射性廃棄物の埋め立てに利用される」というものでした。

 たとえば、高レベル放射性廃棄物は地下数百メートルの地層に埋める・・と言われていますが、大深度を使えばどんな地主からの許可も補償も必要ないわけです。論理的には可能です。

 ところが調べてみると、

 ★大深度法案が参議院を通過したのは2000年5月19日。
 ★「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案」の通過は5月31日。

 ほぼ同時に成立しているのです。

 この両法案に反対したのは、「紋次郎」こと中村敦夫議員(当時)のみ。中村さんはこう言いました。

「とんでもねえよ。俺が反対したのは、この二つの法律がセットになったらやばいと考えたからなんだ」

 中村さんは当時、「第一土曜会」という勉強会を主催していたのですが、法案可決の翌月の6月、高レベル放射性廃棄物の地層処分に反対する岐阜県の市民団体が参加し、こう訴えていました。

「このままでは、私たち住民は核に怯えて暮らすことになります」


 私は、日本の技術力、そして困難な状況でも課題を一つ一つクリアしながら前に進んでいく日本人の粘り強さでもって、リニアの地下駅も地下トンネルも実現可能だとは思います。だが、問題は、それを何の検証もなく実現させていいのかということです。

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