リニア、川勝平太・静岡県知事の「部分開業」案に違和感を覚える人たちは、黒岩祐治神奈川県知事が要望する「車両基地とリニア神奈川県駅間の回送線の旅客線化」を知っているか？

●川勝知事の「部分開業」
　川勝平太静岡県知事が訴える、リニアの「神奈川県駅と山梨県駅」間の部分開業。
　その可能性はゼロではないにせよ、ＪＲ東海ははっきりと「できない」と答えている以上、現時点ではできない。
　川勝知事の言っているのは、部分開業＝先行開業ということであり、ゆくゆくは品川・名古屋間の開通を考えているのは当然にしても、部分開業区間がペイするのかもわからない。
　そして、先日の９月５日、黒岩祐治・神奈川県知事も部分開業を「ありえない」と切り捨てた。

●黒岩知事の「リニア車両基地回送線の旅客線化」
　ただ、それを否定する黒岩知事は、2019年６月18日に、「リニア車両基地とリニア神奈川県駅間の旅客線化」を、相模原市（本村賢太郎市長）とともに目指すと表明している。

←山奥にあるリニア車両基地は本線から離れる「回送線」となる。これを営業線にしようと黒岩知事は表明した。この図は拙著「悪夢の超特急　リニア中央新幹線」から

　これは仕事を終えたリニア車両が整備のために、相模原市緑区鳥屋地区という山間地に設置する「車両基地」へと行くために「回送線」が設置されるのだが、黒岩知事は、この回送線を使って、リニア車両基地のある鳥屋地区とリニア神奈川県駅とを結ぶ旅客線化にしようと表明したということだ。

●一応、理屈はあるのだが…。
　個人的には、部分開業よりも、こちらのほうが可能性はもっと低いと思う。というよりも、可能性はないと思うので、後追い取材もしていなかったが、今調べてみると…
★回送線である車両基地とリニア神奈川県駅とを旅客線にするとの構想は黒岩表明の２年前、2017年８月５日に「リニア中央新幹線関東車両基地回送線の旅客線化を求める市民協議会」の設立で表明されている。
★商工会、観光協会、リゾート施設などが発起人だが、地元選出の国会議員や県会議員、市会議員が参与に就任している。
★一応、彼らにも言い分があり、山陽新幹線のJR西日本車両基地（博多総合車両所）と博多駅を結ぶ８・５Kmを旅客線化したことで、１９９０年に１日４５４６人の乗客が２０１４年には１万３５１７人に増えた。地元、福岡県那珂川町の人口も３万６０００人から５万人超へと増えたとの根拠は示している。

　だが！

★那珂川町の人口が当初３万６０００人だったというが、リニア車両基地のある相模原市緑区鳥屋地区の人口は２０００人弱しかいない。いったい、何人が車両基地からリニアに乗るのか？　そのシミュレーションは示されていない。

　

←博多車両基地の周りは住宅密集地。それなりの利用者が住んでいる。だが、リニア車両基地の周りの人口密度は低い。ちなみに赤線が車両基地の最大幅で、このなかで基地が建設される。どちらの画像もgoogle map から作成

★観光資源といっても、このへんは、あえて言えば、それなりに有名なのは宮ケ瀬湖とその近くにある服部牧場くらいだろうか。
★そもそも、ＪＲ東海も、この案を否定している。

　もしこの件をつっこまれたら、黒岩知事は今なんと回答するだろうか。



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